ジャコ・パストリアス 『ジャコ・パストリアス』

Jaco Pastorius / Jaco Pastorius (1976)

JacoPastorius_JacoPastorius.jpg
1. Donna Lee
2. Come On, Come Over
3. Continuum
4. Kuru/Speak Like A Child
5. Portrait Of Tracy
6. Opus Focus
7. Okonkole Y Trompa
8. (Used To Be A) Cha-Cha
9. Forgotten Love
10. (Used To Be A) Cha-Cha [Alternative Take]
11. 6/4 Jam


あまりに有名すぎてついつい聴くのが後回しになってしまったアルバムがたくさんある。フュージョン/ジャズのベース奏者、作曲家のジャコ・パストリアス(1951~1987)の初リーダー作『ジャコ・パストリアス』(1976)もそんな一枚。

ウェザー・リポートのベーシストとしてのジャコは聴いたことがあるけれど、ソロワークは聴いたことがなかった。半ば神格化された伝説のベーシスト、などと聞くとちょっと敬遠したくなるひねくれたところが私(乙山)にはあるのです。

早速聴いてみると、(1)のテンポの速さやアイディアの豊富さにびっくりさせられる。ううむ、やはり噂は本当だった。すごい、の一言に尽きる。参加ミュージシャンもずいぶん豪華で、若いベーシストのソロアルバムにどうしてこんなにミュージシャンが、と驚くばかり。それだけ注目されていたということなんだろうけど、それにしてもすごいなあ。

デヴィッド・サンボーン(as)/ハービー・ハンコック(p)/ヒューバート・ロウズ(flute, piccolo)/ナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)/パット・メセニー(g)/ランディ&マイケル・ブレッカー(tp, s)/ウェイン・ショーター(s)/レニー・ホワイト(ds, per)/サム&デイヴ(vo)など、書ききれないので他は割愛させていただくが、フュージョン/ジャズ系のビッグ・ネームがずらり。ちなみにサム&デイヴは(2)に特別参加してファンキーに唄っている。

(3)ではエフェクターをかけたジャコのベース・ソロがたゆたうように流れ、(5)はハーモニクスを多用した万華鏡のようなフレーズが印象的。ハーモニクスは弦のある一点に指を軽く触れるようにして弾くと倍音が出るもので、ギターではチューニングのときによく使われる。ジャンゴ・ラインハルトも好んでハーモニクスをソロに取り入れていたが、ベースでこれほどハーモニクスを多用した演奏は聴いたことがない。

(7)は複雑なリフレインと変拍子が交錯する、あたかも1980年代のキング・クリムゾンを思わせるような展開を見せるが、こちらのほうが先行作品。キング・クリムゾンのリフレインと変拍子はスティーヴ・ライヒなどのミニマル・ミュージックの影響を受けているようだが、やはりロックと呼ぶしかないような部分が根底にあって、だからこそキング・クリムゾン、ということなんだろうけど、ジャコのそれを聴いているとジャンルを超えているというか、ジャズとかフュージョンがどうの、というのがあまり意味のないことのように思えてくる。

(8)はフルートが大活躍する、これぞフュージョンという速いテンポの曲で、ジャコのソロも快調に飛ばしている感じ。(10)は(8)の別テイクで、それと(11)はオリジナルのLPレコードには収録されていないもの。(11)は(7)に見られたようなリフレインの曲で、同じフレーズを淡々と弾き続けるジャコのちょっと変わった一面を聴くことができる。

このアルバムの制作後、ジャコはウェザー・リポートに参加して数枚のアルバムを残す。ウェザー・リポート脱退後は自身のバンドで活動するほか、ジョニ・ミッチェルなどとセッションをしているが、そのころからジャコの生活は荒れ始め、35歳の若さで亡くなってしまう。そのためジャコのソロ・アルバムは本CD『ジャコ・パストリアス』と『ワード・オブ・マウス』(1981)しか残されていないのが本当に残念である。


【付記】
● 個人的には(1)(3)(5)(7)あたりが好みです。アルバム全体の雰囲気からして、「みんなでゆったりくつろぐ時間にかける音楽」という感じではないようです。なのでぜひ聴いてください、という「お勧め度」はそんなに高くなく、好みが分かれる一枚といえるでしょう。
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No title

おはようございます。

息子の学校にウェザーリポートのコピーがなかなかうまいバンドあるのですが、
そのベースの子もジャコ・パストリアスを神のごとく崇拝しているとか。
私にとってもいつ聞いても鳥肌が立つ素晴らしいアルバムです。

Re:サハラの南さん

サハラの南さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
高校生や大学生でウェザー・リポートをコピーなんて、
なかなかやるなあ、という感じですね。
本当に音楽が好きなんですね、たんに目立とうとかもてようとかいうんじゃなくて。
いいなあ、と思います。

ベースをやっていると、どうしてもシンプルなタテのりのロックより、
うねった感じのファンキーな音楽が好きになっていくことが多いみたいです。
そっちのほうが、面白いんですね。
ジャコ・パストリアスはそういう者にとって、やはりヒーローなんです。
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