パンツの話

いつだったか、休みの忘日、公立図書館のお奨めコーナーに『パンツが見える』という変わった題名の本を目にした。どうも気になり手にとって内容を確かめようとしたのだが、家族の射るような鋭い視線を感じ(うそうそ)、その本の近くにおいてある別の本に手を伸ばしたように覚えている。

パンツといえば、作家の原田宗典も『少年のオキテ』という本で「パンツが見えると何か得をした気分になった」というようなことを書いておられたと思う。やはり男にとって、異性の下着というものは何か特別なものなのであろう。世に下着泥棒なるものが依然として存在することも、それを裏付けていると思う。

私(乙山)にも、パンツにまつわる思い出がいくつかあって、それを話してみようと思う。
その一つ目。小学六年生のとき、私は気象係とか気象委員会などの当番を割り当てられた。早朝、学校が始まる前に気温、地温、水温、風向などを計測し、記録を取ってグラフを作るのである。

当番の朝、百葉箱が設置してある校庭の片隅に行くと、同じクラスの女子がいた。その子とは何度か話をしたことがあって、初めて見るわけではなかった。今日は当番なの、と言う。二人で手分けして、温度を測り、記録用紙にメモを取った。意外と早く仕事は済んでしまったが、女の子と二人だけになると、別に話すこともなく、手持ち無沙汰になってしまった。不器用だったのだ。何か面白いことを言って女の子を笑わせるなどといった気の利いたことはできなかった。

私たち二人はしばらく黙っていたが、突然女の子が意外な行動に出た。彼女は、どういうわけか風見鶏とか風力計が設置してある塔に登り始めたのである。スカートをはいて。するするとてっぺんまで登ってしまった女の子は、ここからだとよく見えるね、などと私に話しかけた。何か返事をしようと見上げたとき、私は彼女のパンツを見てしまったのである。成長のいい、背の高い子だった。朝日が女の子の太腿に当たって、妙にまぶしく見えた。

パンツの話の二つ目。その不思議な出来事は、私が中学三年生のときであった。
掃除の時間だったか、とにかく授業中でなかったことは確かである。一人の女子生徒と向き合って何かをしていたとき、別の女子生徒がやってきて、私の目の前にいる女子生徒のスカートをいきなりめくったのである。

当然パンツが見えてしまったわけだが、これは私に罪があるわけではない。私はこのとき、なんとも言えないきまりの悪さを覚えて赤面した。私の目の前にいる女子生徒も顔を真っ赤にし、赤面した思春期の男女が向き合う構図は、どうにも恥ずかしくて仕方がない。あまりの突然の出来事に、驚くやら赤面するやらで、どう対処していいか戸惑うしかなかった。

この出来事の特異性は、「スカートめくり」を男子がするのではなく、女子がしたということにある。なぜ女子なのだろう? いったい何のために、彼女は女子のスカートを男子の前でめくったのか。ふつう、スカートめくりといえば、小学校低学年くらいの幼い、ふざけた男子がするものであろう。だが、当時なぜか「女子による女子のスカートめくり」が私の中学校(の一部の女子の間)で流行していたようである。この出来事は未だに謎に満ちた理解不可能なものとして私の記憶に残っている。

パンツにまつわる三つ目の出来事は、高校の廊下を歩いているときに起こった。
私の前を一人の女子生徒が歩いていた。そのとき、彼女の右手がお尻か太腿の辺りに伸びて、すっとスカートをたくし上げたのである。彼女の太腿が見え、さらに手は上に移動し、ついに彼女は自分のお尻をぼりぼりと(もちろん、音は聞こえなかったですよ! 念のため)掻いたのである。瞬間、私の足は止まり、その場に凍り付いてしまった。まさに文字通り、フリーズしたのである。

そのとき、運悪く彼女の前に知り合いの女子生徒がいたらしく、その子は「ああっ! うしろ、うしろ!」と大声で叫んだのだ。お尻を掻いた彼女はゆっくりと振り向き、私と視線が合った。私はどうしようもなく、なぜだか知らないがハングアップのポーズをとって両手を挙げた。俺は無実だ、たまたまここにいただけだ、どうしようもない、とでも言おうとしたのだろうか。

最後まで見届けていないですぐにその場を立ち去らんか、この馬鹿野郎! と思われた方もいらっしゃるだろう。この出来事がゆっくり起こったように思われたかもしれないが、それは私の記述のせいであって、実際の出来事はあっという間に起き、避けようがなかったのである。どうか信じていただきたい。それに彼女の知り合いの女の子がいなければ、何事もなかったことにできたと思う。

乙女の反応やいかに? 多くの方はここで「恥じらい」あるいは「はにかみ」などという言葉を連想されるだろう。ところが、きまりが悪くなって赤面したのはむしろ私であって、くだんの乙女はまるで何事もなかったかのように平然とその場を立ち去ったのである。そんなことがこの世で起こるはずがあるまい、とおっしゃる方もいるだろう。私もそう思いたいのである。けれども実際に起こったのだから仕方がない。

当節はミニスカートをはく女性も多い。写真家の田中長徳(チョートクさん)は写真関係の本で「(カメラの)レンズとミニスカートは短いほどよい」というようなことを書いていたように思うが、私もその意見の後半部分には賛成したい気持ちがないわけではない。実際、ミニスカートの女性が存在すると、そこが華やいだ雰囲気を持った空間になることは認めざるを得ないような気がする。

