ボズ・スキャッグス 『シルク・ディグリーズ』

Boz Scaggs / Silk Degrees (1976)

BozScaggs_SilkDegrees.jpg
1. What Can I Say
2. Georgia
3. Jump Street
4. What Do You Want The Girl To Do
5. Harbor Lights
6. Lowdown
7. It's Over
8. Love Me Tomorrow
9. Lido Shuffle
10. We're All Alone




ダーク・スーツに身を包んでサングラスをかけた男性(ボズ・スキャッグス自身)が、いかにもこの撮影のために用意されましたという風情のベンチに腰をかけているのだが、俯き加減でそっぽを向いているように見える。見ようによってはなんだか拗ねているように見えぬこともないのだが、男の背後にはマニキュアの色も鮮やかな女性の手が。このジャケットを初めてみたとき、なぜだか恥ずかしさを感じてしまった。

『シルク・ディグリーズ』のCDを買ったのは1980年代の中頃、レコードからCDへと変わっていく段階でCDのラインナップも豊富になり始めたあたりではないかと思う。1980年代初めから中頃にロックバンドの真似事をしていた者たちにとって、お手本はやはり70年代のギター・ヒーローたちか、あるいはパンクのいずれかに落ち着くのがお決まりだった。

とにかく格好よくエレクトリック・ギターを弾きまくりたいという者は前者に流れ、テクニックよりも精神性に重きを置く(と思われる)者は後者に流れた。そういう大きな流れがある中で、大人向けロックとか産業ロックのイメージが強いボズ・スキャッグス(やクラシック音楽)をおおっぴらに聴くというのはいささか決まりが悪いというか、なんだか恥ずかしいことのように思えた。こんな私(乙山)だが、勘違いしてロックバンドの真似事のようなことをしていたこともあったのだ。

カセットテープにダビングして、携帯型カセットプレーヤーでこっそり聴いていたことなどを思い出すけれど、ジャケットデザインのいまひとつのセンス(失礼)や、大人向けロック/産業ロックのイメージを払拭して改めて聴いてみると、このアルバムは本当に佳曲が並んだできのいい作品で、「名盤」と言ってもいいのではないかと思う。

(4)はアラン・トゥーサンのカヴァー曲で、ボズのルーツを偲ばせるものだが、アラン・トゥーサンの原曲がまったく土臭くなく非常に洗練されているため、ぴったりの選曲。(5)は夜の港の灯が思い浮かんでくるスロー・バラード。(6)はエレクトリック・ベースのプリングが印象に残るファンキーな曲。(8)はレゲエ風の曲で当時の流行をきっちり取り入れていることがうかがえる。(9)は軽快でノリのいいシャッフル・ビートが特徴で、(10)はリンダ・ロンシュタットをはじめカヴァーも多い名曲。

ボズ・スキャッグスのヴォーカルを支えるのは後にTOTOを結成するデヴィッド・ペイチ(p, key, syn)にジェフ・ポーカロ(ds, per)、デヴィッド・ハンゲイト(b)などロサンゼルスのセッション・ミュージシャンたちで、アース、ウインド&ファイアーのプロデューサーとして知られるジョー・ウィザードを迎えて録音されている。もともと南部のリズム&ブルースがボズの音楽的ルーツなのだが、『シルク・ディグリーズ』ではロック/R&Bというよりはソウル/ファンク風の都会的で洗練された雰囲気を前面に出し、それが見事にはまったという感じだ。

何よりもボズがとても器用なヴォーカリストで、泥臭い田舎風であれ、都会的で洗練されたものであれ、とにかくできてしまうというか、こなしてしまえるところがすごいところではないかと思う。後にボズはジャズ・アルバムを何枚か発表しているが、これも見事なもので、どうしてこれをもっと早くしなかったんだろうと思ってしまうほどだ。どんな形であれ、今でも歌い続けているボズが好きだ。好みも別れると思うけれど、アルバムジャケットだけで判断しないでくれ、と言いたい一枚です。


≪ 『スピーク・ロウ』へ  『ミドル・マン』へ ≫

【付記】
● 1980年代に発売された初期のCDは、ステレオの2CHにミックスダウンしたマスターテープをそのままPCM音源にデジタル化したと思われるものが多く、これは今日のデジタル録音からすると録音レベルが小さく、なんだかダイナミックレンジも狭い小さくまとまった缶詰的な再生音に感じてしまいます。

