乙山流おでん

Oden.jpg
少しずつ秋が深まってきた。吹く風もどこか肌寒く、街ゆく人の中にはもうマフラーを巻いている女性もいるほどだ。今からマフラーなど巻いていたら、真冬はいったいどうするんだろう、熊の毛皮でも体に張り付けるんだろうか、などと思ってしまうくらいである。こうなると、なんかこうあたたかいものがおいしくなってくるんですね。

そんなわけで、おでんを作ってみました。なにっ、これがおでんだと! ていうか、ちくわとか牛蒡天などの練りものが一切入っていないではないか、厚揚げも、じゃがいも、卵もない! こんなものはおでんとは言えぬわっ! などという声がどこかから聞こえてきそうであるが、食べてみるとおでんとしか言いようのない味なので、やっぱりこれはおでんなのである。

そもそもおでんとは何か? たっぷりのつゆ(おでん出汁)を張った鍋で煮込んだものなら、なんでもおでんになるのではないだろうか。ロールキャベツやトマトをおでんに入れてもなかなかおいしいらしいのだ。だったら、何も練り物やよくある素材にこだわることなく、自分の食べたいものだけを入れるとこうなってしまった、というだけである。

おでんは、具材の下拵えさえしっかりしておけば、あとはそっと鍋に入れてゆっくり煮込むだけである。煮込みの過程は保温調理器に任せてしまうというお気楽料理だから、仕込みができればもうできたようなものである。とはいえ牛すじ肉と大根だけはきちんと下処理をしておかないといけない。

牛すじ肉は意外と高い。和牛ともなれば平気で100g=150円くらいの値が付いている。よく利用している業務用食料品店でもそのくらいの値段である。仕方ないのでそれくらいのすじ肉を買ったけど、理想的には豪州産で100g=100円を切ったものを使いたい。すじ肉を任意の大きさに切り、水から煮て煮立ってきたらアクをとり、きれいに水洗いする。これを3回ほど繰り返した後に長時間煮込むのだが、これは保温調理器に任せた。

長時間煮込んだすじ肉を汁ごと冷蔵庫に入れて保存すると、ゼラチン質が固まってジェリー状になる。まあ言ってみれば「煮こごり」ですね。コンソメジュレ、などとお洒落そうな料理がありますが、あれはこれと同じ理屈で固まっているのです。このジェリー状の煮汁にはすじ肉の出汁(?)がしっかり詰まっているので、そのままおでんに入れて使う。

大根は「厚めに皮をむいて面取りをし……」などとレシピには書いてあるけれど、最近の大根はそのまま煮込んでも大丈夫のようだ。品種や産地によって多少の差はあるかもしれないが、ここでは「皮むきなし、面取りなし」の横着料理法で行く。保温調理器で下拵えするのだからそんなに神経質になる必要はないわけです。

大根を水で洗って、輪切りにする。それだけ。裏に十字に切れ目を入れて、なんてことはしませんよ。皮むきもなし、面取りもなしで輪切りにした大根を、上新粉を入れた水で煮ていきます。米のとぎ汁があるのなら、それを使うのがいちばんいいと思う。ある程度火を通したら、後は保温調理器に放り込んでタイマーをセットするだけ。それをしているうちに、削り節と粉末昆布を使って出汁をとるのだが、「おでんの素」があるのなら、それを使ってもいいと思う。

豆腐はコープこうべの「木綿」を使った。いろいろ食べてみたけれど、これがいちばん鍋や湯豆腐には合っている気がする。任意の大きさに切った後、キッチンペーパーでくるみ、重しをかけて水抜きをしたけれど、これは別にしなくても、そのまま鍋に放り込んでもいいんじゃないかと思う。保温調理器で煮込んだだけあって、豆腐に「す」は立っていませんでしたよ。おでん出汁と一緒に食べるようにするとおいしい。

白葱。これが旨いんですよ。柔らかく煮えた白葱を食べるとね、まるで缶詰のホワイトアスパラのようだ。林望さんが料理本で白葱料理を「ネギパラガス」などと命名していらしたが、なるほど納得の味。手羽元はおでん種としてもなかなかおいしいもので、なにしろしっかりと出汁がとれる。だから、乙山流おでんは削り節と昆布、牛すじ肉、鶏肉の、三つの出汁がブレンドされたおでん出汁ということになるのではないかと思う。

味は例によって「できる限りの薄味」を志向している。いささか薄味すぎたかもしれないが、薄口しょうゆ、みりん、塩で味を調えてある。写真のいちばん手前に見えている緑色の野菜は「しろ菜」で、ぐつぐつ長時間煮込んだものではなく、食べる直前におでん出汁で別の小鍋を使ってさっと煮たものを合わせた。電子レンジで軽く火を通して、横に添えるだけのほうがいいかもしれない。その方が、緑色がきれいに残っていると思う。


【付記】
● 予想した通り、大根は皮付きのまま調理して何の差支えもありませんでした。箸でさっと切れるのはやはり快感。すじ肉も、これがあのすじ肉か、と思えるほど柔らかく煮えあがりました。大根とすじ肉はやはり下処理が命ですね。


