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阪急石橋駅周辺を歩く (かつれつ亭)

Hankyu_Ishibashi_Stn.jpg
所用で北摂地域を歩くことが多い私(乙山)だが、もっぱら阪急電車宝塚線を利用している。大阪市内に住んでいた頃は北摂地域などほとんど知らなかった(なにしろ「清荒神」を「きよあらがみ」と読んでいた)わけだが、宝塚/西宮に住むようになってから北摂地域がずいぶん身近に感じられるようになった。

阪急宝塚線にはいろんな駅があるけれど、歩いて楽しいお気に入りの駅(というかその周辺の街)を挙げよと言われたら「石橋」と答えるんじゃないかと思う。電車そのものや駅が云々というような話はできないが、石橋駅はプラットフォームが大きく湾曲しているのが特徴。阪急電車に乗って通過するだけではあまりわからないかもしれないが、プラットフォームに立つと大きく曲がって停車している列車を見ることができる。

Hankyu_IshibashiStn_Nishiguchi2.jpgプラットフォームが湾曲しているのは阪急川西能勢口駅や豊中駅も同じだが、石橋駅がいちばんカーブの曲がりが大きいんじゃないだろうか。石橋駅には東口と西口があり、東口から出ると小さなロータリーがあって平日ならば若者たちがたくさん歩いている。彼らの背中を見ながらしばらく歩くと大学に着く。その大学の学食近くの木立に猫がたくさんいるのを目撃したことがあるが、猫たちは学生などに可愛がってもらっているんだろうなと思われる。私はそこの学生だったわけではありませんので念の為。

面白いのは西口のほうで、西口から出た瞬間、そこにアーケードの商店街がある。こういうのもたぶん、石橋駅だけじゃないかと思う。商店街の規模は小さくて、端から端まで数分で歩くことができるけれど、酒の量販店やビデオやCDのレンタル店があり、豊富な惣菜屋さんが軒を連ねていて見ているだけで楽しい。ここは活気のある商店街だ。

IshibashiStn_Nishiguchi.jpg西口から出て正面をそのまま歩けば、アーケードの商店街とT字型につながっている開放型の商店街もある。こういう商店街があるのが大阪らしいところ。川西市(兵庫県)と池田市(大阪府)は猪名川を境に隣り合わせになっているのだが、川西には商店街と銭湯がなく、それが池田に入ったとたん、ちゃんと(?)銭湯と商店街があるんですね。

石橋駅周辺は計画的に整備された街ではなくて、自然発生的に発展/増殖していったものがそのまま残っているように思う。これはJR/近鉄の鶴橋駅周辺の街の様子にもどこか通じるところがあるのではないだろうか。また阪急十三駅もそれに近い様相を呈しているように思うが、それらの街のどこか雑然としたあるいは猥雑といってもいいかもしれない雰囲気に、強く心惹かれるのはどういうわけなのだろう。

KaturetuTei_OuterView.jpgそういう風情のある石橋駅周辺を歩いていると、揚げ油の匂いが風に乗って漂ってきた。おそらくラードと思われるその匂いをかぐと、腹がぐうっと反応した。そろそろ昼ご飯にしてもいい時刻だ。匂いに誘われてふらふら歩いて行くと、「かつれつ亭」と称する店があった。見ると「揚げたて かつ専門 2階でお食事」などと書いてあるではないか。じつは中華料理店を考えていたのだが、その日はどういうわけか揚げ物を食べたい気分であった。

ところで萩原朔太郎に「閑雅な食慾」という詩がある。遠く市街を離れたところにある、だれも訪れてくる人のない、追憶の夢の中の珈琲店(かふえ)に入った「私」は食事をするのだが、それはこんなふうである。

私はゆつたりとふほふくを取つて
おむれつ ふらいの類を食べた。
空には白い雲が浮んで
たいさう閑雅な食慾である。(『萩原朔太郎詩集』岩波文庫より)

KaturetuTei_InnerView.jpgそうなのだ。わたしは「ふらい」を食べたいのであった。「ふらい」なら別に何でもいいのであるが、吉行淳之介が何かのエッセイで、朔太郎が食べる「ふらい」は魚でなくてはならぬ、というようなことを書いていたように思う。なぜ魚でないといけないのか、あまり根拠はないのだが、そのくだりを読んだときはなるほどそうだ、と思ったことを覚えている。だから注文するものは決まっている。

来ましたよ、魚フライ定食。ご飯、漬物、味噌汁が付いて800円。これで安いのか、高いのかはちょっと不明。魚はいつの間にか高級食材になってしまった、ということなんだろうと思う。自家製のタルタルソースかどうかも不明。たぶん違うと思うけど、もうちょっと乗せてくれてもよかったのにね。この点はちょっと残念であることを正直に書いておきたい。

