ローウェル・ジョージ 『サンクス・アイル・イーティット・ヒア』

Lowell George / Thanks I'll eat it here (1979)

LowellGeorge_ThanksIllEatItHere.jpg
1. What Do You Want The Girl To Do
2. Honest Man
3. Two Trains
4. I Can't Stand The Rain
5. Cheek To Cheek
6. Easy Money
7. 20 Million Things
8. Find A River
9. Himmler's Ring
10. Heartache




「もうCDは買うまいぞ、レンタル店で済ますのだ」などと思うのだが、レンタル店ではよく知られたアーティストのCDしか置いてなかったりする。だから買ってでも聴きたい(?)音源はついオンラインで物色することになる。難波や心斎橋の中古CD店をのぞいてみれば、けっこうおもしろい買い物ができるのはわかっているが、そこまで行くのが面倒だし、どうしてもという若いころの情熱のようなものはもうないような気もする。

オンラインで買い物をすると購入手続きの欄の下の方に「このショップからの配信を受ける」などというチェックボックスがあって、初期設定ではすべてチェックが入っているんですね。たいていすべて外しているけれど、HMVではそれを忘れてしまったために、いまだにメールを受け取り続けている。たまに面白い情報があることも、あるんです。

たとえば「CDが500円~」などというのがそれで、「ロック名盤が800円~」などというのもある。そういうものについ釣られてしまったわけで、「どうせ買わないと思うけど、まあ見るだけなら見てやってもいいけど」みたいな妙に高ぶった態度になれるのもオンラインならでは。で、実際に見てみると、おやおや、なかなか面白いものが並んでいるではありませんか。

ロリー・ギャラガー『ブループリント』(1973)、ピーター・グリーン『ジ・エンド・オブ・ザ・ゲーム』(1970)なんかと一緒にローウェル・ジョージのソロ『サンクス・アイル・イーティット・ヒア』(1979)も買い物籠に入れ、購入ボタンを押してしまった。いやあ、もろに趣味が出てしまったようだけど、ブリティッシュ・ブルース・ロックとかアメリカの南部ロックなんかを、わりと聴くことがあるんです。

ローウェル・ジョージはアメリカのロックバンド、リトル・フィートの中心的人物で、1969年から10年ほど活動をつづけた後、1979年にバンドを解散させた。その後、ソロアルバムとして発表したのが『サンクス・アイル・イーティット・ヒア』である。アルバムジャケットにはリトル・フィート時代から付き合いのある、ネオン・パークのイラスト。この人のイラストはなんというか、じつにユニークだ。

真ん中に堂々と描かれているのがローウェル・ジョージその人。彼が来ているのは日本の作務衣のようなものかもしれないし、ドレープの具合からバスローブかもしれない。背後の森には三人の人物が描かれている。たぶんこれはエドゥアール・マネの『草上の昼食』(1862)のパロディではないかと思うが、その人物がだれなのかは不明。キューバの将軍、合衆国大統領、アメリカの女優MM、などと想像してみるのも面白いかもしれない。

リトル・フィートが南部よりだったのに対して、西海岸(ロザンゼルス?)よりとでも言えばいいのだろうか、ずいぶんあか抜けたソウル/ファンクっぽい仕上がりになっている。ビル・ペイン(kd)やリッチー・ヘイワード(ds)のリトル・フィート勢に加えて、デヴィッド・フォスター(kd)、ジェフ・ポーカロ(ds)、デヴィッド・ペイチ(?)、チャック・レイニー(b)、フレッド・タケット(g)らがクレジットされている。

ローウェル・ジョージといえばスライドギターがすぐに思い浮かぶのだけど、本作ではあまりスライドギターの出番が少なく、ヴォーカルに力を注いでいるようだ。(1)はアラン・トゥーサンのカヴァー曲で、ボズ・スキャッグスもカヴァーしている。アラン・トゥーサンに対するオマージュにあふれ、歌声もそっくりに真似ているように感じた。(3)はリトル・フィート『ディキシー・チキン』(1973)に収録されている曲のセルフ・カヴァー。ファンキーさはなりを潜め、より複雑なリズムになっている。

(5)はメキシコ音楽そのまんま、という感じだが綺麗に作られている。まさかライ・クーダーがスタジオに駆けつけてきてギターを弾いている、などということはない……ですよね。(6)はデビューしたばかりのリッキー・リー・ジョーンズのカヴァー。たぶん原曲キーのままで、ちょっと無理してフェイク・ヴォイスを使っているローウェル・ジョージが可愛らしい感じがする。(9)はいかにもアメリカだ、みたいなフレーズに満ち満ちたお茶目さ一杯の曲。(10)はギターの伴奏だけでしっとり歌い上げる静かな曲。

ローウェル・ジョージは過度の薬物投与により、この後亡くなってしまうので、本作が最初で最後のローウェル・ジョージ、ソロアルバム。制作時も相当体調が悪かったはずだが、そういうものを少しも感じさせない仕上がりになっているのが不思議なくらいである。大ヒットするような部分はやはりないんだけど、それでも初期のリトル・フィートに比べるとずいぶんわかりやすく、とっつきやすくなっていて、聴きこむほどに味わいを増してくるタイプの音楽だと思う。生きていればもっと音楽的発展があっただろうに、とつくづく早過ぎる死が惜しまれる。


【付記】
● チャック・レイニーのベースって本当にいいですね。スティーリー・ダンを聴いているときもそうなのですが、ついベースラインに耳が行ってしまいます。ワーナーのバーバンク的なものと西海岸サウンドの出会い、だけど根は南部という、まことに面白いアルバムで、これは買ってよかったと思えるものでした。


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