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^^

おお。
自由な発想をされていいですね^^
自分はおでんに関しては。
練りモノ・卵・厚揚げ・大根~など。
よく使われる材料になりますね。
どうもそうでないとイケナイ!
と思う固定観念があるんですね。

カレーはゴーヤ・高野豆腐を入れて。
「ゴーヤトーフカレー」に出来るんですが。
おでんではその大胆さがなくなりますw^^)/

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
本当は人参のまるごと1/2がごろっと入っているのですが、
そこまで見せることはありませんよね!
だけど下ゆでしておいた人参を、おでんに入れてもおいしい。

なんか、白っぽいのと、茶色ばっかりでしょう。
赤色があると、インパクトがあるんですよね。それと、緑とか。
それらを実現しようとすると、従来の発想だけでは駄目なようです。

ある部分では古典を貫き通すのに、そのほかの部分では
なにか新しいことをしたがるというのは、あきらかに矛盾していますね。
でもまあ、これも一応「おでん」の端くれ、ということで。

おでん

見た目すき焼き風?
けれど 作り方を拝見し認識を変えました
まさにこれはおでんです 

丁寧ですね
私など おでんというのは手抜き料理の代表的なものです
ただし大根だけは 煮てから一度火を止め冷ますという手順を踏みます
材料は スーパーに売っている「おでん材料」のコーナで 気の向くままにチョイスし
いっぱい作っちゃったわと言って次の日から何日か煮物のおかずにする
手抜き主婦の塊みたいな私には
心にズキッ!のおでんのお話でした
大いに見習わなければなりませんね





No title

スジ肉の下茹で3回とは!素晴らしい・・・私は1回だけ茹でて
アクを取った後、圧力鍋で強制的に柔らかくしてから出汁で
煮込んでしまいます(手抜き(^^;)

おでんの具なんてその時々で食べたいものを煮込めば良いですよね~
出汁の取れる食材を一~二つ入れると美味しく出来ますし・・・
私も鳥手羽元or手羽先は必須です♪
しかしおでんに白葱は不勉強ながら初耳でしたが、西洋おでんの
ポトフにもポロ葱なるものが入っているんですし、煮込んで美味しい
食材なんだからおでんにもアリですよね~
また今度試してみます!!

Re:dariaさん

dariaさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうそう、これでもいちおう「おでん」のつもりなんですよ。
たとえみなさんごお存知の食材が入っていなくても、そうなんです。

本当はいろいろ入っているほうが楽しいですね。
あっ、これは僕が……とかいいながらつつくのもいい。
おやつ代わりにそれだけで食べるのもおでんでしょう。

いっぱい作ったわ、とおっしゃるそばで、
何だが嬉しそうにしている方々の姿がなんだか
浮かんでくるような、そんな楽しそうなおでんですね。

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
まあいろんなやり方がありますからね。
作ってみて、食べてみて、それでよければ、いいんですよね。

何が正しいとか、そういうのはわかりませんし、
おいしければそれでいいではないか、などと思うのです。
圧力鍋もいいなあと思っているんです。
じつはまだ、使ったことがないんですね。

なのでそれについては語ることができません。
非常に短い時間で、柔らかく煮ることができる調理法だと、
知識だけでなんとなくイメージしています。
いろいろなライフスタイルがありますし、それらに合った、
調理法があるのがいいんですよね。

そうそう、ポトフにポロ葱。
おいしそうじゃありませんか。
ポトフにポロ葱が出てくるところなど、さすがzumiさん、という感じです!

じつはね、画面には挙げてないんだけど、
人参まるごと1/2が、乙山流おでんにはあるんです。
これもなかなか、おいしかったですよ。

旨そうですね。

いやあ、自分がいかに固定観念に満ちみちたた
当たり前のおでんを食べてきたかを思い知りました。
というか、食べさせられてきたか(笑)

白ネギ、大好きなんですが、おでんで食べたことがない。
手羽元、手羽先が泳いでいるのも見たことがない。
ましてや、コメント欄にあった人参が仲間に入るなんて、想像を絶する(笑)

自由な発想とおいしさの追求、頭が下がります。
やはり自分でつくるしかないですね。

Re:mapことクワトロ猫さん

mapことクワトロ猫さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
おでんは「なんでもあり」と思っていますが、
やはりこれこそおでんだ、と言いたくなる素材があるのではないかと思います。
クラシックおでん、とでも命名して他日作ってみようかな。

白葱は何ともおいしいですよ。とろけるように柔らかく、甘いのです。
人参も柔らかく煮ると箸ですっと切れますし、甘いのです。
煮しめや筑前煮で人参がおいしいのなら、おでんでもいけるだろう、
と踏んで放り込んでみました。これはなかなかの正解でしたね。

鶏おでんというのは、関西ではわりとあるんですよ。
鶏(かしわ)屋さんの店頭に「鶏おでん」などというポスターもあるくらいでしてね。
手羽元を柔らかく煮ると、軟骨のところまでするりと食べられて、
絵にかいたような骨(?)だけが残るんです。
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只野乙山

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