『グランド・ホテル』 (1932)

『グランド・ホテル』 アメリカ (1932)

GrandHotel01.jpg
原題:Grand Hotel
監督:エドモンド・グールディング
出演:グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモアほか


近所のスーパーマーケットで「激安DVD」などと称してパブリック・ドメインとなった過去の映画を1枚350円で売っているのに思わず足を止めてしまい、たくさんある名画の中から選択するのに困ったが、それはそれで楽しいものである。3枚買っても1000円ほどということもあって、セール期間終了まで何度か足を運んだものだった。「映画」というカテゴリーで過去の映画ばかり振り返っているのもそういう経緯からである。

もしかしたら過去に見たかもしれないけれど、ほとんどの映画は初めてみるようなものだ。数ある中から『グランド・ホテル』(1932)を手にとったのは、そこに「グレタ・ガルボ」という名前を見たからに他ならない。もちろん、どんな女優なのか見たことはなかったが、名前だけは知っていて、いつかグレタ・ガルボの映像を見てみたいものだと思っていた。

GrandHotel02.jpg10代の終わりごろ、どういうわけか詩などを読むのが好きになり、中原中也とか萩原朔太郎なんかを手にとった。萩原朔太郎の鋭く尖ったような独特の感覚も惹かれたが、中原中也のどこか懐かしい歌のような詩のほうがとっつきやすく、読み親しんだように思う。中原中也の伝記や、中也について書いたものを読むと、そこには長谷川泰子という女性がよく出てきて、その人が新聞社が主催した「グレタ・ガルボに似た女」で当選した(1931年)とある。たぶんそれでグレタ・ガルボという名前を覚えたのだと思う。

伝説の女優グレタ・ガルボ。いったいどんな人なんだろうと裏に書かれた解説も読まず、予備知識も一切ない状態、つまりグレタ・ガルボの写真すら見ないままいきなりノート型コンピューターにDVDを入れて、見た。そうすると、だれがグレタ・ガルボなのかよくわからないんですね。グレタ・ガルボの他に速記者として登場するフレムヒェン(ジョーン・クロフォード)もけっこう魅力的で、ジョーン・クロフォードを知らなかった私(乙山)はこの人がグレタ・ガルボなんだろうか、などと思ってしまう始末。初めにちゃんと紹介されているのに、そうなってしまったのだ。

どうやら落ち目のバレリーナ、グルシンスカヤ役の女性がグレタ・ガルボなのかなあ、とぼんやりわかってくるんだけど、主演女優が放つ独特の雰囲気のようなものがあまり感じられなかったような気がするのは私だけだろうか。ガルボは1905年生まれのようだから、撮影当時20代後半ということになるはずだが、画面から感じられる雰囲気はプラス10歳以上といってもおかしくないほど。画像二枚目の女性こそグレタ・ガルボなんだけど、20代後半の「若い女性」というより、なんだか30~40代の成熟した女性の風格を感じるんですね。

GrandHotel03.jpgさて映画自体は、ベルリンのグランド・ホテルに去来する人々を描いた群像劇ということになるだろうか。落ち目のバレリーナ、グルシンスカヤ(ロシア人という設定?)一行、企業の社長で他社との合併をもくろむプライジング(ウォーレス・ビアリー)と彼に雇われた速記者フレムヒェン、賭け事に熱中して借金に首が回らぬフォン・ガイゲルン男爵(ジョン・バリモア)、そしてプライジングの会社で帳簿係をしていたクリンゲライン(ライオネル・バリモア)。彼は余命いくばくと宣告され、人生の最後を楽しもうとグランド・ホテルに宿泊していた。

甘いマスクで常に周囲を取りまとめるのがじょうずなガイゲルン男爵は、じつは盗賊団の一味としてグルシンスカヤの宝石を狙っており、速記者フレムヒェンはそんなことはつゆとも知らず男爵に惹かれていく。一方、世界恐慌の後で会社の立て直しに躍起になっているプライジングは、フレムヒェンの魅力に取りつかれ、何とか彼女をものにしようとあがく。ガイゲルン男爵はグルシンスカヤの部屋に忍び込み、宝石を盗み去ろうとするが、グルシンスカヤの打ちひしがれた姿を見て犯行を断念、彼女に愛を打ち明ける。

GrandHotel04.jpgとまあ、そんな感じでそれぞれの人生の悲喜交々が錯綜しながら映画は進んでいくわけだが、どうも気になって仕方がなかったのがガイゲルン男爵の眉毛。あの細い眉毛はメイクのスタッフが丹念に描きこんだものなんだろうけど、ちょっとやり過ぎという感じがしないでもない。あれではもう、宝塚歌劇団ではないか。というより、宝塚歌劇団の男役のメイクが、この時代の映画(『風と共に去りぬ』のレット・バトラーとかね)をお手本にして、そのスタイルをずっと守り続けているといったほうがいいのかもしれません。


【付記】
● グレタ・ガルボはこの後、数本の映画に出演しているようですが、1941年で映画界を引退し、後は人前に姿を見せないままマンハッタンで過ごしたそうです。乙山のような世代の人間が彼女の映画を見ていないのは自然の成り行きだったわけです。いわゆるグレタ・ガルボ伝説は、サイレント映画時代の彼女に人気が集まり、その後早めの引退によってできあがっていったものではないかと想像します。

フォン・ガイゲルン男爵を演ずるジョン・バリモア(画像一枚目、二枚目の男性)は、今活躍中の女優、ドリュー・バリモアの祖父にあたる人のようです。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/06 (7)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)