リック・リオーダン 『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃』

リック・リオーダン 『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃』 金原瑞人訳 ほるぷ出版 (2006)

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J.K.ローリング『ハリー・ポッター』シリーズの成功をきっかけに、いろんなファンタジー小説が再び注目を浴びたり新しく生まれたりしたのは記憶に新しいところだろう。トールキン『指輪物語』やC.S.ルイス『ナルニア国物語 ライオンと魔女』の映画化はなかなか良かった。

映画化こそされていないものの、小学生くらいの読者にはひょっとして『ハリー・ポッター』以上に人気があるかもしれない『ダレン・シャン』シリーズ、私(乙山)が密かに愛するジョナサン・ストラウド『バーティミアス』の3部作、そして『アルテミス・ファウル』シリーズなどもある。

本書『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃』もそんなファンタジー小説群のひとつ。アメリカの寄宿学校に通う12歳の少年パーシー・ジャクソンはいわゆる「問題児」で何かと問題を起こしてばかり、転校をくり返しながら生活している。父親はパーシーが幼いころから不在で、母サリーは再婚してパーシーを育てている。

パーシーは確かに「問題児」ではあるが、不思議な出来事をよく経験していた。美術館見学のときもパーシーを目の敵にしていた数学のドッズ先生がどういうわけか姿を変えてパーシーに襲いかかろうとした。そのときはブラナー先生が渡してくれたボールペンが剣に変わリ、怪物になったドッズ先生を切り裂くと、そのまま黄色い粉になって消えてしまった。しかも、仲間のグローバーにドッズ先生のことを話そうとするが、そんな先生はいないよ、と言われてしまう。

パーシーはその後、成績ではオールFをとり、英語の先生に暴言を吐いたかどでとうとう「来年度から受け入れることはできない」という通知が家に届いた。またしても退学処分になったパーシーだが、母のサリーはパーシーの実父がすすめていた「訓練所」にパーシーを預ける決意をする。「訓練所」を訪れたパーシーはそこで、自分が普通の子どもではなく、ギリシャ神話に出てくるオリンポスの神々と人間との間に生まれた子どもであることを知らされる。

タイトルから想像できると思うが、本書はギリシャ神話の神々がじつはいまだに健在で、神々はギリシャのオリンポス山にいるのではなく、アメリカにいてふつうの人間に見えるような格好で暮らしている、という設定。かなり無理があるように思えるのだが、読んでいてそんなに違和感がなく、むしろ面白く読めた。たとえば軍神アレスなどは次のように描写されている。ちょっと引いておきましょう。

赤いノースリーブのTシャツ、ブラックジーンズ、黒い革コート。腿のところにはハンティングナイフがとめてある。赤いバンド式サングラスをかけたこの男は、おれが今までに見たことがないくらい残酷で野蛮そう――整った顔だけど、もろ悪人顔だ――脂ぎった黒髪は短い角刈りで、頬はけんかの傷だらけだ。(本書より)

初めは半信半疑で、ギリシャの神々の誰の息子なのか知らなかったパーシーだが、やがて受け入れ始め、自分だがれの息子なのかを知り、サチュロスのグローバー、アテナの娘アナベスとともに「冒険の旅」へ出発する。目的は盗まれたゼウスの「雷撃」を取り戻すこと。

このあたりは『ハリー・ポッター』と似た設定かな。さしずめアナベスはハーマイオニー・グレンジャーで、グローバーがロン・ウィーズリーといったところだろうか。「予言」があってその通り(?)に事が運んでいくあたりも似ているといえば似ているだろうか。しかしそんなことを言い出したらきりがないのが「物語」というもの。映画化が決定していることからしても、本書の設定は意外だけど無理がなく、受け入れられやすい要素がいっぱいあるということなんだと思う。


【付記】
● 乙山はまだ本書の映画版を見ておりません。2010年に『ハリー・ポッター』シリーズのクリス・コロンバス監督でリリースされたようですが、やはり去年は『アバター』に注目が集まりすぎて、『パーシー・ジャクソン』関係の話題は少なかったように思います。

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tag : リック・リオーダン パーシー・ジャクソン

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No title

ファンタジー小説と言うと軽く見られがちでしたが、大人の鑑賞にも
十分堪えうる作品も多いですよね~
私はミヒャエル・エンデの『モモ』が大好きでした。
一度『星の王子様』や『ハリー・ポッター』等々きちんと読んでみたいと
思いつつ中々機会が無く・・・
と言うより、トシと共に感受性が磨耗している今の自分が読んで感動できるのか?
という不安が先に立ってしまうというのもありますが(我ながらヘタレ(笑)
まぁ先ずは本を手に取らないことには何も始まらないですよね(^^;)

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
いや本当に、ファンタジー小説といっても、
ヤングアダルトなどと称して10代の終わりから20代くらいの人を
ターゲットにしている作品もあります。

子ども向けかなと思って読んでいると、「えっ」という
表現に出くわすことがあります。
そういう傾向は乙山が子どものころにはなかったように思います。
それだけ今の子どもは現実がハードなのかもしれません。

乙山も自分だけだったらまず手に取らないような本。
家族が図書館で借りてきてくれるのです。
そのおかげで、読書の幅が広がっているというわけでして。
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