ボズ・スキャッグス 『スピーク・ロウ』

Boz Scaggs / Speak Low (2008)

BozScaggs_SpeakLow.jpg
1. Invitation
2. She Was Too Good To Me
3. I Wish I Knew
4. Speak Low
5. Do Nothing Till You Hear From Me
6. I'll Remember April
7. Save Your Love For Me
8. Ballad Of The Sad Young Men
9. Skylark
10. Senza Fine
11. Dindi
12. This Time The Dream's On Me



『美の壺』というテレビ番組をご覧になっている方も多いと思う。いわゆる絵画/美術の作品ではなくて伝統工芸品などにスポットを当て、その「見どころ」を教えてくれるなかなか楽しい番組である。「江戸の文様」とか「蓄音器」などを見ながら、そうだったのか、などと感心しながら見ているが、もう一つの楽しみはBGMに使われる曲である。

ほとんどがジャズの曲なんだけど、その回のテーマに合わせて微妙に選曲を変えており、古めのものだとデューク・エリントンだとかルイ・アームストロングなどが、モダンなテーマだとジャコ・パストリアスとかノラ・ジョーンズなどがさりげなく背後に流されている。あるとき、そこでボズ・スキャッグスがジャズを歌ったものが使われていて思わず唸ってしまった。

ボズ・スキャッグスといえば「ウイ・アー・オール・アローン」や「ユー・キャン・ハヴ・ミー・エニイタイム」などで知られるロック/R&Bの都会派シンガーであるが、2003年に『バット・ビューティフル』、2008年には『スピーク・ロウ』という二枚のジャズ・アルバムも発表している。1970年代半ばから80年代の最盛期のボズ以外は認めないという人もいるかもしれないが、私(乙山)はボズのジャズ・アルバムが大好きなのである。

実際に聴いてみるとボズの持っている声の質や雰囲気がジャズにぴったりとはまっているのがわかり、なんでこれをもっと早くやらなかったんだろう、と逆に不思議に思ってしまうくらいである。もちろん、マイケル・ブーブレの圧倒的な声量や張りのあるヴォーカルに比べてもずば抜けていい、などと言うつもりはないけれど、これはこれで非常に魅力を感じるヴォーカルだ。

本作『スピーク・ロウ』(2008)は、非常にシンプルなカルテット編成(ヴォーカル/ピアノ/ベース/ドラムス/サキソフォン)で録音した前作とは違い、共同プロデューサーにギル・ゴールドスタイン(ピアノ/アコーディオン/編曲)を迎え、ストリングスなども加えた少し豪華な音づくりになっているが、基本はシンプルでボズのヴォーカルをしっかり際立たせることを目的にした音作りになっている。

ほぼ全編、ジャズのスタンダード曲を歌い上げているが(11)はボサノヴァの曲。ボズ・スキャッグスとボサノヴァ、これがけっこう合っているんです。ギル・ゴールドスタインのアコーディオンも素敵。(2)はチェット・ベイカーのヴォーカルで有名な曲。ちょっとだけチェットらしさを出そうとしている(?)ボズが何とも微笑ましい。

タイトル曲(4)はクルト(カート)・ワイルの作で、(5)はデューク・エリントンの曲。(8)は若者たちの姿を歌ったバラードで、齢を重ねたボズが唄うと心に染みる。このアルバムのヤマ(ハイライト)ともいえるナンバー。(9)(10)はジョニー・マーサーという人の作。とくに(10)はいつか、どこかで聴いたことのある曲で、ボズのヴォーカルがいぶし銀のよう。

なるほど全盛期の感じと比べると少しパワーダウンしてるかも知れないが、それでもボズのヴォーカルはまだ衰えの少ないほうなのではないか、いや実質的には活動を止めてしまっているシンガーもいることを思えば驚異的と言ったほうがいいのではないか。聴いているとそこに、ちょっとくたびれているけどまだがんばっているボズがいるのがはっきりわかるいい録音。

それに加えて光るのは、やはりギル・ゴールドスタインの編曲と演奏。さりげなく使われるバスやアルトのフルート、バス・クラリネット。こういうのは本当、思いつきもしないし、そもそもバス・フルートがあることさえ知らなかった。ボズはいい人と組んだなあ。必要最小限の小編成のストリングスやヴィブラフォンなどがボズのヴォーカルを引き立てている、これは正真正銘の「ジャズ」ヴォーカルアルバムだ。


≪ 『バット・ビューティフル』へ  『シルク・ディグリーズ』へ ≫


【付記】
● ジャズものといえば、ロッド・スチュワートも『グレイト・アメリカン・ソング・ブック』を何枚も出していますね。ロッドの「ジャズ」はまことに豪華絢爛、フランク・シナトラも真っ青といっていい音作りで、ボズとの違いがよく出ています。どちらもそれぞれいい味わいを出していると思いますが、個人的にはボズ・スキャッグスのほうがジャズに合っているような気がしないでもありません。
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非公開コメント

ありがとうございます

こんばんは

いつもながら、素適な音楽を紹介くださり感謝!
すぐYOUTUBUで聞いてお店のBGMに使っています。
今回のボズ・スキャッグスもとても素適。
早速つたやへいってきます。
RIAN MASTER

Re:rian masterさん

rian master&mamaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
そのように仰っていただき、感謝しております。
やはりそれぞれの音楽には向き、不向きがありましょう。

できるだけどのような用途に向く音楽なのか、
はっきり明記したうえご紹介していきたいと思っています。
今回のボズのジャズ・アルバムはお店のBGMにもふさわしく、
個人でじっくり聴くにもふさわしい仕上がり。

ご近所の「蔦屋」にあればいいのですが。

No title

ボズ・スキャッグスが発音できない僕はもうかなりの酔っ払い?(笑

Re:KazNさん

KazNさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ボズ・スキャッグス、確かに発音しにくいですね。
酔っぱらうと、発音しにくくなる音ってありますよ。
s z t なんかがとくに。
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