トーキング・ヘッズ 『リメイン・イン・ライト』
Talking Heads / Remain in Light (1980)

1. Born Under Punches (The Heat Goes On)
2. Crosseyed And Painless
3. Great Curve
4. Once In A Lifetime
5. Houses In Motion
6. Seen And Not Seen
7. Listening Wind
8. Overload
何人かのミュージシャンが集まってバンドあるいはグループとして活動する場合、どうしても固定メンバーでないとそのバンド/グループとしての音楽が成立しないときと、メンバーは常に入れ替わっているのにもかかわらず、そのバンド/グループとしての音楽が成立するときがあるのは興味深いことである。
前者の場合、たとえばビートルズを挙げてみると、あの四人以外のメンバーで「ビートルズ」が成立するとはどうしても思えないような気がする。また、レッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムが亡くなった後、何人かのドラマーで試してみたのだが、どうしても「レッド・ツェッペリン」のサウンドにならなくて、バンドの存続を断念したという。
後者のもっとも顕著な例はマイルス・デイヴィスであろう。常に自分のやりたいことを模索し続けていたマイルスは、目に留まったミュージシャンを集めて演奏し、アルバムを残していくのだが、どれだけメンバーが変わってもやはりそれは「マイルス・デイヴィス」としか言えない音楽だった。ロックバンドで言えば、キング・クリムゾンを例に挙げることができると思う。
トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』(1980)が発売されたとき、それまでの「知的でおとなしく、可愛らしい」感じのバンドが、いきなりファンキーなサウンドに変貌して話題になった。黒人のゲスト・ミュージシャンを加えてファンキーに改造するやり方が「黒人音楽への批評性に欠ける」という評も出たが、これは先に書いたバンド/グループの在り方にかんする問題意識(こだわり)に由来するものだろう。
そのあたりのことはさておいて、たんなる音楽として『リメイン・イン・ライト』を聴いてみると、やはりすごいなあと感嘆してしまう。クレジットを見ると、ギターが数名、ベースも数名、というふうになっていて、だれがどの曲でどの楽器を演奏しているのか、とてもわかりにくい。まあ、よっぽどのマニアでもない限り、ふつうはそんな聴き方はしません。理屈は抜きにしてノリノリの前半を楽しもう。
複雑に入り組んだリズムのように感じるけれど、ドラムのクリス・フランツは8ビートを叩いている。そこにパーカッションが絡んで複雑に聞こえるのだろうと思うが、その音作りがじつに巧みなのだ。パーカッションとしてホセ・ロッシー(ウェザー・リポートの後期作品に参加)/デヴィッド・バーン/ブライアン・イーノ/クリス・フランツ/ティナ・ウェイマス/ロバート・パーマーらがクレジットされていて、一気にジャム・セッションをして仕上げたのではなく、オーヴァーダビングで仕上げたのかもしれない。
(3)ではキング・クリムゾン加入以前のエイドリアン・ブリューが、「エレファント・トーク」のようなギター・ソロを披露している。(4)はプロデューサー/演奏者のブライアン・イーノがヴォーカル参加しているのがわかる。(5)はジョン・ハッセルがくぐもったような不思議なトランペットを聴かせる。
後半はファンキーな部分はなりを潜め、ミディアム/スローテンポの曲が並ぶのだが、このあたりはブライアン・イーノのソロアルバム4枚目『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』の構成に似ている印象を受けた。とくに(8)はイーノによる効果音が大きな役割を果たしており、どこか呪術的な雰囲気を盛り上げている。この「呪術的」とでも言いようのない雰囲気に後半部分はすっぽりと包まれており、前半のファンキーな部分とは好対照を見せ、奥深さを感じさせる。

1. Born Under Punches (The Heat Goes On)
2. Crosseyed And Painless
3. Great Curve
4. Once In A Lifetime
5. Houses In Motion
6. Seen And Not Seen
7. Listening Wind
8. Overload
何人かのミュージシャンが集まってバンドあるいはグループとして活動する場合、どうしても固定メンバーでないとそのバンド/グループとしての音楽が成立しないときと、メンバーは常に入れ替わっているのにもかかわらず、そのバンド/グループとしての音楽が成立するときがあるのは興味深いことである。
前者の場合、たとえばビートルズを挙げてみると、あの四人以外のメンバーで「ビートルズ」が成立するとはどうしても思えないような気がする。また、レッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムが亡くなった後、何人かのドラマーで試してみたのだが、どうしても「レッド・ツェッペリン」のサウンドにならなくて、バンドの存続を断念したという。
後者のもっとも顕著な例はマイルス・デイヴィスであろう。常に自分のやりたいことを模索し続けていたマイルスは、目に留まったミュージシャンを集めて演奏し、アルバムを残していくのだが、どれだけメンバーが変わってもやはりそれは「マイルス・デイヴィス」としか言えない音楽だった。ロックバンドで言えば、キング・クリムゾンを例に挙げることができると思う。
トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』(1980)が発売されたとき、それまでの「知的でおとなしく、可愛らしい」感じのバンドが、いきなりファンキーなサウンドに変貌して話題になった。黒人のゲスト・ミュージシャンを加えてファンキーに改造するやり方が「黒人音楽への批評性に欠ける」という評も出たが、これは先に書いたバンド/グループの在り方にかんする問題意識(こだわり)に由来するものだろう。
そのあたりのことはさておいて、たんなる音楽として『リメイン・イン・ライト』を聴いてみると、やはりすごいなあと感嘆してしまう。クレジットを見ると、ギターが数名、ベースも数名、というふうになっていて、だれがどの曲でどの楽器を演奏しているのか、とてもわかりにくい。まあ、よっぽどのマニアでもない限り、ふつうはそんな聴き方はしません。理屈は抜きにしてノリノリの前半を楽しもう。
複雑に入り組んだリズムのように感じるけれど、ドラムのクリス・フランツは8ビートを叩いている。そこにパーカッションが絡んで複雑に聞こえるのだろうと思うが、その音作りがじつに巧みなのだ。パーカッションとしてホセ・ロッシー(ウェザー・リポートの後期作品に参加)/デヴィッド・バーン/ブライアン・イーノ/クリス・フランツ/ティナ・ウェイマス/ロバート・パーマーらがクレジットされていて、一気にジャム・セッションをして仕上げたのではなく、オーヴァーダビングで仕上げたのかもしれない。
(3)ではキング・クリムゾン加入以前のエイドリアン・ブリューが、「エレファント・トーク」のようなギター・ソロを披露している。(4)はプロデューサー/演奏者のブライアン・イーノがヴォーカル参加しているのがわかる。(5)はジョン・ハッセルがくぐもったような不思議なトランペットを聴かせる。
後半はファンキーな部分はなりを潜め、ミディアム/スローテンポの曲が並ぶのだが、このあたりはブライアン・イーノのソロアルバム4枚目『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』の構成に似ている印象を受けた。とくに(8)はイーノによる効果音が大きな役割を果たしており、どこか呪術的な雰囲気を盛り上げている。この「呪術的」とでも言いようのない雰囲気に後半部分はすっぽりと包まれており、前半のファンキーな部分とは好対照を見せ、奥深さを感じさせる。
【付記】
● 『リメイン・イン・ライト』の(1)は本当に身体が動き出さずにはいられないファンキーな曲で、こういう曲をたとえば「部屋の片付けをしないといけない」とか「大掃除をしないといけない」という状況で用いるとじつに効果的です。ですがゆったりくつろいで聴く、というヒーリング用途には適していません。
● 『リメイン・イン・ライト』の(1)は本当に身体が動き出さずにはいられないファンキーな曲で、こういう曲をたとえば「部屋の片付けをしないといけない」とか「大掃除をしないといけない」という状況で用いるとじつに効果的です。ですがゆったりくつろいで聴く、というヒーリング用途には適していません。
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tag : トーキング・ヘッズ
コメントの投稿
なつかしい!
こんにちは。
わ、このアルバムは大好きなんですよ。
リリースされた時は衝撃でしたね。
ロックというよりコンテンポラリー・ミュージックだと思いました。
トーキングヘッズでは、このアルバムと
ライヴ・フイルム"Stop Making Sense"が特に好きです。
わ、このアルバムは大好きなんですよ。
リリースされた時は衝撃でしたね。
ロックというよりコンテンポラリー・ミュージックだと思いました。
トーキングヘッズでは、このアルバムと
ライヴ・フイルム"Stop Making Sense"が特に好きです。
Re:木曽のあばら屋さん
木曽のあばら屋さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
リリースが1980年ちょうどでしょう。
ロックの文脈でこのビートというか、アフリカ的(?)な感じは
それまでなかったですよね。
70年代のロックでも「トーキング・ドラム」とかそれらしい感じは
あったのですが、ここまで「アフリカ的なもの」前面に押し出した
ロック音楽はなかったのではないかと思います。
"Stop Making Sense"と言えば、あのぶかぶかのジャケット、
そしてデイヴィッド・バーンの鶏のような動き(ダンス?)が印象的でした。
ライヴではバーン、ティナ、クリス、ジェリーのオリジナル・メンバー四人と、
ゲストミュージシャンを加えて演奏をしていることを思えば、
『リメイン・イン・ライト』も一発録りだったのか……などと思ってしまいます。
リリースが1980年ちょうどでしょう。
ロックの文脈でこのビートというか、アフリカ的(?)な感じは
それまでなかったですよね。
70年代のロックでも「トーキング・ドラム」とかそれらしい感じは
あったのですが、ここまで「アフリカ的なもの」前面に押し出した
ロック音楽はなかったのではないかと思います。
"Stop Making Sense"と言えば、あのぶかぶかのジャケット、
そしてデイヴィッド・バーンの鶏のような動き(ダンス?)が印象的でした。
ライヴではバーン、ティナ、クリス、ジェリーのオリジナル・メンバー四人と、
ゲストミュージシャンを加えて演奏をしていることを思えば、
『リメイン・イン・ライト』も一発録りだったのか……などと思ってしまいます。