どぶねずみジャケットを引っ張り出す

Dobunezumi_Jacket.jpg
衣裳棚にもう数10年居座り続けているジャケットがある。高校卒業後に初めて買い求めたもので、何の変哲もないヘリンボーン柄のツイードジャケットなのだが、色が独特でなんというか「どぶねずみ色」とでも形容するしかない代物である。茶色と灰色と緑っぽい色が複雑に混ざり合っているためそのような発色をするものと思われるが、私(乙山)はそれを「どぶねずみジャケット」と称している。だが、その個性的な色合いのためか、他の服に合わせるのがけっこう難しい。

そのため、全く袖を通さぬまま過ぎ去った年月のほうが圧倒的に多い困った服といえるが、どういうわけか捨て去るわけにもいかず、25年以上持ち続けていることになる。以前買い求めたグレーの千鳥格子(ハウンドトゥース)のジャケットの襟が変色してしまっているのに気付き、近所のクリーニング店に持っていたものの、「これはもう手の施しようがありません」と宣言され、泣く泣く処分することになったのに、わがどぶねずみジャケットはいまだ健在である。

じつはどぶねずみジャケットも、処分した千鳥格子ジャケットと同じように変色しているに違いないと思う。だがそれを微塵も感じさせないのはその複雑な色合いのおかげではないだろうか。癖の強い色合いが七難を隠してくれているわけで、まことにありがたいのであるけれど、癖が強いということはふだんから気軽に着こなすことができないことも意味する。いったいこれでは、いいのか悪いのかわからないではないか。

そんなこんなで衣裳棚の奥の方に隠れるようにして佇んでいるどぶねずみジャケットを、今年は引っ張り出してみた。そしてなんと、袖を通して外出するという大胆な試みを実行に移してみたのである。いかなる心境の変化がそのような行動をさせたのか、自分でもよくわからないけれど、とにかく今年はどぶねずみジャケットを着てみよう、という気持ちになったのである。

きっかけはたぶん、ヴェスト(チョッキ)だと思う。寒くなってきたのでヴェストを着こもうと冬物衣料を入れた段ボールを探ってみたのだが、着用することの多いネイビーのVネック、プルオーバーヴェストが見当たらない。いったいどこにやってしまったのか、どこを探しても見つからない。L.L.Beanあたりで買ったベーシックなタイプのもので、価格と品質とデザインのバランスがとれたいいものだった。同じようなものはまだ販売しているのをネットで確認済みである。これはもう、仕方がないから梅田のL.L.Beanまで出かけることにした。

なにも店に出向かなくてもネット通販でいいじゃないか、と思う人もいるかもしれないが、L.L.Beanの通販は配達が遅い(今はそうでもないかもしれないが、以前はそうだったと思う)のである。それにやっぱり現物を見ないとわからない。新しく変わったJR大阪駅周辺をあっちへ行き、こっちへ戻りながらL.L.Beanを探す。しょっちゅう買い物をする人間ではないのでこういうことになるのだろう。マルビルのところに看板を見つけ、入店する。

けっこう大きな店構えなのに、どういうわけかベーシックなタイプのウールヴェストを見つけ出すことができない。仕方がないので店員さんに声をかけ、尋ねてみると「こちらには置いておりません」ということだった。落胆する私を見て、せめてサイズだけでも合わせてみてはいかがですか、と対応してくれた店員さんはいい人だった。以前はMサイズでよかったように思うが、体形が少し変わったのか今はSサイズがジャストフィットだった。これを確かめられただけでもよかったのかな、とか思いながらL.L.Beanを後にした。

じつはせっかく梅田まで出たのだから、とL.L.Beanに来る前に「阪急メンズ館」にも立ち寄ってみたのだ。おそらく元のナビオ阪急を全面改装したものと思われるが、ずらりと並ぶブランドショップにたじろいでしまった。アクアスキュータムやバーバリーあるいはブルックス・ブラザーズやポール・スチュワート、ラルフ・ローレンの店などは自分とまったく縁がないにしても、ニューヨーカーとかJ・プレスくらいの服をふつうに買えるようになりたいな、とか思いながら「阪急メンズ館」を出た。

ユニクロにヴェストがあればいいのにな、と思う。私の思い違いかもしれないが、どういうわけかユニクロにヴェストが置いてないのである。セーターやカーディガンの品揃えはけっこう豊富なのに、なぜかヴェストがない。これはどういうわけなのか、理解に苦しむ。伊勢丹ものぞいてみようかなと思ったけれど、さすがに疲れてしまった。伊勢丹の反対側にもなにやら大きな建物があるので、そこを見て帰ろうと思った。

