阪急十三駅周辺を歩く(1) 中華料理〈楽友〉

Juso_2011_01.jpg
大阪人はいつごろから十三(じゅうそう)という固有名詞を記憶にとどめるのだろうか。それはおそらく天王寺(てんのうじ)を記憶にとどめるのとどちらが早かったか、というくらいではないかと思うが、大阪の児童は遠足で天王寺動物園に行くことがあるので、たぶん天王寺の後に十三となるのではないか。

どういうわけで十三が頭に入ったのか、それは思い出すことができないが、おそらく大人たちの会話の中から聞き及んだのではないだろうか。話の内容はほとんど理解できなかったにせよ、そこに流れている空気というか雰囲気のようなものから、十三というのはどうやら怖い町だというような印象を受けていたのではないかと思う。

Juso_2011_02.jpg住民の方々にはまことに申し訳ない勝手な思い込みだが、いずれにせよ一度も行ったことがないのに名前だけは知っている街として十三を挙げる人が少なくないのではないかと思う。大阪以外の地域で「大阪で知っている地名は?」などというアンケートを行ったとしたら、たぶん十三は五指、いや少なくとも十指には入るんじゃないだろうか(?)と思うのだ。

そんな印象深い十三だが、私(乙山)にとってそれは常に「通り道」だった。神戸に行くにせよ京都に行くにせよ、いつも十三は通過点であって、目的地であったことは一度もなかったのである。かりに「十三に用事が」などというと、男性の何割かは「十三? ああ、なるほどね」と訳知り顔で微笑むのではないかと思うが、これは他でもない、十三だからこそ起きる現象なのだ。

Juso_2011_03.jpgところが今回はその十三を歩いている。本当なら服部とか庄内あたりをぶらりと歩くつもりだったのだが、はっきり目的地を決めておらず、とりあえずやってきた阪急電車にうっかり乗りこんでしまったためにこのようなことになった。阪急宝塚線は普通と急行が走っているが、いずれも豊中までは各駅停車で、急行は豊中から十三まで止まらない。これに乗ってしまったがために、十三駅まで自動的に運ばれてしまった、ということなのです。

こうなったらもう、十三を歩いてみるか、と駅から出た。東出口から出て、十三駅の東側周辺を探索。駅から出てすぐのところに「十三東駅前商店街」と「十三駅前通り」という商店街があるが、これは歩くとすぐに終わってしまう小さな商店街。だがその奥というか向こうにはアーケードなしの商店街が続いていて、これがまた、昭和的とでも言えばいいようないい雰囲気である。

Juso_2011_06.jpg特徴は飲食店が多いこと、とくに飲み屋さんが非常によく目につく、ということだろうか。立ち飲み屋さんがあっちにも、こっちにも、ということでちょっと嬉しく(?)なってしまうのだが、いまは休憩時間中なので横目でちらっと睨むだけで通り過ぎる。だけどどういうわけだろう、中華料理店が見当たらないではないか。またそれか(それしかないんかい)と思う人もいるかもしれないが、知らない街を歩いたら身体が勝手に中華料理店を探しているのだから仕方がない。

Rakuyu_FrontView.jpg途中、鄙びた洋食屋さんがあったのでよっぽどそこに入ってみようかなと思ったけれど、半ば意地になって中華料理店を探して歩く。その日が曇天でよかった、とつくづく思う。炎天下で大阪市内の焼けたアスファルトを歩き続けるのは辛いものがある。汗をかきながら歩きまわった末、一軒の中華料理店〈楽友〉を見つけたのですかさず入る。どうしようか、などと迷う気持ちは一切なし。

今回はお昼のメニューの中から「チャーハンと水餃子」を選んだ。数日前、さるウェブログで見た手作り水餃子がおいしそうだったのも影響しているかもしれぬ。店主と奥さんは中国語で会話しているし、なんだか期待できそうだ。料理が来るまでの間、店内やメニューを見ているとチンタオビールもあるじゃないか。いやこれは、ますます気に入りましたよ。

