阪急池田駅周辺を歩く(2) 喫茶&洋食 ランタン

Lantern_FrontView.jpg
知らない街に降り立って目的もなく歩くのが好きで、自分を「遊歩者/flaneur」になぞらえて遊んでいる。当ウェブログの名前もそこから来ているのであって、狭義の街歩き(遊歩)だけではなく、人生の遊歩者という意味でもある。遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけむ、と言うほどではないかもしれないが、趣味的なものや好きなことに没頭しているのが楽しく、主にその種のことをウェブログに書いている。

さて8月忘日のことになるけれど、阪急池田駅の自転車置き場のすぐ近くに一軒の喫茶/洋食の店を見かけた。〈ランタン〉という名前で、なんだか懐かしいようないい雰囲気だったので興味が湧いて入ってみることにした。中華料理店を利用することが非常に多い私だが、洋食屋さんとかうどん・そばの店も好きである。

喫茶/洋食の店といってもいろいろあるけれど、大別すればだいたい次のようなスタイルになるのではないかと思う。すなわち、コーヒーなどの喫茶がメインだがサンドイッチやカレーなどの軽食も出すものと、食事がメインだが食後にコーヒーも出すというもの。そして、何か料理一品とコーヒーを看板にするもの。たとえば「コーヒー&カレーの店」などというのがそれに当たるのではないかと思う。

〈ランタン〉は喫茶主体の店と料理主体の店との、だいたい中間くらいに位置する店、という感じだろうか。一軒の喫茶店にしては広い店内に、二人か三人くらいの給仕係の人がいて、奥の厨房には髭を生やして眼鏡をかけた男性が料理に専念しているようであるが、厨房にはもう何人かいるかもしれないという具合。店の構えとしても小ぢんまりした店と、大きな店のちょうど中間あたり、と言えそうな感じである。

メニューもいろいろあるようだったが「ランチ」を頼んだ。たしか「魚フライと出汁巻き卵、鶏のから揚げ」だったように思う。ちょうどお昼時だったせいもあって、どんどん客が入ってきてけっこうな繁盛ぶりである。お買い物ついでの奥様方や会社員風の人たちなど、いろんな人が入ってくるではないか。へぇ、という感じで感心する。

Lantern_Lunch.jpgさて料理が来ましたよ。ケチャップ主体のソースに鶏のから揚げを絡めて洋風に仕立てたものと、魚フライのタルタルソース添えの真ん中に、出汁巻き卵が配されているのだが、それがなぜか違和感なく皿の中でまとまっているのが不思議だ。皿に乗ったご飯に、味噌汁が付いて来て、お箸が添えられているという、見事なまでの和洋折衷スタイルである。写真では見えないかもしれないが、鶏料理の下には懐かしいスパゲティのケチャップ和えが添えられているんですよ。

だけどねえ、ご飯は皿にではなくて、飯椀に盛ったほうがいいなあ。飯椀を持つように皿を手に持って食べるほうがやりやすいということはあるのだが、本当はそれはあまり行儀が良いとはいえないんですね。かといって、皿を置いたまま左側から箸でご飯を口まで運ぶとなんだかそれが遠いように感じるのも本当のこと。洋食風にならないというのがいちばんの理由だと思うけれど、皿にご飯を盛る、というのは洋食風の店におけるよくない習慣の一つではないだろうか。

テーブルマナーなどというほどのことでもないかもしれないが、坂口安吾のエッセイの中に、こんな一節がある。「フォークをひっくりかえして無理にむつかしく御飯をのせて変てこな手つきで口へ運んで、それが礼儀上品なるものと考えられて疑られもしない奇妙奇天烈な日本であった」(「デカダン文学論」(1946)『坂口安吾全集14』ちくま文庫より)。私はこれを読んだとき、ぎょっとなったのである。

なぜなら、これと同じことを叔父が主張しており、どこぞの洋食屋さんに連れて行ってもらい海老フライ定食かなんかを食べていた私にそれを教えてくれ、子どもだった私はそれを素直に信じ込み、実行したことがあるからである。それがいつだったのか正確には覚えていないが、1970年代だったことは確かである。

Lantern_IcedCoffee.jpgこの「ご飯をフォークの裏側に載せて食べるのが正式である」という作法は、かなり広範囲に浸透していたのではないかと思う。さすがに最近はもうめったに見かけないけれど、1980~90年代にかけてなら、そうやって洋食を平らげている人を何度か見かけたことがあり、ああ、例の作法はまだ生きているんだなあ、と苦笑いしたい気持ちで思ったものである。

