紀伊国屋文左衛門 純米酒ひやおろし

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ひやおろしはもうそろそろおしまいかな、などとと思っていたけれど、まだ店頭で販売しているではないか。今回は紀州和歌山の酒〈紀伊国屋文左衛門 純米酒ひやおろし〉が西宮の某酒店で入手できた。これが和歌山の酒だぞ、と意識して飲んだ記憶はなく、たぶん初めて和歌山の酒を飲むことになるんだと思う。

和歌山にはあまり縁がないのでめったに足を向けることがないのだが、昔「紀伊半島一周旅行」などと思いつき、一人旅をしたことがある。まだ二十歳を過ぎたばかりの頃で何にもわかっちゃいなかった(今でもそうかもしれない)私は、まずは和歌山だということでJR天王寺駅から〈くろしお〉に乗った。とにかく列車で串本まで行き、それから那智の滝、熊野、津市というコースをとったように覚えている。

ただ行ってみようというだけで、着替えの下着と予備のジーンズ、衣服類をリュックサックに詰め、何の予備知識もなく観光案内すら持たないという内田百間も真っ青になるような計画性のなさ。カメラもなく、あるのはただ小型のノートと万年筆だけ。知らない街を目的もなくぶらぶら歩き、疲れたら喫茶店に入って休み、腹が減ったら適当に食事を済ませ、できるだけ安いビジネスホテル(または民宿)に泊まるというほとんど意味のない単独行だったが、和歌山や三重に行ったんだ、という記憶だけは残っている。

さて〈紀伊国屋文左衛門 純米酒ひやおろし〉を飲んでみる。ほのかに果実のような匂いがするのだが、これは何だろう。うまく喩えることができないけれど、しいて言えば「柿」なのかもしれぬ。ううむ、どうも違うようだ、これはあまりあてにしないでください。甘みも感じられるが、これははっきりと感じるくどいものではなくて、むしろ旨みと言ったほうがいいのかもしれない。

やはり適度に熟成した酒ならではの味わい、ということなのだろうか。角が取れたまろやかさとこくがあるのだが、香りもちゃんと残っている。うまみ成分がとても多く感じられる中に、わずかに「苦み」も含まれているように思えた。この「苦み」は「辛口」に通じるもので、独特の味わいに仕上がっているのではないだろうか。

ところで酒の名前〈紀伊国屋文左衛門〉だが、ウィキペディアなどで調べてみると、江戸元禄期の商人で、生没年がはっきりしない半ば伝説上の人物である、とのこと。嵐の中を命懸けで紀州から江戸までミカンを運んだ「ミカン船伝説」があるようだ。実際はどうあれ、そのような人物の話が残っているというのはいいことじゃないか。小さな一介の商人から豪商へ出世した男の名前を冠した酒、〈紀伊国屋文左衛門〉も夢のある酒、なのだと思う。


【付記】
● 和歌山の酒〈紀伊国屋文左衛門〉はとてもいい酒でした。関西で南国と言えば、それは紀州和歌山を指すのです。今では南国という言葉とともに、土佐高知も思い浮かべる乙山ですが、紀州にも土佐にも何かおおらかな、豪放なとでもいうべき風土と気質を感じます。和歌山も高知も、もう一度行ってみたい処なのです。

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No title

旨味と舌を穏やかに引き締める微かな苦味・・・
良さ気ですね~♪
和歌山といえば昔々少しだけ読んだ中上健次の著書を思い出します。
からりと明るい日差しと影・・・その2極を混在させる奥深さ。
今回のお酒にも似た作風なのかなぁと思ったり(こじつけ(笑)
私も和歌山のお酒はまだ飲んだことが無いので、機会があれば
是非試してみたいです。
(まぁ冷やおろしはまた来秋のお楽しみ、ですが(^^;)

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
そうそう、和歌山と中上健次。
中上健次は和歌山の出身でしたね。

和歌山は南向きの土地柄で本来明るい南国的雰囲気があるはず、
なのですが、背後はすぐ山が迫ってきていて、
海岸は急勾配のところが多くて
なにか「光と影」を感じさせるところがあります。

〈紀伊国屋文左衛門〉はなかなかいい酒でした!
今年は意識してひやおろしを飲みました。
上げていないひやおろしもまだあるんですよ。
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只野乙山

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