先の尖った靴は履きたくない

jacoform.jpg
近頃は先の尖った靴が流通しているようである。先がすっとしていてなんだかお洒落そうだし、そういう靴を選んだ男は流行にも敏感であることを意味するのだろう。しかしながら、どうもあのような形態の靴を進んで履きたい気にはなれないのである。こんなことはたぶん私(乙山)だけかもしれないが、あの先の尖った靴を見るとロングノーズ・ガー(淡水魚)を連想してしまうのだ。

靴は男性服飾における最重要アイテムであると思っている。なにしろホテルのフロント係は客の靴とベルトを見て瞬時に品定めするというではないか。一見目立たないようでいて、じつはその人となりを如実に表しているのが靴、なのかもしれない。それがロングノーズ・ガーであってもらっては困る、などというのは冗談としても、靴の形態はその機能によって決まるのであって、まず形ありき、という発想が気にくわない。

もう何年かしたら「古いよね」などと言われる運命にあるようなデザインの靴は好きになれない。先のとがった靴が流行する前はスクエア・トゥが流行っていたように思う。スクエア・トゥ自体は古くからあるものだが、多くの人が履いているのを目にすると、どうしても履いてやるものか、などと変にひねくれたへそ曲がり的根性が出てしまう。自分でも苦笑してしまうほかないのだが、そんなわけで何年も変わらぬスタイルの靴を選んでいる。

さて、修理に出した靴が戻ってきた。写真の靴がそれであるが、この靴は2002年ごろから履いていて、アウトソール(靴底)がかなり擦り減ってしまったので、ソール交換をしてもらった。かれこれ9年くらい履いていることになるのだろうか。靴は使い捨てになることが多いこの頃、ソールの張り替えをしてくれるというのはなんだか嬉しいではないか。所々綻びもある靴だけど、もう少し履き続けていられるのではないかと思う。

写真の靴はいわゆるドイツ健康靴の〈ヤコフォーム 338〉というもので、ご存知の方も多いのではないかと思う。通販カタログを何の気なしにめくっていたら目に付いて、デザインは独特だけど発売以来30年以上変わらぬスタイルを続けているというのが気に入って、ついふらふらと注文してしまった。履いてみるとなかなかいい感じだったので、もう一足は大阪・中之島(現在は兵庫県川西市に移転)にある輸入代理店に直接出向いて買い求めたほどである。

メーカーのパンフレットには「裸足に近い靴」などと書いてある。つまりこの靴は「人間が裸足で自然に立っているとき、つま先は軽く扇状に広がり、趾はまっすぐ伸びている」ことと、「人間が裸足で自然に立っているとき、つま先とかかとは同じ高さになっている」という二つのポイントを押さえた構造になっている。つま先部分が空豆のような形をしていることも、つま先とかかとの部分が歩行の妨げとならぬよう軽くカットしてあるのも、すべて意味があってそのようになっているというわけだ。

なんだかいいことづくめの健康靴みたいだが、長年付き合ってみると「これはちょっとなあ」というところもある。たとえばカウンター部分(かかとの内側)はかなり消耗が激しく、少し履いていると擦り減って穴ができる。これは思ったより早く来るので、いい靴だから毎日、とか、もうこれしか履けなくて、なんてなことをやっているとあっという間にかかとの内側が擦り減ってしまうんですね。

約10年の間に2回カウンター部分の修理をしてもらったけど、本当はもっとする必要があったわけで、靴を脱いだ時なんかに穴のあいた内側を晒すのはあまり気持ちのいいものではない。もちろん、擦り減って穴が開いたカウンター部分の修理もきちんとやってくれるわけですが、それにしても弱いなあ。こればかりは本当にもう少し何とかならないものか、と感じる。私の靴の履き方が悪いせいもあるかもしれないが、とくに変わった履き方をしているわけではないと思う。ちなみに靴を履くときはかかとにぴたっと寄せて紐を結ぶようにするのがいいとか。

また、かかと全体のホールドがちょっと浅いようにも思う。かかとを包む部分が他の靴に比べて心持ち浅く作られているのだ。輸入代理店の人の話では、この部分はカウンター部分の修理をするたびに少しだけカットするらしいので、もともと浅い部分が余計浅くなってしまうんです。少しカットすることによって「カウンター部分の修理は2、3回が限度です」というけれど、それ以降は穴のあいた靴を履き続けないといけないわけだろうか。