単なるデジタルリマスターではなく、リミックス&リマスターの新しいCDが欲しいなあ、などと思うのですが、音源はもうあるわけだし、しかも初期のCDはやたら高かったし(3200~3500円くらいしていた)、などとケチくさいことを考えてしまいます。


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tag : ボズ・スキャッグス

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No title

あ!このCD持ってます!
もう少しオレンジがかって見えるのは、日に焼けたのかな。

>カセットテープにダビングして
懐かしいですよね!
特に男性が、「マイベスト」を一日がかりで編集したりするんでしたよね。
そして、ドライブで聴く...と言うのが.....

Re:かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですか、このCDはもう名盤といってもいいくらいだと勝手に思っています。
乙山所有の『シルク・ディグリーズ』はCD初期の、
ちょっと録音レベルの小さいものなので、なんとかならないかなあ。

カセットテープにダビングする、というのは楽しい作業でしたね。
昔は「カセットデッキ」とか「テープデッキ」という装置があって、
それのいいのを買うのが夢でしたね。カタログをせっせと集め、
一生懸命貯めたお金を持って大阪・日本橋へ……いや、本当に楽しかった時代でした。

「マイベスト」の編集と、ドライヴでのお披露目……
そういう人、けっこうたくさんいたんじゃないかと思いますよ。
なんだか気恥ずかしい心地がします。

No title

こんにちは。
関節が痛くていらっしゃるとのこと。いけませんね・・・
痛くて歩けないと言うのは、ほんとに参ってしまいますね。
私も、今年になってから、足のおやゆびあたりが痛く、外出して
途中、靴はいて帰れるかしら、と思うくらい痛くなって、困ったことが
ありました。いよいよ外反母趾の年齢かな、とも思ったけれど、
見た感じそんなでもなく、それにそのときは胸苦しさや、足のむくみも
あったので、他の原因かもしれず。
まだ医者に行ってないので、原因わかりませんが、ほんとに痛いのは
つらいです。病院から逃げ回っている私がえらそうなこと言えませんが、
どうか、ちゃんと原因確かめて、治療なさってくださいね。

ほんと、医は仁術なり、と言う言葉は死語でしょうか。
ちょっと一言添えてくれるだけで、患者は気が楽になったり、信頼感抱けるのに、
カルテやパソコンの方を向いたまま、患者の顔もろくに見ない、と言う
医者も多くなったような。
お大事になさってください。

ボズ・スキャッグズ。珍しく私も知っている名前が出ました。^^
ほんと、音楽知らなくて・・・!i-201
この人の、なにか籠ったような発声が結構好きなんです。
We're All Aloneが好きですねえ。あと、Look What You've Done to Me とか。
さみしい時に聴きたくなります。


Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
いやいや、乙山も病院というところが苦手手でありまして、
いままでその厄介にならなくて済んでいた、というのがありがたいのです。

人によっては病院に親しいというか、それなくては人生もない、
という方もいらっしゃると思うのです。
というか、病院あってこそのわが人生、とまではいかないかもしれませんが、
そのおかげで助かっていらっしゃる方もいるのでしょう。

ですが、このたび乙山が足痛を経験した限りで率直に言わせてもらえば、
ほらね、やっぱりね、ということなのです。
病院嫌いがいるというのは、いわれのないことではないと思います。
だって、行ってもあちこち盥回しされるだけで、ちっとも「診て」もらえません。
ひょっとすると「見て」さえもないかもしれません!

努力なさっている、献身的な医療関係者の方々もいらっしゃるでしょう。
そのおかげで何とか保っているだけという感じもします。

ボズはなかなかいいヴォーカリストだと思うんです。
イメージ先行であれこれ言われるのだろうけど、乙山はボズのファンなんです。
夜、静かに聴きたいときなど、ボズのジャズアルバムは最適でして、
聴いていると本当に器用な人だなあ、とつくづく感心するほどです。

掛け値なしに、ボズのジャズアルバムはいいですよ。
まだ2枚ほどしかリリースしていませんが、どちらもいい。
本当です。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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