炊飯専用土鍋で米を炊く

DaikokuNabe01.jpg
1月の終わりだったか2月の初め頃だったかもう定かではないが、某日、私(乙山)は隣町の兵庫県川西市に自転車で出かけた。川西には素敵な酒店が三軒もあって、そのうちの一軒で〈仙介本醸造〉を買い求めるためである。〈仙介〉は西宮/宝塚に住んでいたころに覚えた灘の酒でお気に入りの一つになっている。

池田に来てからもうしばらく〈仙介〉を飲んでおらず、どうしても飲みたくなってわざわざ隣町まで酒を買いに行く。自分でもやれやれ、と思うのだが〈仙介〉にはそういう行動を起こさせる不思議な魅力があるように思う。今回、本醸造を選んだのは燗にして飲むからで、純米酒ならやはりきりりと冷やすか常温の「冷や」でいきたいものだ。

川西へは行きも帰りも国道176号線沿いに呉服橋(くれはばし)を通る。橋を渡って池田に着いたら、すぐ本町通りという綺麗に舗装された道路に通じている。これは能勢街道沿いの歴史ある道で、一応池田のメインストリートということになるのだろうか。商店街に通じていて〈落語ミュージアム〉などもあり、道路沿いに面白い商店やおいしい料理を食べさせる店なんかが立ち並べば、もう少し賑わうようになるかもしれない。

DaikokuNabe02.jpgその本町通りの商店の一つに、陶磁器屋(瀬戸物屋)さんがあって、以前そこで一合徳利と猪口を買い求めたことがある。小さな店内だけでは入りきらないのか、表にも商品を並べて置いてあるので立ち止まって、というか自転車を停めてサドルに腰をかけたまま、どれどれ、という感じで食器類を眺めていた。

どうやって調理するのかいまひとつわからないけれど人気があるらしい、とんがり帽子のようなタジン鍋やら、鍋焼きうどん用の一人鍋なんかが置いてある。100円土鍋で炊飯しているけれど、蓋がぴったりしておらず、吹きこぼれも気になるんだよなあ、などと思いながら見ていると、風が吹いたのか酒の一升瓶を前の籠に積んでいたのがまずかったのか、なぜかよろけてしまい、あろうことか食器類の方に傾いてしまったのである。

その陶磁器店は煙草も扱っていて、ちょうど煙草を買いに来ていた男性も思わず声を上げたほどだった。一瞬、なんだかスロー再生でも見ているような妙な感覚に襲われたが、すんでのところで踏みとどまったものの、一部の食器に触れてしまったようで音が響いた。財布にいくら入ってたっけ、などという疑問が一瞬頭をよぎったが、どうやらタジン鍋がずれただけで食器が割れるという最悪の事態には至らなかったようである。

ちょっとした騒ぎに店内にいた奥さんが何事、という感じで表に出てきた。いやあちょっと身体が食器に触れてしまったみたいでしてね、だけど大丈夫みたいですよ、などとタジン鍋を元の位置に戻しながら曖昧な笑みを浮かべる私。奥さんはおっとりした人で、別に食器類を点検するようなそぶりも見せず、今日は寒いですね、などと何事もなかったような雰囲気である。

DaikokuNabe03.jpgまあ、本当に何もなかったわけだから、そのまま帰っても一向に差し支えなかったはずなのであるが、なぜか何も買わずに帰ってはまずいような気がして、タジン鍋の横に置いてある炊飯専用土鍋(二合炊)を指差し、これをください、と言ってしまった。奥さんはやはりおっとりした様子で炊飯用土鍋を手に取り、店内で丁寧に包装してくれた。お値段は2800円であるが、これは10%オフ、ということのようだ。

さて炊飯専用土鍋であるが、これは萬古焼(ばんこやき)といって三重県四日市の伝統産業だそうで、なんでも耐熱に優れているという。なるほどずっしりした厚手で、中蓋、外蓋と付いていて本格的に見える。火加減は中火よりやや強めで、途中で調節する必要がないとある。穴から勢いよく湯気が出たら3分間ほど加熱、その後火を止めて10分ほど蒸らせばよい、とのこと。

