アントニオ・カルロス・ジョビン "Wave"

Antonio Carlos Jobim / Wave (1967)

AntonioCarlosJobim_Wave.jpg
1. Wave
2. Red Blouse
3. Look to the Sky
4. Batidinha
5. Triste
6. Mojave
7. Dialogo
8. Lamento
9. Antigua
10. Captain Bacardi


ボサノヴァといってもいろいろあるけれど、ちょっと軽めのボサノヴァを聞きたいときにぴったりなのがアントニオ・カルロス・ジョビンの『Wave』(1967)ではないかと思う。キリンが一頭、草原をゆくジャケットがとても印象的な本CDは、全曲アントニオ・カルロス・ジョビンの作曲によるインストゥルメンタル曲集で、ヴォーカルは(8)のみ。

アントニオ・カルロス・ジョビン(vo, p, g, harps)のほか、ロン・カーター(b)/アービー・グリーン(tb)/ジミー・クリーヴランド(tb)などが参加しており、録音エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで録音され、クリード・テイラーがプロデュースしている。オーケストラの編曲と指揮を担当しているのはクラウス・オガーマン。マイケル・フランクスの二枚目『スリーピング・ジプシー』(1977)における「アントニオの歌」のストリングス・パートもこの人の仕事です。

少人数のジャズ・コンボで、各ミュージシャンたちが気合の入ったソロのやり取りを繰り広げるスタイルの「これぞジャズ」という感じのCDからすれば、『Wave』はイージーリスニング音楽ということになる(というか、まさにそれ)だろう。肩肘張らずに楽しんでください、ということで、これこそクリード・テイラーの目指したところなのだ。じつに楽に聞いていられるし、聞いていて心地よいのも本当だ。

ピアノ、ギター、ハープシコードとヴォーカル([8]のみ)を演奏するカルロス・ジョビンだが、なんとまあ控えめなことだろう。スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共作『ゲッツ/ジルベルト』(1963)でもそうだったが、小さな音で淡々とバックを務めていた。自分のリーダー作である本CDでも派手なソロをとることはなく、まるでだれかソロイストのために演奏しているかのような趣き。

もとよりイージーリスニング調に仕上げようとする意図がある上に、控えめなカルロス・ジョビンの演奏が重なっている効果は抜群(?)で、どこで、だれの前で再生しても安心の一枚である。人前で聞くのが憚られる音楽も数多ある中で、これは非常にポイントの高いところではないかと思う。ただしモダンジャズ/ハードバップしか認めないうるさ型のジャズおじさんの前で再生すると不興を買うかもしれません。

そんなふうに、うるさ型のジャズファンにそっぽを向かれ、ボサノヴァのネイティヴ派には胡散臭がられて「浮いている」感じがしないでもない本CDであるが、そういう「浮いた」位置取りのものを、私(乙山)はなぜか偏愛してしまうところがある。只野乙山の趣味などどうでもいいとして、軽い気持ちでボサノヴァを聞きたいときには本当にぴったりくるし、控えめなカルロス・ジョビンの音楽にいつしか心惹かれてゆく、お勧めの一枚です。


【付記】
● それにしてもアントニオ・カルロス・ジョビンの演奏は控えめです。とんがったジョアン・ジルベルトと、音楽に関してはセンシティヴなスタン・ゲッツの間に立って、何とか両者を取り持ったアントニオ・カルロス・ジョビン。彼がいなかったら、間違いなく『ゲッツ/ジルベルト』は成り立たなかったでしょう。

「極」に成り切ることができず、「極」と「極」の間を取り持つ「媒介者」としての存在。そういうものに、なぜか深い共感を覚える乙山なのです。カルロス・ジョビンの本当の姿はわかりませんが、エピソードや音楽からすると、なんとなく彼の人となりがわかるような気がするのです。もちろん、そうしたとらえ方がまちがっている可能性も大いにあることも書き添えておきます。
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No title

なんだか「中間管理職」みたいなイメージが沸いてきました
カルロス・ジョビンさん(笑)
イケイケドンドンな自己表現も良いですが、聴いていて心地よい
安心できる演奏もまた良いですよね♪

Re:zumiさん

zumiさん、コメントありがとうございます。
うーん、アントニオ・カルロス・ジョビンの実像は
あまり知らないのです。
音楽とエピソードだけで想像しています。
たぶん、いい人なんだと思うんですけどね。
"Wave"は晩御飯のときに再生しても大丈夫です。

素適!

ボサノバ大好きです。
でも選曲が出来ませんでした。ジョビンの“WAVE”は
晴れた木漏れ日の中の里庵に最高。
ゲッツとジルベルトは雨の日のたそがれていたい日に
最高。
とても素適な選曲有難うございます。
                      RIAN MAMA

Re:rian master&mamaさん

rian master&mamaさん、コメントありがとうございます。
なるほど、「里庵」ではジャズもボサノヴァも似合いそう。
クラシックもばっちり、合うのではないかと思います。

おいしいケーキや飲み物、アンティークや音楽に囲まれて、
過ごす時間は楽しそうですね。
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只野乙山

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