グレンフィディック12年 シングルモルト(スペイサイド)

Glenfiddich.jpg
西部劇やギャング映画でよく見かける、ウィスキーの瓶で喧嘩相手の頭部を殴打し、勢いよく瓶が砕け散る場面がある。あれは何かの番組で種明かしをしていたのを見たけれど、飴か何かの材料で本物そっくりに作った瓶だそうだ。日本の酒場でそのような場面に遭遇することはおそらくないと思われるが、ウィスキーや酒瓶はけっこう頑丈にできていて、そうそう簡単に割れないのではないだろうか。

つい先達て、とっておきのスーパーニッカがついになくなって、何か代わりのウィスキーを買わないといけないことになった。「日本のウィスキーを飲む」という独自企画を実行している以上、国産ウィスキーを買わないといけないのだが、それと気付いたのは電車の通勤帰り。よく利用する近所の某量販店は歩いて行くとけっこう遠いのだ。時間もそんなにないときている。仕方がない、こういうときはですね、駅から近いスーパーとかコープこうべ(生協)の店でそれらしいウィスキーを手に入れるしかないのである。

そうそう、ずっと後に書こうと思って取って置いた、ニッカの〈シングルモルト余市〉があるではないか。早速買い求め、いそいそと家路に就いた。今日はこいつを飲んでみるか、と珍しく食後にウィスキーを飲もうとして、ボトルが入っているビニールの買い物袋に手を伸ばすと、どうしたことかうっかりウィスキーのボトルを倒してしまったのである。

妙な音がしたなあ、と思っていると床に液体がみるみるうちに広がっていくではないか。一瞬、何が起こったのか理解できず、目の前で起きている不思議な現象をただ茫然と眺めていた。アルコールの強烈な匂いが鼻腔をついたとき、私(乙山)はいま自分の目の前で何が起こっているのかようやく理解した。

あっ、あっ、とか言いながらスーパーのビニールの買い物袋を覗きこみ、首が折れて横に倒れたウィスキーの瓶を立ててみたものの、ほとんど中身は失われていた。ビニールの買い物袋を持ち上げてみると液体が残っていたので、それを瓶に戻すと、1/4くらいの量になった。ああ、何というもったいないことをしたのだろう。それにしても、ぱたんと倒したくらいで割れるかな、普通?

いや本当、余計なことは一切していませんよ。本当にぱたんと倒れてしまっただけなのだ。情けないことになった〈シングルモルト余市〉の残りをスーパーニッカのボトルに移し替え、そこから飲むことにしたんだけど、ボトルを換えてしまうとそれらしい味わいとか雰囲気が出ないじゃないか。ちょっとげんなりしてそれを引っ越しの段ボールに入れた。

さて引っ越し当日。池田のスーパーマーケットの酒売り場を早速チェックする。おっ、銀河高原ビール、ハイネケン、ハートランドビールがあるじゃないか。スコッチやバーボンもわりと品揃えがしっかりしているほうだ。これはもう小さな酒店より充実しているのではないだろうか。まずこういうところをチェックしてしまうのがいかにも只野乙山的現象と言える。

棚に〈グレンフィディック〉の小さなボトルがあるのを見つけたとき、どういうわけか「今日はどうしてもこれを飲みたい」と思った。「日本のウィスキーを飲む」のことは今はまあいいじゃないか。これから頑張っていこうという己を激励する意味も含めて、ふだんあまり飲まないちょっといいウィスキーを飲んでおきたい気分になったのである。

サントリーのウェブページによると〈グレンフィディック〉は世界で初めてシングルモルトとしてグレンフィディック蒸留所から発売されたものだという。創業者はウイリアム・グラントという人で、その名はスコッチの〈グランツ〉に残っている。グレンフィディックと同じ、三角のボトルが特徴だ。

住んでいるところからいちばん近くにあるコンビニエンス店で氷と水を買う。冷蔵庫で造った氷と浄水器を通した水道水で十分のような気がしないでもないが、白い部分が全くない透明な氷で飲むウィスキーはまた格別だ。さてグレンフィディックを飲んでみた。ずいぶん昔に飲んだ記憶しかないのだが、やはりどこか高貴な味わいを持っている。

