『地中海殺人事件』

『地中海殺人事件』 (1982) イギリス

EvilUnderTheSun.jpg
原題:Evil under the Sun
原作:アガサ・クリスティ
監督:ガイ・ハミルトン
出演:ピーター・ユスティノフ、ジェーン・バーキン、コリン・ブレークリー、ニコラス・クレイ、ジェームズ・メイソン、ロディ・マクドウォール、シルヴィア・ミルズ、デニス・クイリー、ダイアナ・リグ、マギー・スミス、エミリー・ホーンほか


アガサ・クリスティは自作の映画化にあまり満足していなかったようであるが、今回取り上げる『地中海殺人事件』(1982)はクリスティの死後に制作されているため、彼女の批判を受けることはない。もしクリスティが生きていたら、と思うのだが、彼女は1976年に亡くなっている。

映画の冒頭はイギリスの荒地で、ある女性が婦人の死体を発見したと警察に通報する場面だが、そこでくだんの女性はとにかく、走る。この場面は美しい地中海が舞台の本編とは何の関係もないように見えるのだが、まったく意味のない映像をわざわざ挿入することはありませんのでお忘れなく。

ホーレス卿(コリン・ブレークリー)は女優のアリーナ(ダイアナ・リグ)と結婚の約束をしたうえで20万ドルの宝石を彼女に与えたのだが、彼女が他の男と結婚したので宝石を取り返したところ、それが贋物だった。エルキュール・ポワロ(ピーター・ユスティノフ)は依頼を受け、捜査に乗り出すが、問題の女優は地中海の孤島にあるホテルで休暇を過ごすことになっており、女優に会うためポワロもそこに出向く。

島のホテルの女主人ダフニー(マギー・スミス)は昔アリーナと一緒に舞台に立ったこともあり、某国王の元愛人で手切れ金代わりに島のホテルをもらった。アリーナと今の夫ケネス(デニス・クイリー)、ケネスと前妻の娘リンダ(エミリー・ホーン)が島に到着し、ダフニーとアリーナは再会するが、二人の間には親密さよりもむしろ嫌悪感が漂っている。

島にはすでにアリーナの関係者たちが来ていて、彼女の到着を待っていた。アリーナを復帰させようとするプロデューサーのオデル(ジェイムズ・メイソン)とその妻マイラ(シルヴィア・ミルズ)。アリーナの伝記を書いて出版の承諾を得ようとしているレックス(ロディ・マクドウォール)。

だがアリーナは舞台に復帰する気はないと告げ、伝記の出版も拒否してしまう。そして観光客で妻がいるラテン語教師パトリック・レッドファーン(ニコラス・クレイ)と人目を憚らずいちゃつく姿に人々は眉をひそめていた。そのことが原因でパトリックと妻クリスティン(ジェーン・バーキン)が喧嘩をしている姿もしばしば目撃された。

ところが、一人でホテルを出て、ホテルと反対側にある浜辺で日光浴をしていたアリーナが死体となって発見された。女主人ダフニーの依頼を受け、ポワロは殺人事件の調査に乗り出すが、問題の犯行時刻にだれ一人としてアリバイのない者はいなかった。そう、これはアリバイ崩しの話なんですね。

クリスティのポワロ・シリーズを読むと、探偵エルキュール・ポワロは黒髪で緑の目をしたベルギー人で背が低いという設定になっており、たとえばシャーロック・ホームズのように一目置かれるというよりは、どちらかというと胡散臭がられるようなタイプ。そのイメージに一番近い(原作に忠実な)のは『オリエント急行殺人事件』(1974)のアルバート・フィニーじゃないかと思う。

それがユスティノフになると、シルバーがかなり混ざったブロンドで青い目、わりと大き目の体格でしかも愛嬌があるという、原作とはかなり違ったイメージになってしまうんだけど、私(乙山)はユスティノフ版ポワロも好きだなあ。ボーダー柄の水着で、水浴をしようとするところなんて、本当に愛嬌がある。熱心なクリスティ読者からお叱りを受けそうだが、私はユスティノフのポワロにまったく違和感がなかったばかりか、かなり気に入っている。クリスティが見たらどう思うか、それはわかりませんけどね。


【付記】
● 『地中海殺人事件』の音楽も素敵で、コール・ポーターの名曲が使われています。オープニングの"I Concentrate on You"と"I've Got You Under My Skin"がじつにチャーミングなアレンジで演奏され、テーマ曲ともいえる"Begin the Begin"に導かれながら(?)ポワロが捜索をするところなど、見所も満載です。そうそう、見所といえばジェーン・バーキン。ほんと、不思議な女優さんで、彼女の歌うCDも発売されていますね。
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