使用経験者の話では「もうこれしか履けない」とかあるけれど、私はそこまでは思わないな。いろんな靴を履いてみて、自分の足を「鍛える」必要もあるんだ、とある靴屋の店主が言っていたことだし、かかとの内側も擦り減りやすいこともある。なので現在、靴は他にもあって、プロ野球の投手みたいにローテーションを組んでいろんな靴を履くようにしている、というのが本当のところだ。いい靴を探すのは難しく、また面白いことでもあります。


【付記】
● アウトソールの修理代は1万円程度ですが、カウンター部分の修理と中敷きの修理も合わせると16000円ほどでした。けっこうなお値段で、ちょっとした靴なら新品が買えてしまうほどですね。約10年も履いたわけですからじゅうぶん元は取れていると思うけれど、捨てるかどうか、わりと迷った挙句に修理に出すことにしました。綺麗になって帰ってきた靴を見ると、やはり修理に出してよかった、と思えてきます。


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パンみたいな靴。

乙山さん、
こんにちわ。
このパンのような靴はぼくもはいていましたよ。
けっこうソールが柔らかいんですよね。はきやすい靴でしたね。
先の尖った靴はとくに最近、若者のあいだで流行っているようですが、
ぼくはあの少しはねあがった靴がキライです。ブッチャーシューズを
思い出しましてね、駄目ですよ。しかし、ジーンズでもスーツでも
はける靴なんてないと思いますが、ぼくはレッドウィングのポストマン
やチャッカーを好んではいていますよ。値段もヤコフォームより安い
ぐらいですしね。乙山さんのようにソールを張り替えてはき続けることは
素敵なことだと思いますよ。というかソールの張り替えのきく靴を選んで
いることがいい。ワークシューズというのは変な運動靴より楽ですよね。
手入れの行き届いた靴は品がありますものね。そういえばリーガルの
28000円の靴を3度ソールを張り替えて使ってたんですね。
そしたら内側の擦れているところの修理もしてくれましてね、
リーガルショップも良い店にあたるとけっこう親切ですよ。
営業で履くならリーガルの靴もいいのかなあと思ったり。オールデンなどは
高いですしね。リーガルのヒモのついていないガボッとはけるやつはワイズも
ひろくて最近HOBOのお気に入り。はい。

HOBO

Re:HOBOさん

HOBOさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
新しい靴を履いていると、ふつうに歩いているだけなのに、
つんのめってしまうことがあります。
爪先の部分が、地面に当たっていたのです。

ヤコフォームだと、そういうことは全くありませんでした。
歩くことにいいこと、脚の指はどういう動きをしているかなど、
細かいところに気を配った、なかなかいい靴かもしれませんね。

リーガルシューズは好きな靴の部類に入ると思います。
リーガルのプレーン・トゥを履いていたことがありますが、
なかなかいい出来だったように覚えています。

乙山はヤコフォームを履かなければやっていけない、というほど
「平均値」を離れた足ではないようで、トリプルE(EEE)サイズでは大きいくらいなんです。
甲もそんなに高くなく、しっかり結ぶと紐が余って仕方ないくらい。
なのでリーガルシューズもOKなんです。

リーガルの本物、レザーソールでグッドイヤー・ウェルト製法によるもの、
たとえばプレーン・トゥかストレート・チップなんかを
持っていてもいいんじゃないか、と思うのです。

それでもう、じゅうぶんのような気もしますが、
靴好きの人はもっと、と思うのでしょうね。
そこはオーディオ好きの人が少々逸脱してしまうみたいですよね。

No title

私も尖ったのは苦手ですね。
といっても持っている靴は標準的な黒いやつと、ウォーキング、そして運動靴がそれぞれ一つずつ。
その日の気分やなんやらではき分ける…というわけにはまいりません。

といっても、そんな靴さえめったにはくことはなく、ほとんどサンダルで過ごしているのですが・・・

Re:gatayanさん

gatayanさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
いろいろ靴を持っていて、というのはお洒落心からくるというより、
一つの靴を履き続けていたらすぐ駄目になる、
だから同じ靴を買って交代に履いたらどうだろう?
そうすれば靴自体の寿命が二倍になるのではないか、
などという、どちらかといえばせこい考えに基づくものです。

サンダルといえば、ギリシャ人はサンダルを
いつも履いていたんじゃなかったでしょうか?
南の地方だと、それにふさわしい靴文化があったわけでしょう。
ローマ時代の人がきっちりした革靴を履いていたようにはとても思えないのです。

いまや25度を超える日がほぼ半年くらいある日本ですから、
サンダルで生活するというのは当然のことでしょう。
ジャパニーズ・サンダル=わらじ/ぞうりと、
便利なこと極まりないんですよね。

