ピンク・フロイド 『炎 あなたがここにいてほしい』

Pink Floyd / Wish You Were Here (1975)

PinkFloyd_WishYouWereHere.jpg
1. Shine On You Crazy Diamond (Part One)
2. Welcome To The Machine
3. Have A Cigar
4. Wish You Were Here
5. Shine On You Crazy Diamond (Part Two)



驚異的な大ヒットアルバム『狂気(The Dark Side of the Moon)』(1973)の二年後に発表された『炎 あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)』(1975)は、前者に比して多少地味な感じがしないでもないのだが、どういうわけか私(乙山)個人が再生した回数は後者のほうが多いのではないか。

(1)はピンク・フロイドらしい13分を超える長い曲。リック・ライトの静かなキーボードで始まり、デイヴ・ギルモアの枯れたエレクトリック・ギターがそれに絡んでくる。たぶんフェンダーのストラトキャスターだと思うんだけど、なんかいい音なのだ。そうしてチョーキングによる「泣き」が入るころにはもうどっぷりとデイヴ・ギルモアの世界に浸かっている。

それにしてもなんでこれが長く感じないのかが不思議でならない。まさにピンク・フロイドの魔術である。(8:42)になってやっとヴォーカルが出てきて、その後はゲストのサキソフォン奏者がソロをとる。飽きさせないための工夫なのだろうが、そうやって全体を見渡してバランスをとるセンスが非常に優れているのがピンク・フロイドなのだろう。

(2)は「スイッチ・オン」の後、動き出す大型機械や動力室か何かを思わせる規則的な効果音を背景に、アコースティック・ギターで歌われる。「ようこそマシーンへ」と招かれた少年がどこかへ連れて行かれ(音楽業界のシステム=マシーンへ組み込まれ?)、たどり着いたところは人々が笑いさざめくパーティの会場だろうか。音楽業界と自分たちの状況を歌っているといったところだろうか。

(3)も音楽業界の裏話的な内容の歌詞。「それで、このゲームの名前、まだ言ってなかったっけ/楽してぼろ儲け、っていうのさ」と歌うのはゲスト参加のロイ・ハーパー。おそらく前作の大ヒットで自分たちを取り巻く状況が変わったのだろうか、ロジャー・ウォーターズは皮肉っぽく、冷めた目で音楽業界を見ているのがわかる。

(4)あなたがここにいてくれたらいいのに、という部分はまるでラヴソングのようだけど、オリジナル・メンバーで既にピンク・フロイドを脱退しているシド・バレットに向けられたもの。大ヒットアルバムの後の重圧、メンバーの個人的問題などを抱えて相当精神的に参っている心情を反映したナンバーだと言えるだろう。

(5)は(1)の続編(パート2)。イントロからベース(またはギター)のうねったフレーズが引っ張る形で曲が進み、高音弦のほぼ目一杯まで使い切ったギルモアのスライド・ギターが泣き叫んでいるようだ。ブルースっぽいブレーク(?)の後で曲を締めくくるのはリック・ライトのキーボード。これも12分を超える長い曲であるが、つい飽きずに聴いてしまう。

アラン・パーソンズによる効果音が大活躍していた前作に比べ、よりストレートに演奏している部分が多くなっている本作は、「クレイジー・ダイヤモンド」という長い曲に挟まれた小曲に、その時期のメンバーの鬱屈した想い(ロジャー・ウォーターズ個人の心情かもしれないけど)がかなり直接的に吐露されている。そのあたりに長大な曲にはないピンク・フロイドのもう一つの魅力があるのではないかと思う。


【付記】
● いつも聴いているわけではないのですが、たまにふと聴きたくなるピンク・フロイド。「エコーズ」「原子心母」「クレイジー・ダイヤモンド」など、とてつもなく長い曲が彼らの特徴ですが、構成が上手いのか、いつの間にか聴いてしまっているんです。ロジャー・ウォーターズ、リック・ライト、ニック・メイスンは建築学校の同級生だとか。彼らの楽曲の巧みな構成もひょっとするとそれに関係しているのかもしれません。
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tag : ピンク・フロイド

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ピンクフロイドの人気に驚き

このLPを持っていますが、
正直頭から炎のジャケットには心奪われましたが、
楽曲そのものには。。。

しかし、U-チューブを見るとヒット数がモノ凄いのですね。
ピンクフロイドの人気はとにかく世界的なのには驚きです。

乙山さんの懐深さにもいつも驚きですけど。。。

Re:ミキタカ08シクティーズさん

ミキタカ08シクティーズさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
『Wish You Were Here』(1975)は、あの大ヒットアルバム
『The Dark Side of the Moon』(1973、邦題『狂気』)の後に発売されたものです。

ウィキペディアなどでも確認いただけると思いますが、
『The Dark Side...』は世界的なヒットアルバムだったわけで、
その後に発表されたのが本作なので、やはり注目度は高かったのでしょう。

楽曲そのものには……とおっしゃいますが、
このような構成はふつうの「ロック」ではありえないことで、
だからこそピンク・フロイド(=プログレ)に人気があるのだと思います。

デイヴ・ギルモアの枯れたストラトキャスターのギターなんか、渋いじゃないですか。
(あ、でもないか……)
乙山はちょっと、好きなんですけどね。
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