『ニューオーリンズ』 (1947)

『ニューオーリンズ』 アメリカ (1947)

Neworleans_Scene01.jpg
原題:New Orleans
監督:アーサー・ルービン
出演:アルトゥーロ・デ・コルドヴァ、ドロシー・パトリック、マージョリー・ロード、ビリー・ホリデイ、ルイ・アームストロング、ウディ・ハーマンほか


「古い銀幕映画を見る」という独自企画を勝手に立ち上げ、少しずつ見るようにしている。子どものとき、よくわからぬままに大人が見ているのを一緒に見ていた、という程度の記憶しか残っていなくて、名前だけは知っているけれど実際に見たことはない、という映画がわりとたくさんある。この際それらをしっかり見てみようではないか、という企画なんですね。

1970年初頭、我が家に真空管式のカラーテレビが導入され、それまで使っていた真空管式の白黒テレビは子どもが使っていいことになって二階の子ども部屋に移された。それにかじりついて見ていたので、じつはカラー映画だったのをモノクロ画面で見ていた可能性もあって、いわゆる「銀幕の映画」をそれと意識してしっかり見た、などというのはずいぶん後になってからのことである。

Neworleans_Scene03.jpgヌーヴェル・ヴァーグがどうの、ネオ・リアリズモがどうたら、などというのは後から仕込んだもので、リアルタイムでそれらを体験したわけではありません。映画館に入り浸るほど映画が好きだったわけでもない私(乙山)は、もっぱら近所のレンタル店で借りてお勉強したくちであります。このことは正直に書いておきたいと思う。

さて「古い銀幕映画を見る」を実行しようと近所のスーパーマーケット内にあるレンタル店でなにか物色しようとしていたら、入口付近に「在庫処分セール」などと称してDVDやらCDなどを売っている(レンタル店とは無関係)のが目に付いた。シネマ・クラシックなどと題して古い映画がたくさんあるではないか。さすがに『戦艦ポチョムキン』(1925)はなかったけれど、それでも魅力的な銀幕映画がてんこもりの状態である。私はこれに、思わず迷ってしまったんである。

Neworleans_Scene05.jpgだってねえ、レンタル店で借りるとDVD一枚340円くらいなんですね。まとめて借りるとお得なわけだが、一週間で4枚も5枚もDVDを見るのは不可能である。CDならiTunesにとりあえず取り込んで後で聴くことができるが、DVDの場合はそうもいかない。シネマ・クラシックシリーズの売価は一枚350円である。これ以上部屋に余計なものを持ち込まない、という気持ちもあるだが、ついふらふらとDVD三枚を買ってしまったのである。

そのうちの一枚が『ニューオーリンズ』(1947)。舞台は1910年代のニューオーリンズ。まだジャズが誕生する前の、ラグタイムとかディキシーランドなどと呼ばれる音楽が黒人やクレオールたちの間で盛んに演奏されていた。ストーリーヴィル、ベイスン通りにある賭博場の経営者ニック・デュケイン(アルトゥーロ・デ・コルドヴァ)の店で演奏していたサッチモ・アームストロング(本人)たちの音楽を、メイドのエンディ(ビリー・ホリデイ)に誘われて聴きにゆくオペラ歌手のミラリー(ドロシー・パトリック)だが、次第にニックに恋心を抱くようになる。

Neworleans_Scene02.jpgオペラ歌手の娘が新しい音楽や賭博場の経営者に夢中になるのを快く思わぬ母親は、なんとしてもニックを町から締め出そうと画策する中、ニックの店に出入りしていた白人娘が店を出たとたんに車に轢かれるという事故が起き、とうとう軍隊までが出動してベイスン通りを封鎖するという事態に発展した。シカゴで新しい店を開こうとするニックのもとに、かつての店で演奏していた演奏家たちが集結し、シカゴで新しい音楽が人気を博するようになる。

ルイ・アームストロングが本人役で登場するほか、ビリー・ホリデイも登場するのがうれしいところ。『ニューオーリンズ』はビリー・ホリデイ唯一の映画出演作で、ここではそんなにしわがれた声でないビリー・ホリデイの歌を聴くことができる。二大ジャズ・ミュージシャンを前面に押し出した映画なんだけど、中心の話はニックとミラリーの恋で、こちらのほうもなかなかいい味を出しているんじゃないかと思う。

Neworleans_Scene04.jpg賭博場経営者のニックは「君をシカゴに連れていく」といいながらも、ミラリーの母親と金次第では彼女を遠ざけてもいい、と持ちかけて「最低の男」を演じてみせるが、これもミラリーがオペラに専念した方がいいとわかっていてのこと。ミラリーもオペラ歌手として成功を収めるけれど、コンサートのアンコールで主題歌「ニューオーリンズ」を歌うんですね。そこで本物のウディ・ハーマン楽団が出てきて、オーケストラの楽団員と一緒に演奏するラストシーンがなんともいえない。画質はいま一つで、エンドロールも出ないのが残念だけど、古い映画を見る一つの方法としては悪くないんじゃないかと思う。