なんという建物か忘れたけれど、そこの何階かに無印良品があった。ふと見ると、あれあれ、ヴェストがあるではありませんか。しかもけっこう、というか、かなり安い。さすがにお値段のせいかウェストの部分はゆるゆるで、何度か着たら真っ直ぐすとんと落ちそうな雰囲気である。だけど色合いはまあまあ良かった。ネイビーとブラウンの二着をつかんでレジに。ああ、自分はやはりこういう価格帯の衣服がいちばん似合うのかなあ、などと思いながら電車で帰った。

さて写真は、ある日のどぶねずみジャケットをメインに据えたコーディネートを再現したもの。どぶねずみジャケットとヴェストの色合いはじつに微妙で、気に入っているというわけでは、ない。本当は深いワイン色なんかを合わせてみたいものだが、なかなか手に入れることができない。だけどまあ、とりあえずどぶねずみジャケットを久しぶりに着ることができて、なんだかうれしい気持ちなのです。


【付記】
● 今はこの格好で外を歩いていられますが、厳寒期にはオーバーコートが欲しくなるもの。そうすると、この上に合わせるのはどうすればいいか、などとまた悩みの種が増えてしまいます。ダークキャメル色で、フィールドコートに近いようなスタイルのものがあればいいなあ、とかあれこれ考えるのも楽しいことです。

どぶねずみジャケットの色再現は本当に難しい。写真に写っているのが本物の「どぶねずみジャケット」ですが、写真に写っているものと、実物とではどうも色の風合いが微妙に異なるように思います。補正をかけてなんとか実物に近いものを再現してみましたが、まだどうも違うなあ、という感じがしています。


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No title

着るもので、テンション上がるなんて、只野乙山さんは、おしゃれさんなのですね。
ベストも、とてもいい色ですね~。
気に入ったものに巡り合えて、良かったですね。
気に入ったものを買えたら、しばらくは、とても気分良くすごせますものね。

Re:かえるまま21さん

かえるままさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
食べるものも、着るものも、小さなことですが、
小さなことの中に小さな幸せを見つけられたら、
ちょっとだけ、いいことでしょう!

No title

昔の どぶねずみジャケット いいですね~
何とかコーディネイトして着たいと言う気持ちよくわかります。
流行にとらわれない自分らしさ、かっこいいと思います。
RIAN MASTER

ふふっ 同じようなことを、私もしています。
ヘリンボーン ツイード大好きです。
ちょっとラフなフィールドコート正解だと思います。
RIAN MAMA


Re:rian master&mamaさん

Rian Master&Mamaさん、こんばんは! コメントありがとうございます。

Masterへ
流行を追うなんて、もう自分にはできませんよ。
だけど、流通している品物が、多かれ少なかれ流行を
反映したものになっていて、それがきらいでも使わざるを得ない、
という状況にもなっているかもしれませんね。

Mamaへ
ラフなフィールドコート、これがなかなか、ないんです。
どこで売っているのかなあ。
どぶねずみジャケットの上には、チョコレート色がいいんじゃないか、
などと思うのですが、なかなか気に入った実物を見つけるのは難しいのです。

No title

只野さんは、何十年も体型を維持されているようですね。
うらやしいかぎりです。
ないかされているのですか?

私の場合、10代の頃は50キロ台の体重だったのが
今は、70キロ台です。
ですから、昔の服はまったく着れません。

Re: バランス屋さん

バランス屋さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
どぶねずみジャケットは確か19歳のときに買ったものですが、
AB体というちょっとゆったり目のシルエットなのです。
もしY体を選んでいたら、到底着ることは出来なかったでしょう。

乙山も一時70kgを超えたことがありました。
そこで「腹八分目作戦」を実行したのです。
現在60kgの半ばですが、もう少し絞りたいくらいです。
男性10代は、まだ身体ができていませんので、
10代の頃の体型を基準になさることはないと思います。

No title

只野さんお返事ありがとうございます。
たしかに仰るとおりです。

ところが、私の身近で18、9歳の時の体型を維持している人がいるのです。
話を詳しく聞くとその頃に買った服が今でも着れるそうです。
なにか特別なことをしているのか聞いてみると、何もしていないということです。

そういうことがあるので、只野さんもそういう体質なのかなと思ったわけです。

Re: バランス屋さん

バランス屋さん、再コメントありがとうございます。
なるほど、18、9歳ですでにその人にとって「大人」の体形が完成したか、
もう一つはその人が「幼児体型」を維持するタイプの人か、
おそらくはどちらか、ということなのでしょう。

乙山は申しました通り、70kgを超えたこともあり、
なんどかトラウザーズ(ズボン)だけは履き替えましたよ。
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只野乙山

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