Yuraku_SuiGyoza_Chahan.jpgさてチャーハンと水餃子が来ましたよ。チャーハンはわりとあっさりしているし、とろみのついたスープもおいしい。奥に見えるのはザーサイが入った壺で、自由に食べてくださいということだが、このザーサイもおいしかった。水餃子はつるっと食べられて、少し厚みのある皮と相まってけっこうお腹が膨れる。腹八分目を志向している者としては十分である。

とてもおいしかったので、支払いの際に「好吃、謝謝」などと言うと、奥さんが「すごい、すごい」と大喜びしていた。テレビの中国語会話入門編で覚えた片言が、こういう時に役立つなんて思ってもみなかったけれど、そんなに喜んでもらえるならたとえば「チンタオビールはありますか?」などというフレーズを覚えておいて、今度やってみようかな。いや本当、〈楽友〉は十三にまた来ることがあるなら必ず行ってみようと思うくらいの店でした。

Juso_2011_04.jpg Juso_2011_05.jpg〈楽友〉を出た後、一度十三の駅まで戻って、今度は駅の西側を少し歩いてみた。駅のすぐ近くにものすごい迫力の飲食店街があることは以前から知っていたが、改めて歩いてみると、やはりその雰囲気に圧倒されてしまった。昼過ぎ、たぶん二時ごろだったと思うけど、店にはけっこうな人たちが入っていて、一杯やっている。

すごい、の一言に、尽きる。こういう店にふらりと入って行って何食わぬ顔で一杯やれるようになるにはもう少し時間がかかりそうな気がした。いまでは立ち飲み屋に入って一杯やることに何の抵抗もないけれど、以前は立ち飲み屋に入るのは気が引けたものだ。こちらはただ飲みたいだけなのに、やたらと声をかけてきて根掘り葉掘り尋ねてくる無粋な酔っ払いに出くわす確率が高いというのも本当のこと。ふと車谷長吉を思い出しそうになる、そんな雰囲気に溢れた十三だった。


【付記】
● もう少し十三の街を行き、西側の大きな商店街の一角で肉屋さんがコロッケを揚げているのを見つけ、思わず一つだけ買ってその場でかじりました。子どもの頃、母親に連れられて市場に出かけ、必ず肉屋さんでコロッケを食べさせてもらったことを思い出します。記憶の中で美化されているのかもしれませんが、あのコロッケは本当においしかったのです。

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じゅうそう

じゅうそう・・・って。十三と書くんですね。
初めて知りました^^;
じゅうそうが大阪にあることは。
わりと子供の頃から知っていたのです。

と言うのも。彼の有名な藤田まことが。
「♪じゅうそうのね~ちゃん」と唄っておりましたのでw
今でもこのフレーズは。
藤田まことの美声と共に頭から離れておりません^^

チャーハン・水餃子の写真。
思わず。どこかで食べた水餃子・チャーハンの味が。
舌に甦ります(汗

今回はビールが写ってませんね。
チンタオビール。
注文しなかったんですか?まさかね?w^^)/

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんばんは!
ううむ、いろんな経路で「じゅうそう」は知られているんですね。
藤田まことの歌は、知りませんでした。
やはり、十三は大阪の地名の中では知られていると確信しました。

この〈楽友〉というお店はなかなかよかったですよ。
神戸の中華街にも負けないくらいの出来の良さ、
これはちょっと、感心しました。本物、という感じです。
よくある町の中華料理屋さんとも違います。
だって、水餃子なんて出しませんよ、ふつう。

チンタオビールはいいビールですね。
ご存知かと思いますが、昔ドイツの統治時代に生産が始まったビール。
国産のなにやらより、チンタオビールのほうがおいしいと、
心の底から思います。神戸の中華街でも、それがあれば
必ず頼むほど惚れこんでいます。
だけど、今回はまあ、仕事の合間ですので。