DeepFriedFish.jpg魚フライはタルタルソースをたっぷりつけて食べるのがおいしい。案の定、途中でタルタルソースはなくなり、後は塩をかけて食べました。揚げ物を塩とレモンだけで食べることに慣れているので、そんなに文句もなく食べられた。そういえば、箸だけでもまあ食べることはできるけれど、ナイフとフォークがあったほうが食べやすい。頼んだら出してくれると思うが、その時は気付かなかった。迂闊。君が手に銀のふほふくは重からむ、などという一節を思い出しながら「魚のふらい」を食べた。


【付記】
今回は「かつれつ亭」だけのレポートにします。石橋には中華料理店もたくさんあって、追々紹介していく予定です。それにしても、阪急川西能勢口編はまとめすぎたなあ、と思っています。

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No title

今日の記事は、楽しく、共感しながら拝読いたしました。
吉行淳之介にも一時、夢中になって読んでた事もありました。
フライをたのんだら、「タルタルソースたっぷりね。」ってかえるままも言います。
なので、うんうんって読んでましたよ。
大阪旅行に行った時はこんな、下町情緒溢れる景色は見なかったと思います。
一度、ゆったり歩いてみたいですね。

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Re:かえるまま21さん

かえるままさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
そうそう、タルタルソース(できれば自家製)がたっぷりないと
なんだかなあ、っていう気になりますよ。
大阪と言えばフライにソースですが、何でもかんでもソースというわけではなく、
気の効いた串カツ屋ならば「レモンに塩」とか「抹茶塩」も出してくれます。

こういう雰囲気は大阪の至る所にまだ残っています。
再開発とやらが進んで、すっきり綺麗な町になっていくのもいいですが、
昔懐かしい雰囲気がなくなっていくのは少し残念で、
そのあたりは複雑な気分です。

追伸 例の件はあまり気にしないでくださいね。だけどどうしてだろう。

No title

おはようございます。
下町の風景!いいですね~。なにか、生きてる感じがします。
私は渋谷のゴールデン街で3~4歳まで育ったせいか、いまでも横丁が大好きです。
そのせいか、映画も今村昌平の作品が好きです。
関西の下町、これからも紹介してください。
RIAN MASTER

Re:rian masterさん

rian masterさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
閑静な住宅街は歩いてみるとつまらないところが多いのです。
商店街や下町は歩くと本当に楽しい。
大阪にはそういうところがたくさんあります。

ゴールデン街!
名前だけは聞いたことがありますが、行ったこともなければ
そこで飲んだこともありません。
東京に行く機会がもしあったら、行ってみたいなあ。

こんにちは。

『朔太郎が食べる「ふらい」は魚でなくてはならぬ。』

さすが吉行淳之介。言われてみれば、ああ、その通りだよなあ!、と
納得してしまいますね。
『閑雅な食欲』という、朔太郎の詩。いいなあ。
閑雅な食欲…。
ときたまでいいから、そういう風に思える食事がしたいですね。
日常の家庭での食事がそうならば、理想的だけれど、なかなか・・・。

そういえば、昨秋、丸の内の丸善に行ったとき、松岡正剛のプロデュースした
『松丸本舗』で本を買ったのち、丸善で始まったという元祖『早矢仕ライス』を
食べました。それなどはちょっと『閑雅な』食事に近かったかな。
豊かな時間を持つことが出来ました。

でも、一切れのサンドイッチでも、閑雅な食事になリうる。
そのひとのこころのありようで、豊かな食の時間が持てるのですね。
乙山さんのお酒や食べ物の記事には、いつもそんな気配を感じてしまいます。



Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
魚のフライというけれど、何をフライにしたんだろうと想像します。
たぶん白身の魚だと思うのですが。
鱈あたりじゃないかな、とか勝手に思っています。

白身魚といえば、英国でもフィッシュ&チップスなどといって
魚とじゃがいものフライを屋台で売っているみたいです。
魚のフライときけば、吉行淳之介と朔太郎、
そしてフィッシュ&チップスを思い浮かべるのです。

立原道造なんかもお昼ごはんにサンドイッチとビール、でしょう。
たまに真似をして思いを馳せてみるのです。
ゴールデンバットを吸うときは中原中也を思い出したりね。
昔の文章に出てくる食べ物や酒は、なぜかおいしそうなんです。

丸善の「元祖早矢仕ライス」はおいしそうですね!
大阪でなら、阪急百貨店のライスカレーなんかを食べてみたい。
正月三日に、ホテルでカレーライスを食べました。
開いている店が少ないものでしてね、仕方なしに、という感じでしたが、
まさに「閑雅な食慾」という雰囲気でした。
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只野乙山

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