『コットンクラブ』 禁酒法とギャングの時代

『コットンクラブ』 (1985) アメリカ

TheCottonClub.jpg
原題:The Cotton Club
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:リチャード・ギア、ダイアン・レイン、グレゴリー・ハインズ、ロネット・マッキー、ジェームズ・レマー、ニコラス・ケイジ、ボブ・ホスキンスほか


「コットン・クラブ」は1920~40年の間、ニューヨークのハーレム地区に実在した高級ナイトクラブで、スタッフと演奏者はすべて黒人たちによるもので、逆に客はすべて白人たちであった。フレッチャー・ヘンダーソン、ルイ・アームストロング、デューク・エリントン、キャブ・キャロウェイなどのジャズ・ミュージシャンが出演し、人気を呼んだ。

映画『コットンクラブ』はこのクラブに出入りするミュージシャンや芸人、客として現れるギャングたちを描いた群像劇であるが、主役はコルネットとピアノ奏者のディキシー・ドワイヤー(リチャード・ギア)。本編のオープニング曲はエリントンの"The Mooche"で、これは1930年代の古い音源が使われていて、その時代の雰囲気を実にうまくかもし出している。

ディキシーは「コットン・クラブ」の近くにあるクラブでジャズを演奏しているが、ある日警官に扮装したギャング二名が爆発物を投げ捨て逃げ去った。彼らの標的はハーレム地区一帯を牛耳ろうと目論むギャングのボス、ダッチ・シュルツ(ジェームズ・レマー)だったが、ディキシーの機転の利いた行動により危機を逃れた。シュルツと一緒にいた歌手ヴェラ・シセロ(ダイアン・レイン)もディキシーに救われた形となって、ヴェラはディキシーに惹かれてゆく。

ギャングのボス、ダッチ・シュルツの命の恩人のような形となったディキシーは、シュルツに依頼されて歌手の伴奏を務めるのだが、その歌手はなんとヴェラだった。二人はシュルツの目を逃れながら次第に愛を深めていくのだが、ディキシーの弟ヴィンセント(ニコラス・ケイジ)はこともあろうにシュルツの用心棒をしており、ディキシーは進まないながらもシュルツとの関係を深めていかざるを得ない状況に立たされる。

ディキシーの役はもう、ビックス・バイダーベックをモデルにしたとしか思えない感じで、びしっと撫で付けた髪にひげを生やしたあたりなんか、なかなか似ているじゃないかと思う。わざわざコルネットを持たせているところもねぇ。映画の中でダッチ・シュルツがディキシーに「ほら、あれをやってくれよ。ビックスのやつを」というところで私(乙山)などは「ああ、これは"Singin' the Blues"かなあ」とか思ってしまう。ほんと、素敵な曲なんですよ。

さすが「コットン・クラブ」だけあって、デューク・エリントン役の人が出てくるけれど、これはあんまり似ていなくて、タップダンサーとしてコットン・クラブに出てくる若い俳優(グレゴリー・ハインズ)のほうが若きエリントンに似ている。そして「ミニー・ザ・ムーチャー」で有名な"ハイデホー・マン"ことキャブ・キャロウェイ役も出てきて笑わせてくれます。このあたりはもう、大好きで見ていてうれしくなってくる。

映画のエンディング曲は再びデューク・エリントンで"Mood Indigo"。これも1930年代音源の古いヴァージョンが使われている。禁酒法とギャングの時代だけに、全体は暗い雰囲気になっている本作のエンディングにまことにふさわしい選曲といえるだろう。エリントンに始まりエリントンで終わる『コットンクラブ』は、ジャズが好きな人にはたまらない映画(そうでない人が見ても楽しめる映画?)なのだと思う。


【付記】
● かなり以前に見た『コットンクラブ』ですが、何年か前にテレビで放映されていたのを録画して見たのです。それを思い出して本記事を書いているわけですが、録画したものをDVDに焼いておくのを忘れたことが本当に残念です。
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こんにちは。

映画もジャズも全然詳しくないですが、、、
若い時に観た『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を思い出しました。

ジェームズ・ウッズがかっこよかったのと、
酒場で流れるトランペット?の音色が心地よかったのを、
いまだに覚えています。
時代背景あってますかね~???

Re:コラソンさん

コラソンさん、コメントありがとうございます。
時代背景は、ばっちり!
あってますよ。禁酒法とギャングの時代そのものでしょう。

ロバート・デ・ニーロはユダヤ系というよりはイタリア系なんでしょうけど……
でもまあ、そういうことはどうでもいいことで。
いい映画を見て、それが心に残っていれば、それが宝物です。
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