No title

そうですか、十三(変換されましたね!有名だと言うことですね。)
かえるままは、初めて聞きましたが、道頓堀、難波などが有名だと思ってました。
広い大阪を実際に自分の足で散策してみたいです。
その日まで、只野乙山さんのブログで、自分が歩いてるかのように
妄想してます。(笑)
(本当に只野乙山さんのブログは写真を含めて表現がお上手なので、そんな気になるんですよ。)
青島ビールかえるままも、何度か飲んだことあります。さっぱりして美味しいですね。
コロッケって、昔は「作る」ものじゃなく「買う」ものでしたよね。
あの味に会えるかな。懐かしいです・・・

水餃子の思い出

 若いころ船の食堂で水餃子を40個(!)たいらげた上に、チャーハン一皿をペロリ
と片づけた男がやってまいりましたよ。

 船長はじめ乗組員が総動員でこしらえた餃子は、かたちこそ不揃いでしたが、つ
るりつるりとノドを通るのでした。あれは実にうまいものですよねえ。お腹いっぱいに
なったところに、食べろ食べろといって出されたチャーハンがまたうまかった!

 腹八分目などというつまらぬこと(?)はおよしになってはいかがでしょうか? 食べ
られる元気のあるうちは、我慢されぬほうが体にいいんじゃないかと思いますよ。

 ぼくは……もうダメ。写真のセットで腹十二分目くらいですね。あの若さはどこへ
行ってしまったのでしょうか。

 十三の楽友ですか。う~ん、ちょっと遠いですね。

No title

実は「十三」「柴島」の正しい読み方を知ったのは大学生になってから
でした・・・(通学ルートだったので)
まぁこんなうっかり者の大阪府民もいるという事で(笑)
そういえば十数年前、とあるライブハウスに行くため初めて十三で
下車した時何となく緊張して周りをじっくり見られませんでした(^^;)
アラフォーの今なら自然体でずかずか歩き回れそうな気がするのですが(笑)
しかしさり気なくアタリのお店を見つけられる嗅覚は流石!
やはりプロの作った水餃子は美味しそうですね~私も頑張らねば♪

Re:かえるまま21さん

かえるままさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうそう、一発変換でしょう?
十三は、いかにも大阪らしい(?)ところがあるのだと思います。

改めて思い返せば、道頓堀、難波、心斎橋、新世界などのほうが
有名で、十三はひょっとしたら十指に入らないかも(?)しれませんね。
大阪地名ランキング、ウェブログ上で実行してみたくなりましたが、
もうどこかにあるんでしょうね。

写真は難しいですね。
まだ乙山の写真は、「記録」のレベルです。
なんというか、空気を写し切れていないのです。
これは自分で、一応、よくわかっているつもりなんです。

コロッケはおいしかった。
とくに母親に連れられて市場の肉屋さんで食べたのが。
なんであんなにおいしかったんでしょう。
小さな小さな幸せですが、乙山にはそれが、忘れられません。

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
水餃子はおいしい、これは本当ですね。
いわゆる焼き餃子もおいしいのですが、中国の留学生の方が
作ってくれたのも水餃子でした。
皮がね、厚ぼったくて、それがまたいいんですよ。

腹八分目作戦は、やってよかったと思うんです。
実際、なにを食べても、飲んでもいい時期は遠く過ぎ去って、
身体のことを考えないといけないようになってしまったのです。
本当、そんなに我慢して難儀しているわけではないんですよ。
あと5kg痩せたくらいで、ちょうどいいくらいなんです。


Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
十三はね、たぶん女性の方より男性の人に浸透している言葉なんです。
どうしてそうなのかは、ここで語るのをお許しください。

まあいいじゃないですか。乙山だって大阪生まれの人間ですが、
大学時代、金沢出身の人に「大阪案内」をしていただいて、
只野君って、本当に大阪生まれなの? と言われてしまった男です。

本当にとほほ、な経験なんですけど、
大阪市内に住んでいればわざわざ大阪の名所なんていかないものでして、
いつでも行けるわい、みたいな感じでわざと行かなかったりするもんですよ。

家で作った餃子はなぜかおいしいように思います。
ちょっとうまく焦げ目がついたら、それで天下を取ったような気になるもので。
〈楽友〉の水餃子はどちらかと言うと、皮が薄めだった。
もう少し厚ぼったいほうが、いいのかもしれませんよ。


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