果実を思わせる香りと、ピート香を抑えた軽やかで滑らかな味わい。ううむ、やはりシングルモルトのスコッチは旨いなあ。とても飲みやすく、つい杯を重ねてしまうけど、あまり調子に乗り過ぎてはいけない。このあたりの程度とか限度というものをわきまえることができるのが大人というものだろう。そういえばチャンドラーもマーロウにこんな台詞を言わせていたな。

「飲むのなら、自尊心を忘れないように飲みたまえ」(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』清水俊二訳)

とかなんとか思いながら飲んでるんですが、ちょっと危ないかも……


【付記】
● 生まれて初めて、ウィスキーのボトルを割って中身を失うという経験をしました。だけどあんなに割れやすいものとは知らなかったわけで、これは〈シングルモルト余市〉だけのことなのか、他のウィスキー瓶もそうなのか、本当のことはわかりません。


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No title

ううむ、余市だけ割れやすいとは考えにくいですよね。
身代わりになったのかも?

グレンフィディック、どこかの試飲会で飲んでるはずですが記憶に無い。
やはり自分で買わないとダメですねぇ。
世界で一番売れてるシングルモルト、いつか味わってみたいです。

No title

自尊心・・・耳がイタいです(笑)
まぁ世界的には日本のように泥酔状態が許容される国の方が
少数派のようですしね(^^;)
それにしても余市、残念でしたね・・・
私も日本酒をお燗しようとしてうっかり電子レンジの中に
大半こぼしてしまったことがあるのですが、何が起こったか
判らず(というか目の前の光景が信じられず)
しばらく呆然としてしまいました(^^;)

Re:RSさん

RSさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
やはり「身代わり」なんでしょうかね。
こういうのを象徴的な出来事、などというのかもしれませんね。
何を象徴しているかなんて、その時にはわかりませんし、
ずっと後になって、あれはそうだったのかも、などと思うのでしょう。

ずっと昔に飲んだグレンフィディック。
やっぱり、旨かったですね。
少しずつ、楽しむようにしています。

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
そうそう!
何が起こったのか理解できず、しばらく呆然と……
そういうことは起こらないと、決めてかかっているからかもしれません。

どこで情報を得たのか定かでありませんが、
日本人は欧米人に比べてアルコールの消化が遅く、
その過程で起きる頭痛がひどいらしいです。

何をやっとるんじゃ、と怒鳴る上司も身に覚えのあることなんでしょう。
なので比較的緩やかになっているのかも。
だけどまあ、ただのみっともない酔っ払いになるのは
あまりいいことではありませんよね。
自戒をこめて、チャンドラーの言葉を思い出したのです。

マルスを買いました!

こんばんは、何時も趣味時間の参考に読ませてもらってます。
以前、飲まれていたマルスの3&7をやっと購入しました。北海道ではなかなか販売しているお店が無く、めったに行かない札幌のチェーン店のある店舗に偶然にもその店だけに置いてありましたので、有無を言わず購入しました。このブログを読んでから、忘れる事が出来ず、暫く探してました。(ネット通販では買いたくなかったのです。瓶の手触りとか確認するのって、趣味人としては当然の手続きですよね)

おっしゃるとおり、強い木の香りは少無く感じるものの、バランスの良い香り豊かなできばえで美味しい。僕はストレートでしか飲みませんので、これはハマりますね。

飲みやすくて。

最後の一瓶でしたので、次は何時入荷するのか分かりませんが、また飲んでみようと思いました。

参考になる、お話ありがとうございました。

ちなみにサッポロウィスキーと言うご当地ウィスキーを試してみてください。お勧めです!

Re:札幌の人さん

札幌の人さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
マルスウィスキーは関西でもあまり見かけなかったもので、
ほんのつい最近入ってきたのを見て「おっ」と思って買ったのです。

そうそう! そうなんですよ。
じつは乙山もネット通販なるものをよく利用するくちですが、
どうしても実物を見てからでないと決められないものもあるんです。
手に取って、眺めすがめつして、これにする、と決めるわけです。

おっしゃる通り、〈マルス3&7〉はストレートが合いますね。
なんだかバーボン/テネシーのような雰囲気なので。
飲みやすい、しかも偽物臭くない、よくできたウィスキーですね。

〈3&7〉はボトルデザインもいい。
最近のものはデザインを変えているようですが、
シェイプしたような四角のデザインはとても素敵でした。
サッポロウィスキー、今度探してみます。
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只野乙山

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