皿に盛られたご飯を見て、ふとそんなことを思い出したのだが、〈ランタン〉の料理はなかなかおいしかった。値段ははっきり覚えていないが、680~750円あたりだったと思う。きっちり仕事をしているいいお店で、おそらく何十年と続いているのではないだろうか。例によって「失われた味を求めて」アイスコーヒーを注文してみた。こちらの方はまあまあ、という感じだろうか。これだ、これなんだよ! という味を確かめたくて、まだまだアイスコーヒーを探す旅(?)は続きそうです。


【付記】
● 池田には洋食屋さんもあまりないのではないか、と思いました。その前を通るとラードのいい香りがしてふっと食べたくなるような、そんないい洋食屋さん自体が、近ごろは少なくなってきているのではないかと思うのです。乙山が探し切れていないだけかもしれませんが……


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人生の遊歩者・・かっこいい!

フォークを裏返しにして御飯を乗せる~
これやってましたよ!!!w

上品とか正式とか関係なく。
こちらのほうが内側に乗せるより。
スムーズで食べやすかったのです。

内側に乗せて食べると。
フォークの先端が邪魔になるし。
口内に刺さるようで今でも嫌ですw

最近はもっぱら箸です。
やはり御飯はこれが一番よろしいようですw^^)/

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
人生の遊歩者なんて、気取って書いておりますが、
現実では冴えない、うだつの上がらぬ男であります。
せめてウェブ上だけでも格好つけさせてくださいな。

やはりご飯は飯椀と箸に限ります!
あの中途半端な皿盛りがいちばん困るのです。
だけど本当にいい店なら、乙山は迷わずパンにします。
だってね、出来のいいソースならパンになすって味わいたいじゃないですか。

そもそも、いいパンを出してくれる店が少ないので、
仕方なしにライスを選択するわけですし、
料理もライスを選んだほうがいいようなものが多いのです。

あの「ライスプレート」とやらが、いつの日かなくなってくれることを
夢見ながら、もうしばらく妙なスタイルを続けていくしかないようですね。

No title

近頃本格的なイタリアンとかフランス料理が多いですが、洋食屋に行くのもいいもんですよね。
フライに出汁巻き卵を合わせたメニューは初めて聞きました。
でも、なんだって美味しければいいと、私は思います。
洋食屋のうどんのようなナポリタンがふと、恋しくなりました。

Re:依里さん

依里さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
洋食屋さんって、何か不思議な魅力があるんです。
街で見かけることが少なくなってきたんですけど、
昔ながらの洋食屋さんがあると、なんだか幸せな気分です。

この〈ランタン〉は、たとえば〈グリルなになに〉などというふうに、
本格的な洋食屋さんではないので、出汁巻き卵が入ってくるんですね。
もうなんでもありの「お弁当」の感覚ですよ。

だけどそれが、日本人的な感覚にぴったりくるんじゃないかと思ったんです。
ご飯を皿に盛るというのがなければ、本当に「お弁当」ですよね。
これがまた、けっこうおいしかったのです。

かなり気合を入れてお店をやっていらっしゃる。
いい店でしたよ。

No title

あ、なんだか、こういう気取りのない洋食屋さんっていいですね。
こっちでも少なくなってしまった様に思います。

かえるままは、お皿のご飯でお箸がついてなかったら、フォークをひっくり返して食べる食べ方が染み付いてしまいました。あまり、今は見かけませんね?
逆に恥ずかしいのですが、切りながら、持ち替えなくていいので、返って楽になってしまいました。へんですね?
ご飯茶碗とお味噌汁がいいですね。

このアイスコーヒーは濃くて冷たくて美味しそうですね。

Re:かえるまま21さん

かえるままさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
昔は「グリルなんとか」という名前の店が、
どんな町にも一、二軒はあったんじゃないかと思います。
今はそれを見つけるのが難しくなりましたね。

他の方々のコメントからすると、やはり
フォークの背中にご飯を乗せて食べるやり方は、
広範囲に浸透しているようですね。

右手に持ったナイフで肉などを切った後、
それを置いてフォークに持ち替えてご飯をすくう、というのは
いちいち面倒な感じがしますものね。

そもそも西洋料理の流儀の中にメイン料理と一緒に
炊いたお米を食べるという習慣がないのだから、
仕方がないといえば仕方がないんですよね。

そこそこ本格的なお店で、ナイフとフォークだけ用意してあって、
御飯が皿に盛られているときが困るんですよねえ。
パンがおいしそうなら、迷わずパンを選ぶのですが、
洋食屋さんって、意外といいパンがなかったりするでしょう?

ご飯なら箸と飯椀、これがいちばんいいように思います。
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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