年越しにラーメンを

CupnodleEco_Magcup.jpg
もう数十年前の話で恐縮だが、暮れに叔父(母の弟)のところに遊びに行くと、なぜか鶏の丸焼きを用意してくれるのであった。アメリカではクリスマスに七面鳥を食することがあるそうだが、それと何か関係があるのかも知れぬ。今でも、クリスマスの頃になると、なぜかスーパーマーケットに鶏の丸焼きが並ぶのを目にすることがある。

叔父と私、それに弟と姉の四人で一羽の鶏に挑むのであるが、実際のところ、鶏のももの部分を食べたらじゅうぶんであった。私はももと手羽先がやわらかく脂がのっていて好きだった。たいがいお腹がふくれても、まだ胸肉その他の部分が残っている。四人で食べても鶏一羽は多かったように記憶している。

何とか鶏の丸焼きを食べてしまうと、叔父は残った骨などを集め、それを水と一緒に寸胴鍋に入れて石油ストーブの上に乗せた。石油ストーブの上に何かを乗せる部分がちゃんと付いており、そこにやかんを乗せておけば湯を沸かしてくれるし、スチームの役割りも果たしてくれる。カレーやシチューを乗せれば煮込み料理が出来上がるという寸法だ。

肉がほとんどなくなった、それこそ「鶏がら」でいったい何ができるんだろう、と不思議に思ったが、数時間すると骨の髄とか軟骨などから何かが出てくるのであろうか、スープは薄黄色に色づいていた。それにほんのりといい匂いもする。

CupnodleRfillMag.jpg私たちは時の経つのも忘れてトランプに打ち昂じ、鶏がらスープはストーブの上で煮込み続けられた。やがて小腹が空いてくると、叔父は、もうそろそろええかな、などと言いながら寸胴鍋を覗き込んだ。そして、お前らも腹がへったやろ、年越しそばでも食おか、と言ってインスタントラーメンの袋を持ってきた。

それは日清食品の「チキンラーメン」であった。当時チキンラーメンの他にもインスタントラーメンはたくさんあったが、叔父は、これが一番うまいんや、と断言する。叔父は石原裕次郎の大ファンで、裕次郎が何かの映画の中で、さっとチキンラーメンを取り出し、湯を注いでラーメンを拵え、無造作に食べる姿にいたく感激したらしいのだ。

それ以来、だれが何と言おうと、叔父にとってインスタントラーメンといえばチキンラーメンが一番うまいことになっているのである。私たちが、他にもおいしいラーメンがあるんやで、と勧めても、叔父は頑としてそれを拒絶する。試しもしないで、ひたすら信じ込んでいるわけであるが、このような思い込みを笑うわけにはいかない。身に覚えがないわけではないからである。

湯を注ぐ前にラーメンの丼をしっかり温めておく。これこそ、湯を注ぐだけのインスタントラーメンを作る際の最重要事項である。そこにチキンラーメンを入れ、自家製の鶏がらスープを沸騰させて、注ぎ込むのである。好みで卵を入れる。三分間じっと待ち、出来上がったら刻んだねぎを散らして、完成となった。

CupnodleZippo.jpgもとより、キチンラーメンはチキンスープの味が付いているからチキンラーメンなので、そこに鶏がらスープを加えるわけだから、濃厚な味のチキンラーメンが出来上がった。しかし、何とも味わい深い味である。私はこのとき食べたチキンラーメン以上においしい(というかインパクトのある?)チキンラーメンを食べたことはない。

いまでは、年越しにラーメンを食べるなど想像もできないし、おそらく今後も食べることはまずないだろう。そう思うと、叔父が作ってくれたあの年越しラーメンが、ひときわおいしく、なつかしいものとして思い起こされる。もう一度、あのラーメンを再現したいという願望が沸き起こってくるのであるが、少ない人数で鶏の丸焼きを食べ切ることなどとうてい不可能である。

それに、深夜にあの濃厚なスープのラーメンを食べるなどというのは、それこそ暴挙ということになるだろう。日付が変わった深夜ではなくあくまで夕食時に、あっさりした少なめの年越し蕎麦を食べながら、今や幻となってしまった年越しラーメンに思いを馳せるだけにしておくしかなさそうである。


【付記】
● 一連の写真は本文とほとんど関係がありません。写真のマグカップは非常に巨大ですが、これは日清食品株式会社がエコロジーに取り組んでいる姿勢を示したもので、ここにリフィルと称する小さなカップヌードルの中身と水を入れ、電子レンジで加熱して調理するのだそうです。

さっそくシーフード味で試してみました。四本の指が入ってしっかりつかめるマグカップは使いやすく、なかなかいい感じ。これほど巨大なマグカップは他になく、じつはマグカップほしさについ購入してしまったのです。
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No title

郷里にいた頃、年越しといえばラーメンでした。
それが大和に出てくるようになっておそばに・・・
そして今は、年が変わるまで飲んでいることが多いので、蕎麦は晩ご飯のあとすぐに食べてしまうことが多くなりました。

>叔父にとってインスタントラーメンといえばチキンラーメンが一番うまいことになっているのである
・・・確かに、チキンラーメンを食べていてこれにまさるものがあるんだろうか・・・なんて思ってしまう刹那がありますよね。ただ、私が小さい頃、私の住んでいた田舎町ではチキンラーメンが売っておらず、かわりによく似た「ニッスイラーメン」なるものをよく食べていました。これもお湯を注げばOKなやつで、かの「日水」が発売していたものと記憶しているのですが・・・

