ダニエル・ラノワ 『シャイン』

Daniel Lanois / Shine (2003)

DanielLanois_Shine.jpg
1. I Love You
2. Falling At Your Feet
3. As Tears Roll By
4. Sometimes
5. Shine
6. Transmitter
7. San Juan
8. Matador
9. Space Kay
10. Slow Giving
11. Fire
12. Power Of One
13. JJ Leaves L.A.



ダニエル・ラノワといえば、そのソロワークよりも音楽プロデューサーとしての活動のほうがよく知られているのではないかと思う。たとえばピーター・ガブリエルの『So』(1986)やU2の『アンフォゲッタブル・ファイア』(1984)および 『ヨシュア・ツリー』(1987)(U2はブライアン・イーノとの共同プロデュース) 、ロビー・ロバートソンのファースト・ソロ・アルバム『ロビー・ロバートソン』(1987)、ボブ・ディランの『Oh Mercy』(1989)などがダニエル・ラノワによるプロデュースである。

ソロ活動のほうはじつに寡作で、オリジナル・アルバムは現在(2010年10月現在)までに5枚。私(乙山)はこのうち二枚目の『フォー・ザ・ビューティ・オブ・ウィノーナ』(1993)と三枚目の本作『シャイン』(2003)しか聴いていないが、それらを聴いているとアメリカのルーツ・ミュージックを思わせながらも、独特なアレンジで「いかにもルーツ・ミュージック」という雰囲気を払拭したようなサウンドだと思う。

たとえばペダル・スティール・ギター(ギターを横置きで演奏するスタイルの楽器)はボトルネック(スライドギター)で演奏されているわけだが、それがいかにもウエスタン/カントリー的な雰囲気を出しているのではなく、何か別の音楽ジャンルであるかのように思えてくる。(6)(13)にそれがよく表れているだろう。

(1)はエミルー・ハリスがヴォーカル参加しており、色と華を添えている。これはうまい起用法だ。(2)ではU2のボノがヴォーカル参加、デュエットみたいな感じになっている。ダニエル・ラノワのヴォーカルはしゃがれたフィル・コリンズ(?)みたいな感じで、さすがにフィル・コリンズのような声の高さや張りはそんなにないけれど、なかなか味わい深いヴォーカルだと思う。

全体の雰囲気はロックというより、洗練されたポップ・ミュージックという感じ。(1)~(5)まではヴォーカルナンバーが続き、途中に挿入されるインストゥルメンタル曲がなかなか心地よい。(8)はブライアン・イーノを思わせるアンビエント的な小品で、(9)はどこかドゥルッティ・コラムを思い出すような仕上がり。まったく想像の域でしかないのだが、ダニエル・ラノワはドゥルッティ・コラムをかなり聴いてるんじゃないだろうか、などと勝手に思わずにはいられない雰囲気である。

他の人のプロデュースをするときはばっちり現代的でリッチ(ゴージャス)なサウンドで仕上げているのに、どういうわけかソロワークではどこか懐かしい雰囲気のサウンドに仕立てているのが不思議なところ。あえて昔風のサウンドで、そんなに音のエッジも立っていない、けれど聴けば聴くほど、緻密な計算というか音作りに凝ったのがよくわかってくるようで、ミュージシャンに好かれる(彼を起用したがる)というのがうなずける。

センスで勝負するタイプのアーティストといえば、マイケル・フランクスやスティーリー・ダンを思い出すが、彼らのように豪華ゲストミュージシャンを揃えた音作りではなく、ギター、ヴォーカル、ベース、ドラムス、とじつにシンプルな構成なのに、なぜか出てくる音に惹かれてしまう、不思議な魅力のあるアルバムだ。


【付記】
● ビートルズの「ゲット・バック・セッション」の「フォー・ユー・ブルー」という曲で、ジョージ・ハリソンがギターとヴォーカルを担当し、横でジョン・レノンが膝の上にギターみたいな楽器を載せ、左指にボトルネックをつけて演奏している映像(YouTubeでも見ることができます。For You Blueで検索してみてください)があります。それが「ラップ・スティール・ギター」という簡易版スティール・ギターです。
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tag : ダニエル・ラノワ

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No title

こんにちは。
ダニエル・ラノワ。いつものように知りませんでした。でも、プロデュースした作品を
見ると、凄い人だなあ、と思います。いつもこの程度のレベルですみません。
「シャイン」。聴いてみました。と言っても視聴用で、ほんの1分かそこらのものですけれど。
でも、好きな曲は、一部を聴いただけでわかりますものね。
私は、『シャイン』と『スロー・ギヴィング』がいいなあ、と思いました。
いつもたくさんのご本や音楽を紹介してらっしゃるのに、なかなかついていけません。
一個くらい、あ、私も知ってます、好きです!と言いたいところですが。
柴田元幸さんの『ケンブリッジ・サーカス』。ようやく手に入れました。
遅いなあ(笑)。
出だしから面白いです。
「あ、この方も、『ラジオの製作』、見てらしたんだ!」とか(笑)。
翻訳なさったものでしか読んだことなかったのですが、柴田さんには以前から
興味がありました。これから楽しく読んでいこうと思っています。

それから、私、うっかりして、もう9月下旬ころから、『訪問履歴』を残さない、という
設定にしたままでいました。ある方からひょっとして、とご指摘いただいて、昨日
確かめたら、まさにその通りで。慌てて『残す』に設定しなおしました。
どうしてそんなことをしたか、今もわかりません。
乙山さんのところも、寄らせていただいていたのですが、痕跡も残さず、大変失礼
いたしました。ダンディでストイックな乙山さんらしく(笑)拍手ボタンなどというものは
設置してらっしゃらないのですね。
彼岸花さん、歩けないしものも言えないほど落ち込んでいるのでは、と皆さんに
ご心配かけてしまっていたかもしれません。
深くお詫びさせていただきます。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ダニエル・ラノワのソロワークは、素朴なようでいて奥が深い、
なんともいえない味わいがありますね。

彼岸花さんが紹介なさっているもので、
知らなかったなあというのは、じつはたくさんあるのです。
名前だけ知っていてまだ見ていないもの、
たとえばモノクロの名作映画などに多いのです。

『ケンブリッジ・サーカス』は柴田元幸さんの魅力が満載の、
とても面白い本ですね。「永遠の出前おやぢ」とか、
目の付け所が本当に面白い。

じつはね、乙山も当初は「訪問履歴を残さない」という設定にしていました。
そのほうがいいのかな、と思っていたのです。
だけど自分も、「訪問者リスト」で来てくださった人のところを覗いてみる
わけですから、それなら自分の足跡も残したほうがいいのかな、
と判断して現在では訪問履歴を残すようにしています。

「拍手ボタン」。あれは開設してすぐ、撤去しました。
人に拍手を要求しているようで、何か違和感があったのです。
なにか他の名称のボタンにできないものだろうか、と思います。
コメント欄を設けず、拍手のコメントでもコンタクトは取れるので、
便利といえば、便利な装置なんですけどね。

うっかり、というのは只野乙山の得意技みたいなもので、
自分で地団駄踏むやら、人様には迷惑をかけるやらで、
汗顔の至りどころではないくらいです!
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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