『燃えよドラゴン』 心の底からしびれ、憧れた

『燃えよドラゴン』 (1973) アメリカ

EnterTheDragon.jpg
原題:Enter The Dragon
監督:ロバート・クローズ
出演:ブルース・リー、ジョン・サクソン、ジム・ケリー、アーナ・カプリ、ボブ・ウォール、シー・キエンほか


ちかごろ漫画(テレビアニメ)では、生意気な子ども探偵と、架空の忍者漫画、異星人たちが跋扈する不思議な江戸幕末時代物、そして海賊王を目指す少年、などが人気のようである。詳しくは知らないが、架空の忍者漫画にはほかの忍者のように忍術を使わず、もっぱら体術で勝負する少年が出てくるようで、それはどうみてもあの「ブルース・リー」から来ているとしか思えないのだが、いまどきの子どもたちはブルース・リーを知らないようである。

「お前はもう死んでいる」でよく知られた空手(武闘?)漫画の主人公も、おそらく(いや間違いなく)モデルとしてブルース・リーが存在するはずなのであるが、このことも今の子どもたちは知らないに違いない。それどころか、今(2010年)20代の人たちも、ブルース・リーのことはあまり知らないかもしれない。なるほど『燃えよドラゴン』の映画公開からもう37年が経過しているのだから、それはそれで仕方のないことかも知れぬ。

さて、私(乙山)は『燃えよドラゴン』を幸いにしてリアルタイムの映画館で見た世代の人間である。おどろおどろしい場面(ウィリアムズが殺される場面)やちょっと困った場面(ローパーとタニアの寝室)もあったけれど、それよりブルース・リーの格闘シーンに目を奪われて、それこそしびれてしまったのである。怪鳥のような叫び声を挙げながら技を繰り出して相手を倒していくリーのタフガイぶりにすっかり魅せられてしまった、というわけだ。

筋はリー(ブルース・リー)が、南シナ海に浮かぶ島で麻薬の密造が行われているのを探り出すため潜入捜査する、というもの。島の支配者ハン(シー・キエン)が主催する武術トーナメントに参加するという形をとってリーは潜入するが、島に向かう船には武術トーナメントに参加する武術家たちも乗り合わせていた。

ここで塚原卜伝(つかはらぼくでん)もかくや、と思われる「無手勝流」のエピソードが挿入されている。名高い剣豪であった塚原卜伝が琵琶湖を渡る舟の中で、荒くれ者に勝負を挑まれ、それならあそこでやろうと小島に寄せさせ、相手を先に下ろしたところで棹で岸を突き、相手を小島に置き去りにした、という逸話にそっくりの場面があるのだ。

映画ではリーがやはり荒くれ者に絡まれて、仕方がないからゴムボートに乗って違う場所でやろう、と持ちかける。相手がゴムボートに乗った瞬間、リーはロープをするすると解いて、ゴムボートもろとも船から離してしまう。ロープ一本でつながっているだけのゴムボートに乗った荒くれ者を見て、船のみんなが笑い転げる、というもの。塚原卜伝の逸話が伝わっているのか、それともそういうエピソードはどこの国でもあるのか、今にして思うと不思議である。

圧巻はリーがヌンチャクを使う場面。地下室(麻薬の密造現場)でリーは大格闘をやらかすわけだが、相手がもっていたヌンチャクをふと手にした瞬間、それを右手、左と持ち替えて回しながら演舞(?)するのがもう、たまらなくかっこよかった。敵側の人間もただ見ほれているばかりで、その後ヌンチャクで一瞬にして倒されてしまうのだが。よほどこれが格好良かったのか、木の棒と太目の紐で手製ヌンチャクを作ってリーの真似をしようとする少年が何人か出現したのを目撃している。

ブルース・リーの成功後、「カンフー・ヒーロー」が定着し、ジャッキー・チェンやリー・リンチェイ(ジェット・リー)らが後に続いているが、彼らの戦い方とブルース・リーのそれを見ていると、何かが違うのだ。武術に詳しくないので正確なことはいえないのだが、どうもジャッキーやリンチェイには「型」のようなものがあって、見ているほうもどこか安心して(?)見ていられるのに対し、ブルース・リーにはそれがなく、きわめて自由に技を繰り出しているように見える。『燃えよドラゴン』の撮影後、32歳という若さで亡くなってしまったことが本当に惜しまれる、それこそ「永遠の」憧れの英雄だった。


【付記】
●中国武術に詳しい方の話によると、ブルース・リーの戦い方はストリート・ファイト(つまり喧嘩)の延長線上にある部分が多いのではないか、ということでした。またブルース・リーは武術の研究家でもあり、截拳道(ジークンドー)という新しい武術の創始者でもあるそうです。
いつ、どこで聞いたかもう定かではありませんが、『燃えよドラゴン』の撮影時、その日の収録が終わった後、「お前は本当に強いのか」みたいな感じでブルース・リーに喧嘩を吹っかける者が後を絶たなかった、とかいう裏話を聞いたことがあります。もちろんこれはたんなる噂話で事実かどうかはわかりませんが、いかにもありそうな話ではありませんか。
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懐かしいです!

ヌンチャク作ってましたよ~^^
木の棒には黒のビニールテープを巻いて!

たぶん作品は全て観てるのですが、、、
どのタイトルがどの話だったか???ごちゃごちゃになってます・・・
機会があったら、また観たいですね~

Re:コラソンさん

コラソンさん、コメントありがとうございます。
ですよね! 作ってましたよね!
そんな声を聞けてうれしい乙山です。

本当にこれから、というときに命を落としてしまったブルース・リー。
残念です!
もっともっと、あの雄姿を見せてくれると思っていたのに。

だけど、
だからこそ、
なのかもしれません。

肉体派ヒーローなのに、それだけではない部分が本当にあって、
それがまた魅力になっていると思います。
『ドラゴン怒りの鉄拳』や『ドラゴンへの道』は、
『燃えよドラゴン』の前に撮られたもののようです。

格好良いです!

ジークンドー、って言葉がなんだか沖縄の格技の名前っぽいなと思ったんですけど、これは逆に沖縄の武術が中国由来のせいでしょうか。
格闘技に詳しくないので感覚です(苦笑)
ブルース・リーの映画はほんのワンシーンほどしか見たことがないんですが、ところが見たのは格闘シーンではなくて、映画の序盤で修行してました。
シルエットだけでも「ブルース・リーだ」ってわかりそうです。
格好良いですよね。

はじめまして

はじめまして。ブルースリー懐かしいですね。僕も大好きでした。

Re:ヨシオさん

ヨシオさん、コメントありがとうございます。
ヌンチャクは、どうも琉球古武術の武具みたいですよ。
以前からブルース・リーが使いこなしていたわけでは、ないみたい。

だけど、というか、
なのに?
映画の中ではそれが本式のように思えたことが不思議なんです。

もうそれは、ただただ見惚れているだけの感動ものなんです。
だからぜひ(?)、ヨシオさんにも見てほしいなあ。
これはジェンダーとか趣味を超えたところ(おおげさ?)にある話、かも。

Re:kemmaarch

kemmaarchさん、コメントありがとうございます。
kemmaarchさんなら、阿部和重の『アメリカの夜』をお読みになっているのではないかと。
なんか、やってくれるよなあという感じです。
いろんなところに隠れ(?)ブルース・リーファンがいるのだと思います。

ありゃ?

kemmaarchさん、お返事に敬称を付け忘れていました。
ごめんなさい。
コメントを送信した後で気付きました。
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