まあ、多分「チキンラーメン」のパクリだったのでしょうが、あのころ東北の寒村に住んでいた者にとっては懐かしい味です・・・といってもその味はほとんど覚えておらず、ひょっとしたら「日水」だけに魚系の味付けだったのでしょうか・・・
朧気な記憶では、チキンラーメンをもうすこしあっさりさせたような・・・そんな感じなんですが・・・

No title

楽しいお話でした。
ありがとうございます。
鶏の丸焼きは・・・正直言うと、調理した本人は食欲が無くなります・・・(▼▼)頭だけがない、リアルな体の内蔵にハーブや野菜を突っ込み、塩を体に塗りまくる様は、動物を食べると言う本質に近づきます・・・

しかし、分かってはいても、チキンスープの美味なる事と言ったら!(o^^o)ラーメンのメッカ札幌に住んでますので、年越しラーメン、大賛成です!
食べ物の思いでと言うのはなかなか忘れられないですね。

・・・と思って送信しようとしたら、なんと認証キーワードが8888!
写真を撮って今日の記事に載せますのでご覧下さい。(o^^o)

No title

こんにちは^^
なんだかクリスマスにピッタリな感じのお話だと思いながら、
しみじみ読ませていただきました。

Re:gatayanさん

gatayanさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
日清食品チキンラーメンのファンは思いのほか多いようです。
「やっぱりこれかな」なんていいながら、
ストックしている即席めんはチキンラーメンという人も知っています。

「ニッスイラーメン」、知りませんでした。
だけどあの日水が作るのですから、おいしいラーメンだろうと想像します。
乙山は日水のオイルサーディンが大好きで、
それより旨いオイルサーディンを知りません。

年越し蕎麦、いまは夕御飯の時一緒に少しだけ食べてます。
昔の人も、おそらく夕餉のときにそばを食べたんじゃないか、
そんなふうに想像しています。

大掃除やら何やらで忙しいから蕎麦にする、という発想で、
日が沈んで暗くなったら早い時間に寝たんじゃないかと。

Re:かえるまま21さん

かえるままさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
今日は本当に寒いですねえ。
こちら(関西)でもそう感じるのですから、
そちらはもっと、寒いんじゃないかと。

そんなときはやはり、あったかいものを食べたくなります。
札幌にラーメンの店がたくさんあるのも、理由のあることなんでしょう。
あったかくて、お腹がふくれて、食べた人を幸せにするラーメン。

雪祭りとか氷のキャンドルなど、野外のイベントも目白押し。
寒くなった帰りに、ちょっと立ち寄りたくなるんじゃないでしょうか。
認証用キーワード、今夜は「7445」でした。

Re:マダム猫柳さん

マダム猫柳さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
乙山自身はあまりクリスマスだからといってはしゃいだりしませんが、
街がもう、クリスマス一色になってしまうから仕方ありません。

住宅街の家々も、自分の家に電飾を施して、
それがまた、何とも綺麗なんですね。
歩きながら、なぜか郷愁に近いものを感じます。

No title

「無人島に一つだけ持って行くインスタントラーメンを選べ」
と言われたら、カップヌードルかチキンラーメンかで真剣に
悩みそうです(笑)

鶏がらチキンラーメン、めっちゃ美味しそうです!
鶏がらをトコトン煮込んだスープには敵わないでしょうが
手羽元を圧力鍋で煮たスープも結構イケますので
一度試してみようかなぁ・・・♪

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
「無人島に持っていきたいラーメン」、乙山ならそこに
「マルタイラーメン」もランクインするかもしれません。
あの細いストレート麺とあっさりスープが好きなんです。

叔父の作ってくれた「鶏ガラ」は本当の意味で「鶏ガラ」でした。
いまから思うとうまみ成分なんかが抜け切ったものなんですが、
昔はあれをどういうわけかおいしく思ったんですね。
もう一度やろうとしても鶏の丸焼きを食べきれません。

zumiさんのおっしゃるように、手羽先を煮込んだスープが
ちょうどいいのかもしれませんね。

No title

乙山さん。こんばんは。

しみじみとした、おじさまとの思い出ですね。
おじさまはご存命でおいででしょうか。

子供の頃の、このような思い出は、なにか忘れがたいものとして
こころに残り続けますね。
その時のラーメンの味も、若かりし頃のおじさまの姿も
少年の日の乙山さんも…二度と同じ味、同じときは戻ってこないのですが。

父母というものは勿論ありがたいものですが、子供にとって叔父叔母、
大きな従兄弟(従姉妹)などという存在は、なにか格別な位置を
昔は占めていたような気がします。
父母とは違う何かを与えてくれるひと、違う味わいを教えてくれるひと・・・。

そういう経験の蓄積が、子供にとってはすご~く大事なことだと思うのです。

いいお話を聞かせていただきました。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
叔父は残念ながらもう他界しております。
乙山があれこれ料理できるようになり
叔父に食べてもらおうと思っていた矢先でした。
それもずいぶん前のこと、1980年代の終わりごろで、
ちょうど昭和の最後の頃です。

昭和の人だったんですね。
夏は薄汚れたジーンズと下駄、冬はブーツと例のジーンズで通していましたが
さすがに1980年代の終わりごろにはそういう格好では……
本人は全く気にしていないところが笑えるんですが、
本当に叔父らしかったと思います。


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只野乙山

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