^^

自分も尖った靴は苦手ですね。
特にこれ見よがしに尖っているものは。
気障過ぎて疲れます^^;

以前靴の収集に凝ったことがあります。
2000~3000円の安い値段限定でしたが。
数は必要ないのに。
どうしても買わないと気が済まなかったのですw

でもいざ履いてみると。
大半は自分の足には不向きなものが多く。
自然と履く靴は限定されてきます。
履きやすいものを履くようになるんですね。

ある程度歩かないと。
靴というものは分からないですから。
これは仕方がないですけど。

なんだかドラフトで数多くの選手を取っても。
活躍出来る選手はほんのわずか。
そんなプロ野球の世界に似ていますw^^)/

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうですね、おっしゃる通り、靴は履いてみないとわかりませんね。
どれだけ評判が良くて、値段が張っても、合わないものは合わない。

非常に高価な革靴がどれも駄目で、
安いメッシュの運動靴がいちばん合っている、ということもあるんですね。
だから靴選びは面白いし、難しいのかもしれません。

なのでオーダーメイドの靴がいいのかもしれませんが、
これまた御値段のほうが……でも「勉強代」と、
それを初めからオーダーに回してみると、どうだろう、というのは
ひょっとしたら「とんとん」かもしれないんですね。

ちくしょう、などど思ったりするんですけど、
やはりオーダーの靴なんてのはよほどのことでしょう。
そこそこの靴をはいて、そこそこ歩ければ、それはそれで
けっこう幸せってもんじゃないかと思うんです。

先の長い靴は危険

 先の尖った靴というか長い靴はつまずきやすく危険なことがあります。

 先月の話ですが、ぼくは襟裳岬の石段でつまずいて、ひどい目に会いました。もちろん不注意のせいもあるのですが、考えごとなどをしているときつまずきやすいのには理由があります。

 足のつま先と靴の先端との間に距離がありすぎることが問題なのです。つまり自分では石段の角につま先が触れるタイミングをみはからって足を上げているのに、そのほんの少し前に靴の先端が角に接触するため、体勢が崩れてしまうわけですね。

 流血の教訓とでも申しましょうか(笑)。お互いに気をつけようではありませんか。

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
新しい靴を買って履いていると、よく躓くことがあります。
躓く、というのは足の先が地面に当たってしまうことです。

記事に書いたドイツ健康靴ではそのようなことはありませんでした。
足の形(平均値?)に合わせて作ってありますし、
爪先のところは靴底がカットしてあるくらいなんです。
だから躓きようがありません。

写真の靴でないような、ふつうの靴を履くとよく躓くんですよね。
気を付けて歩行しているつもりが、あれっ、
と思った瞬間、身体が思う方向とは別の方向へ……
いまだに、けっこうあるんです。

No title

一時期、尖ったメンズシューズが流行ってたように思いますが、リバイバルでしょうか。。。?
私は尖ったシューズを履いたメンズを見ると、どうも水ものの仕事をしている人かと思ってしまいます。

写真を見た感じ、オブリークトゥなのかな、と言う気がします。
私もイケイケ時代にはハイヒールなるものを履いたことがありますが(笑)、外反母趾が進行し始め、それ以来は低い、先の尖ってない、どちらかと言えばスニーカー系統を愛用しています。
まあ、それも、わが社にドレスコードなるものがないおかげですが。。。

私はオブリークトゥみたいなのが、見た目にも好きですね。
だって、足にも優しそうだから。。。
尖った靴なんて、どうやって足が入んのよ、と突っ込みたくなります。

Re:依里さん

依里さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
女性は素足かストッキングで足元が見えるような靴を
履いていることが多いですね。電車で座っていると、目に付きます。

そんなとき、その人の足の親指が内側に曲がっていたりすると
なにか痛々しいものを感じてしまいます。
確かにハイヒールやピンヒールをはくととても素敵に見えますが、
足を痛めてまで履くことはないように思います。

男性でも靴はかなり重要なアイテムだと思うのですが、
女性の場合、あのハイヒールがお洒落な洗練された何かを
象徴しているのではないかとさえ思えてくることがあります。
だからこそ、少々(?)痛くてもあの靴を履き続ける女性も多いのではないかと。

写真の靴はオブリーク・トゥに近いもので、男女兼用なんです。
ドイツ健康靴には男女兼用型が多いんですよ。
秋の天気のいい日には、女性と川べりかなんかをいつまでも歩いていたいもので、
そんなとき、彼女には歩きやすい靴を履いていてほしいものです。
ハイヒールを履いた人を、歩いて連れ回したくはありません。
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只野乙山

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