だが、いったいだれのための、あるいはなんのためのミニスカートなのだろう。
流行とか、お洒落、ハイセンスといった言葉で片付けるのは簡単だが、わざわざミニスカートをはいておきながら、駅の階段でお尻を隠すようにするのを見ても、やはりパンツを見られるのは嫌なのだろう。それなのに、なぜミニスカートなのか。いや、あれは「これを曝してはならぬ」という謙虚な行動だったのだろうか。そのあたりは、女性に訊いてみないとわからないが、その種の不躾な質問を女性に問うことは、やはりできないのではないかと思うのだ。女心を解せぬ無粋な戯言、ということだろうか。


【付記】
● 文字だけが羅列することから生じる単調さを避けるために、できるだけオリジナル写真を挿入するよう心がけていますが、今回は内容が内容だけに、文章だけでご容赦ください。
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No title

スタイリッシュな乙山さんもこういうの書かれるんですねぇ。
いいなぁ笑

バンツの思い出…現実は思い出せませんけど、子供の頃に読んだ漫画にこんなシーンがありました。

女の子が悪者にキックをかますんですね。
そしたら悪者の仲間が「お嬢さん、そんなことしたらパンツが見えてしまいますよ」と言うんです。
すると女の子いわく
「これは○○(思い出せない)といって、見せてもいい下着なのよ」と。

見せてもいい下着…何かとても複雑な思いに襲われた記憶がありますね。
騙されたっ、とも。いや別に誰にも騙されてるわけじゃないのですが。

〔爆笑〕

乙山さんの初心なようで、人間臭さを垣間見れてとても笑が止まりません。
そう、ある時期女子はからかいでスカートめくりをしてました、私もされたり、仕返したり。
時々は彼女達の好意を寄せている人の前ですることもありました。
ですから、そのあたり、乙山さん、よく思い出さないと。好意を持たれていたかもですよ!!

一人目の彼女のパンツは、彼女は沈黙が苦手の行動なんでしょうか?
そのくらいの時は自分のパンツの脅威が分からないのでね。
私も小学4年生までは鉄棒で『スカート回り』なるスカートでくるくる回る技をしてましたが
パンツ丸出しでした。〔おばか・・・〕

三人目の彼女は、問題外ですね。
ラッキーとも思うにはあまりにデリカシーがないですね。
それこそ男子はラッキーなのでは?そこの方が気になります。

コメントでこんなに心が弾んだのは初めてです。
乙山さんの文才もあり、ミステリイー調な『どうなる』感のわくわくが良かったです。
爆笑です。長々と失礼致しました。はははははははははは

Re:RSさん

RSさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
乙山はスタイリッシュであるわけではなく、またそうであったわけでもありません。
つねにスタイリッシュであることを理想としているわけですが、
そうであれたためしなど、かつてなかった(これからもないであろう)のです。

「遊歩者 只野乙山」は色気がなさ過ぎる
(今回は色気というよりフェティシズムですが)
のかもしれん、と思い、たまにはこういうのもいいか、と思い
上げてみたのです。こういう部分がじつは、只野乙山の本質かもしれませんよ。

女の子たちには、「見せてもいい下着」をもっとはいてもらって、
階段のところでお尻を隠さないでもらいたい。
颯爽と、高速で通り過ぎていってもらいたいものです。

Re:はちゃべえさん

はちゃべえさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
二つ目のエピソードの女の子、もう今では名前も顔も
思い出すことはできません。そういうことがあった、というだけで。
はちゃべえさんたちも、女の子同士で例の行動をしたんですね。
そういうことが本当にあった、というお話を聞けてうれしく(?)思います。

三つ目のエピソードはね、高校のときですから、女の子の
顔も名前も、いまだに思い出すことができます。
ずいぶん悪し様に書いたようですが、
女性だってお尻が痒いときだってあるだろうし、
人知れず、やっぱり放屁やその他のことも(失礼)しなければならない。

ちょっと気の強い、さばさばした性格の(と思う)子だったと思います。
詳しくはわかりませんが、いい子だと思うのです。たぶん。
本当にあったことなので書いたわけですが、
必要以上に彼女を貶めるようなことになってしまったかもしれません。
まあいいじゃないか、と今では思っているのです。

No title

そこは「おあいこ」って言って
自分も学生ズボンを脱がないと(笑

Re:KazNさん

KazNさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
「おあいこルール」が通用するのはやっぱり、小学校時代でしょうか。
一瞬の間でしたからね。
学生ズボンを云々をしたとしても……

やはり 女は・・・?

ビールの話は全くわからないのですが
この手の話は 何とか・・・

思うに 男にとって秘密であることなのに
女にとっちゃあ 日常だってことでしょうね
でも 周りからは 女らしくしなさいって 強く言われて育つんです
少しずれると女でなくなっちゃうから 女らしくってね
だから その場に直面したとき アッと思い出す

ミニスカート あれって私も不思議だと思います
やはり見せたいんでしょうか
ちらりと

女はしたたかかも

Re:dariaさん

dariaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
この記事を上げたときに、コメントはいただけないものかと
思っていたのです。
乙山の、ふるい記憶の中から引っ張りだしたものですからね。

女性の秘密である部分が、男性を惹きつけるものになっている。
だんだんそれが、「秘密」でなくなってきているんですよね。
公の場であるはずのところで化粧をなさる女性をはじめとして、
秘密の部分が、秘密でなくなっているのが今の時代なのでしょう。

それがいいのか悪いのか、乙山にはわかりません。
dariaさんが「女はしたたかかも」とおっしゃるのは、乙山なりにわかります。
たぶん、女が大人なのであって、男は子ども。

年長者の女性には「かなわない」と思い、
年少者の女性には「押されて」いながら、
ふわふわしているのが男。
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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