さすが炊飯専用土鍋だけのことはあって、吹きこぼれを心配する必要は全くなかった。これはいいなあ。タイマーをしっかりセットしておけばまちがう心配もない。米の分量にもよると思うが、そこは何度か炊飯を重ねてベストのタイミングをつかめばよいのではないかと思う。なかなか良い感じに炊け上がりましたよ。

DaikokuNabe05.jpg100円土鍋の28倍の値段だからといって、28倍おいしいご飯が炊けるというわけではないのが面白いところ。かりに2倍おいしいご飯が炊けたなら、それはもうとてつもなくおいしいご飯に違いない。このあたりはオーディオ装置とよく似ている。オーディオ装置はそれこそピンからキリまであるけれど、値段の分だけいい音を出してくれる(というより自分がその音を気に入る)とは限らないから面白い。味覚や聴覚など、およそ趣味というものは数値化できないところに面白さ、奥深さ、そして恐ろしさがあるのでしょうね。


【付記】
● いい気分で炊飯専用土鍋で米を炊いていましたが、後日、近所のスーパーマーケットでまったく同じものが1980円で販売されているのを見てしまったときには、なんとも暗澹たる気分になりました。ああ、やられた(って、誰に?)と思わず声を出しそうになってしまいましたが、こういうことって、よくあるんですよね。

ご飯がうまく炊ければ、味噌汁と漬物またはふりかけ(「しそわかめ」が好き)だけでじゅうぶんです。今回は豆腐とわかめの味噌汁と「しそわかめ」。米の銘柄にこだわらなくても、そこそこおいしいご飯が食べられるのはいいことです。今回は1kg=450円程度の米ですので、一食分は45円。ううむ、これだから自炊は止められない?


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No title

思わず買ってしまうにはやや痛い出費…
しかもスーパーでもって安く売っていた、と。
まぁ、ネタ?になったからいいのかな。
ところでその瀬戸物屋さん、店先の地面がこう、少しナナメになっているとか盛り上がっていませんかね…

No title

あんまり面倒なことは嫌いなので、飯炊きはいつも機会に任せていたのですが、この前ついにその機会が壊れてしまって、間に合わせで買った安物の炊飯器(6800円)がものすごく飯炊きが下手だったので、学生の頃自炊していた頃を思い出し鍋で(普通の)飯炊きを始めたところこいつがうまいこと行くんで・・・最近はちょいと厚手の鍋を使って飯炊きを楽しんでいます。

Re:RSさん

RSさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
そうなんですよねえ……まあ、何があっても、
ウェブログに書いてやればいいか、みたいな気分ですよ。

瀬戸物屋さんの店先の道路、たぶん、普通に平坦だったと思います。
記事にも書いた通り、風が吹いたのかなあ、とか、バランスを失ったのかな、とか。
なんか、ぐらっと来てしまったんですね。来てはいけない場所でと、時で。

Re:gatayanさん

gatayanさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうそう、乙山も炊飯を覚えたのは学生時代でしたよ。
炊飯器はないけど、どうする? みたいな感じでしたね。

ガスでも、電気コンロでも、やればできますし、
けっこうそれが、おいしかったりするのはうれしいですね。
いま「おいしく炊ける」電気炊飯器があって、乙山も購入を検討しましたが、
自分で炊いてしまうほうが話が早いんですよね。

ガスで炊飯を、などというと驚かれる方がいらっしゃるのですが、
乙山などは家にいるときは普通にやってます。
昔の方は「薪」でやったわけですものね。

土鍋で御飯

これ以前やってましたよ。
意外と早く炊けて便利でした。
たしか水分が飛んで。
パチパチ音がするようになったら。
火を止めて蒸らすんでしたっけ?