【付記】
● 古い銀幕映画を見ようとレンタル店に行っても、意外と古い映画はそろっていなかったりするものです。衛星放送の契約をしたり、映画専門チャンネルを契約したりしたとしても、お目当ての古い映画が思う存分見られるかどうか、わからないわけです。そんな場合、多少怪しい感じがするけれど、この手のDVDもいいのではないかと思いました。

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楽しみです

こんばんは
里庵の常連さんはだいたい私より年上でこのような映画をリアルタイムで見ている人達です。25年生まれの私にとってちょっと話しについていけないところです。
ですからお店が落ち着いたらRIANN MAMAと「ゆっくり昔の名作を見たいね」とはなしていたところです。
時を同じくして只野さんがブログで紹介してくれると言うことで非常に助かります。
以外と見たいものを探すって面倒ナンデスヨネ。
RIAN MASTER

Re:RIAN MASTERさん

RIAN MASTERさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ううむ、そうですか、RIAN MASTERさんにしてそれならば、
乙山の記憶が曖昧なのも仕方ないことだと思います。

昔の映画好きの方がおっしゃる話は熱いものがあります。
それこそ『ニュー・シネマ・パラダイス』ではありませんが、
昔の映画を見る態度と、いまのそれでは何かが違うのでしょうね。

映画だけでなく、本でも、音楽でもそうだと思います。
昔のものは何かいいものがあるのです。
その不思議な魅力の一端に触れたくて、
銀幕映画をしっかり見てみよう、という気持ちになっています。

と言っても、そんな大風呂敷を広げたわけではありませんよ?

No title

うわぁ、これは観たい聴きたい!中古CD屋巡りして探します!!
自宅でゆっくり、も良いですが出来れば映画館(場末のミニシアター辺り)で
観たいなぁ・・・
モノクロの映画や写真って、フルカラーには無い美しさがあるような気がします。
モノクロ映画(といっても実際観たのはテレビでですが(^^;)では
『12人の怒れる男』(1957)が私の観た一番古いものかな?
新旧問わず映画を観る機会がごくわずかなので、【古い銀幕映画シリーズ】
今後も楽しみにしてます♪

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
これ(というかこの手の映画)は、中古品を探すより、
〈シネマ・クラシック〉と称したシリーズがありますので、
そちらを当たったほうが早いかと。

怪しげな雰囲気で投げ売りされているDVDで、
ちゃんとした店より小さな店の方にある確率が高いようです。
買おうと思っていくと、ないんですよ。

でね、忘れたころにあるのがその手のDVD。
怪しげだけど、まあ見たもん勝ちですよ。
一応ですけど、「見た」とか「知ってる」と言えますからね。

『12人の怒れる男』……ヘンリー・フォンダが素敵でしたね。
「古い銀幕映画を見る」シリーズはもう少し(?)続きそうですよ。
いや、続くかもしれません。

No title

こんにちは。
持ってます、これ。^^
無論見ました。ストーリーもよく出来てるし、何より、当時の音楽シーンが
そのままに見られるのが、私には興味深かったです。
見てみると、1947年の映画なんですね。
私の生まれた年です。^^

え~。新聞などでよく宣伝していますが、DVD100本で約1万円、という
シリーズがありまして、名作が結構揃っているんです。
誕生日に娘がプレゼントしてくれました。
『ニューオ-リンズ』もその中の一本。『グレン・ミラー物語』などもこのシリーズ。
『アラバマ物語』『わが谷は緑なりき』など私の忘れえぬ映画も。
『第三の男』は、残念ながら、入ってないんです。別のシリーズにあるのかな。
こういうものは、今はあるけれど、いずれ消えていくだろうと思うんです。
そしたら、もう二度と見ることはできない。そう思って、買ってもらっておいて
よかったです。おっしゃるように、エンドロールなどもないけれど、
家庭で一人みるには十分。

白黒は、人の肌がものすごく綺麗に見えるんですね。
白黒で見て、まあ!綺麗!と思って、カラーで見て
少し俳優さんにがっかり、なんてことがよくありました。
『第三の男』。音楽がなんと言っても!忘れ難い映画です。

次のご紹介映画がまた楽しみです。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
DVD100本で10000円、ということは、
一枚100円じゃないですか!
いやあ、一枚350円で喜んでいた乙山も真っ青です。

いいプレゼントですね。
中身が、ちゃあんとありますもの。
ゆっくり、好きな時に見れるのがいいですね。
レンタル店で借りると、けっこう見られなかったりすることもあって、
つい延長してしまうこともあるんです。

怪しいDVDですが、パブリックドメインとなった物件ですので、
違法ではありませんから安心してご覧になってくださいね。
乙山も古い銀幕映画のあまりの良さに、
ついつい何枚も買いこんでしまいましたよ。

パブリックドメインになったとはいえ、
すべてをそっくりそのまま、というのはやはり気が引けたのでしょうか、
エンドロールとかオープニングがカットされているものがありますね。
だけど本当、家で楽しむにはじゅうぶんです。
銀幕映画、もう少し続きます。
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只野乙山

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