藤谷治 『船に乗れ! (2)独奏』

藤谷治 『船に乗れ! (2)独奏』 JIVE (2009)

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藤谷治『船に乗れ! (1)合奏と協奏』は以前ウェブログに書いた(記事へ ≫)が、今回はその第二弾である。『船に乗れ!』は三部作になっていて、全部まとめて書いてしまってもいいのだが、一冊ずつ書いたほうがいいと判断(ネタにもなりますしね)、これを書いている。

新生学園大学大学付属高校音楽科に通うチェロ専攻の主人公津島サトルと、ヴァイオリン専攻の恋人(?)南枝里子との仲も少しずつ進展、二人がオペラを見に行くところから話ははじまる。オペラはモーツァルトの『魔笛』。一部のアリアしか聴いたことがない私(乙山)だが、例によって作者が詳しい解説がてら津島サトルに語らせてくれるので知らなくても楽しめるし、これで『魔笛』のDVDでも買おうかなという気にさせてくれる。

コンサートマスター・白井の芸大合格の知らせを聞いて、南は俄然やる気を出し、芸大受験を仲間たちの前で宣言する。サトルも南につられるふうに芸大受験を決意、二人で芸大に合格しようね、と盛り上がる。サトルは佐伯先生のレッスンで、いよいよ本格的にバッハの『無伴奏チェロ』に取り組むことになった。

二年生になったサトルたち。例年のごとくオーケストラの授業が始まった。今年の演目はフランツ・リストの交響詩『プレリュード』と発表された。私は例によってまだそれを聞いていないのだが、作者によると演奏が非常に難しい、というらしいのがわかる。変調や臨時記号がやたらと多いうえに、「ハ音記号」というのがあるらしく、音楽科の生徒といっても、ふだんそれを目にすることがない場合、読めないという。いやいや、どんなんだろうリストの『プレリュード』って。

オーケストラの授業(というか合奏)風景は前巻でも相当厳しいものがあったが、今回はさらに輪をかけてもうぼろぼろ、といった感じ。前回はオーケストラ合宿で生徒たちが研鑽して次第に合奏が出来上がっていく過程がしっかり書かれていたが、今回はそれよりもサトル自身に大きな転機というか事件が持ち上がる。それは急遽決定されたサトルのドイツ留学で、二ヶ月間という短いものだが、それが今回は大きな意味を持つ。

これ以上書くわけにはいかないが、留学から帰ってきた後の雰囲気は「短調」である、とだけ言っておこうと思う。やはり『船に乗れ!』を読むと、クラシック音楽が聞きたくなる。とくに作中で取り上げられる曲はどんなものか、知りたくなってくるのだ。そんなふうにしてクラシックに出会えることができたなら、それは本当に幸せなことだろうと思う。ロックの真似事をして、クラシック音楽を軽視していた私でも、まだまだ間に合うはずである。


【付記】
● 『船に乗れ! (2)独奏』は少し重たいです。読後感もそんなによくはない。そんな甘口の話ばかりではない、ということなのでしょう。それだけにサトルたちが今後、どうなっていくのかが楽しみです。いつか最終章を読むのが楽しみです。

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No title

こんばんは、

クラシックの話題で偶然にも僕と重なりましたね。
アプローチはずいぶん違いますが。
(只野乙山さんのはかっこいいですね。)

どうやら、ドヴォルザークとベートーベンにはまりそうです。

>ロックの真似事をして、クラシック音楽を軽視していた私でも、
まだまだ間に合うはずである。

同じ思いです(笑)。

Re:naokichimanさん

naokichimanさん、コメントありがとうございます。
むかしはクラシックを聴くなんて「ありえなかった」、
とってもいいくらいの雰囲気でした。
自分も周囲もそうだったのです。

だけど最近、騒々しいものより、じっと耳を済ませて
聴くものも好きになってきました。
酒の好みも変わるのですが、耳の好みもそうなのかな、
と思います。だけどロックもやっぱり好きなんです。
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只野乙山

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