ランディ・ニューマン 『セイル・アウェイ』 (1972)

Randy Newman / Sail Aaway (1972)

RandyNewman_SailAway.jpg
1. Sail Away
2. Lonely At The Top
3. He Gives Us All His Love
4. Last Night I Had A Dream
5. Simon Smith And The Amazing Dancing Bear
6. Old Man
7. Political Science
8. Burn On
9. Memo To My Son
10. Dayton, Ohio - 1903
11. You Can Leave Your Hat On
12. God's Song (That's Why I Love Mankind)
13. Let It Shine
14. Maybe I'm Doing It Wrong (Studio Version)
15. Dayton, Ohio - 1903 (Early Version)
16. You Can Leave Your Hat On (Demo)
17. Sail Away (Early Version)



現在ではロック(ポップ)シンガーとしての活動より、映画のサウンドトラックの制作で知られるランディ・ニューマンだが、ときにふっと聞きたくなって聞いてみると「やっぱりいいなあ」と感心してしまうのがこの『セイル・アウェイ』(1972)である。

アルバムに収められたすべての楽曲はランディ・ニューマンによって書かれ、編曲されたもので、ランディ・ニューマン(vo, p)をはじめアール・パーマー(ds)/ジーン・パーソンズ(ds)/ライ・クーダー(g)/ウェルトン・フェルダー(b)らが参加している。プロデュースはレニー・ワロンカーとラス・タイトルマンのコンビで行っている。

サウンドはきわめてシンプルで、基本はランディ・ニューマンのピアノとヴォーカル。そこにストリングス(ワーナーのスタジオ・オーケストラと思われる)が加わったり、ドラムとベース、ギターが絡んだロック・スタイルになったりするけれど、騒々しくなることは一切なく、なんておとなしいサウンドなんだ、と改めて思ってしまうような仕上がり。

ランディ・ニューマンはストリングスを使うのが好きらしく、それがまたフィル・スペクターも真っ青になるくらい美しいのだ。ただしフィルの「サウンド・ウォール」と呼ばれるような音が重なった重厚さはなく、あくまでシンプルなサウンドである。後に映画のサウンドトラックを手がけるようになるのがなんとなくわかるコンポーザー&アレンジャーぶりを見せてくれている。

ヴォーカルはくぐもったような声でわざと黒人っぽく歌っているのではないか。とくに(1)にそれがよく出ているように思う。歌詞の内容がシニカルであるのもランディ・ニューマンの特徴。「アメリカでは食べ物に困ることはない/足を引きずってジャングルを走り回ることもない/キリストを歌って一日中ワインを飲むんだ/アメリカ人であることは素晴らしいことだ……さあ旅立つのだ、大いなる海を越えてチャールストン湾へ」と歌う(1)は黒人奴隷の募集人の歌。

(7)では「私たちを好いてくれる者はだれもいない―どうしてだろう/私たちは完全ではないかもしれないが 私たちがやろうとしていることは神が知っている/なのにみんなが 古い友人さえも私たちをけなすのだ/でかいのを一発落としてやるぞ 何が起こるか見てるがいい」と歌う。ロック/ポップは英語の歌詞の内容などあまり気にせずに聞くのもいいと思うが、ランディ・ニューマンを聞く場合、何を歌っているのか知っておいたほうがより楽しめます。

『セイル・アウェイ』は大ヒットにこそならなかったものの、少しずつではあるがコンスタントに売れ続けているという。1960~70年代のワーナー・ブラザーズはたとえば初期のリトル・フィートとかヴァン・ダイク・パークスのような「変な音楽」も採算度外視で抱え込むような懐の深いところがあって(そういえばヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』もワーナー。レニー・ロワンカーやラス・タイトルマン、ライ・クーダーが重役をやっているような会社ですからね)、目立たないけれど聞き込めば(聞き込むほど)よさがわかってくるような音楽が多いといえる。『セイル・アウェイ』もそんなアルバムのひとつだと思う。


【付記】
● ロック、というより『ランディ・ニューマン・ソングブック』とでも呼びたくなるような『セイル・アウェイ』ですが、外国人のミュージシャン/シンガーのインタヴューなどを見ていると、ランディ・ニューマンをお気に入りにしている人がわりといたりするようです。全体のサウンドとしてはうるさくないので、歌詞にこだわらずに聞き流すぶんにはお勧めできます。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

tag : ランディ・ニューマン

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/07 (7)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)