中蓋を落として割ってしまい。
それ以来御飯を炊いていませんw
買っても安いものなんですがねぇ^^;)/

No title

 ぼくは無精なので、学生時代めったにご飯を炊きませんでしたが、安物の電気
炊飯器でもうまく炊ける方法は開発しました(土鍋で炊くなんてとてもとても)。

 あまりにもご飯がまずいので、炊飯器の挙動を観察したら、安物はフタが軽いた
め、蒸気の力で持ち上がってパカパカ動いています。そこで圧力をかけてみたら
どうだろうと考え、コイル状のカーテン用レールを買って両端にヒートンをねじ込み、
そいつを取っ手にひっかけてフタを押さえ込んだところ、圧力釜に近くなり、うまい
ご飯が炊けました。特許を取ろうかなと思ったほど。

 一時期そうして炊いたご飯をアルミの弁当箱に詰めて学食に持ち込み、ウドンと
いっしょに食べたこともありますが(ようやりましたな、ほんま)、面倒くさいのですぐ
にやめてしまいました。結局最後の二年間は、外食のほかはパンかインスタントラ
ーメンが主食でしたね。

 こういう記事を拝見すると、いろんなことを思い出すものですね。

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうそう、タイマーなどという横着なものがなければ、
「耳を澄ます」に限ります。加熱を続け、吹いてくるのが収まり、
なにやら音がするようになったら火から下ろすのです。
あとは「蒸らし」の行程ですよね。

電気式の「おいしい炊飯器」とやらが高いのなら、
自分で炊いてしまえ、ということです。
本当は電気式の炊飯器で大量に炊いて冷凍保存、
それを電子レンジで温めるというのが便利でいいのですが、
いまのところ電子レンジがありませんのでね。

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうですね、今の時代、何もわざわざという感じもしますが、
手間をかけて炊いたご飯は思いの外おいしいものでした。

それにしても炊飯器を抑え込むアイディア、素晴らしいですね。
乙山もそれなりにあれこれ考えてやっておりますが、
そこまで考えて実行し、巧くいったことはないような気がします。

不景気というか、何やらいろんなことがうまく回らなくなっている、
そんな時代ですものね。乙山も「うむ、今月は臥薪嘗胆だ」などと
考えて自炊に励むことが多いのです。

ほんの少しの時間ですが、楽しいですね。
やれ浸水時間はどうだとか、加熱の時間はどうする、
蒸らしはどうとか、あれこれ試行錯誤しております。

No title

最近は、同じ物がスーパーで安く売ってたとしても、自分の「豊かさを分かち合った」って思うようにしてます。瀬戸物屋さんの店主と仲良くなって、次回はお勉強してもられば、昔ながらのお付き合いの出来る行きつけの店になるでしょう。
かえるままも、最近は大手の外食産業ではなくて、只野乙山さんが行かれる、食堂の様なお店に行く様にしてます。同じ理由で。
萬古焼(ばんこやき)の伝統を守り、瀬戸物屋さんの生活を守り、生きたお金を使われたのではないでしょうか。スーパーで並んで売ってても買ったかどうか分かりません。(かえるままなら)手元に土鍋があって只野乙山さんは、2800円分の徳を積まれたのではないでしょうか?土鍋ご飯は、遠赤外線効果もあるし、見えない栄養がたっぷりで美味しいと思います。
でも、やはりいいものはやはり高いですね。

Re:かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですよねえ、そんなにがっかりすることはありませんね。
大手外食チェーン店が国道沿いにいくつか立ち並んでいますが、
あまり利用したことがないんです。

徳、というのはおそらく善行と関係があるようなので、
たんに買い物をしただけの乙山にはあまりピンときませんが、
かえるママさんのような考え方もあるのだなと思いましたよ。

この土鍋には炊き込みご飯とか、アサリご飯、栗ご飯とか、
おいしそうなご飯のレシピも付いてくるんですよ!
またご飯だけでなく、おでんとか鍋、煮物にも使えるようです。
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