フランク・シナトラのヴォーカルはやはり魅力的だった

Frank Sinatra / Swing Easy! (& Songs for Young Lovers)

FrankSinatra_SwingEasy.jpg
1. Just One of Those Things
2. I'm Gonna Sit Right Down (And Write Myself a Letter)
3. Sunday
4. Wrap Your Troubles in Dreams (And Dream Your Troubles Away)
5. Taking a Chance on Love
6. Jeepers Creepers
7. Get Happy
8. All of Me
9. My Funny Valentine
10. The Girl Next Door
11. A Foggy Day
12. Like Someone in Love
13. I Get a Kick Out of You
14. Little Girl Blue
15. They Can't Take That Away from Me
16. Violets for Your Furs



ジャズを聴くなら元歌を知っていなくちゃね、ということで聴き始めたジャズヴォーカル。これが聴いてみると面白くてしょうがない。ブルーノート系の「名盤」でまだ聴いていないCDが山積されているんだけど、そっちはあまり聴かずにジャズヴォーカルものをよく聴いている。

男性ジャズヴォーカルで最もよく知られた人としてフランク・シナトラがいることは知っていた。だがシナトラは私(乙山)にとってもう伝説でしかなかったし、そのうえカラオケで「マイ・ウェイ」を熱唱する人たちを思い出してなぜか恥ずかしくなったりすることもあって、ほとんど敬遠状態だった。

だからあるときHMVの店頭で、フランク・シナトラの10CDボックス(Membran:メンブラン)が非常に廉価で売られているのを見ても「なんだシナトラか」みたいな感じであまり興味がわかなかった。その後いつ行ってもそれが売れずに残っていたので、ほかのCDを買うついでに手に取った。その日はポイント3倍の日で、そうでもなかったら買わなかったかもしれない。昔のHMVのポイントシステムは、ポイントがたまったらしっかり割引してくれて、店頭で買う楽しみがあった。

Membran(メンブラン)の10CDボックスは当たり外れがあって、同シリーズの「フランク・シナトラ」を聴いてみると、1940年代のラジオ放送用音源を集めたもののようで、どうやら「外れ」のようだ。しかも歌い終わるごとに女の子たちの絶叫が入っていて、それこそ「なんじゃこりゃ?」といいたくなるようなものだった。かような現象は1960年代に起きたビートルズなら理解できるが、何でフランク・シナトラなんだ? といわくいいがたい違和感を持ったのであった。

この違和感はおそらく、年配男性が「マイウェイ」を熱唱する姿と若い女の子たちの絶叫が、私の中でどうしても結びつかなかったことに由来するのではないかと思う。だが、よくよく調べてみると、フランク・シナトラは1940年代、戦争で若い男たちがごっそりアメリカ国内にいなくなった時期に若い女の子たちの「代替恋人」として絶大なる人気を博した人らしい。だからティーンネージャーの女の子=フランク・シナトラというのがそもそもの「正しい」フランク・シナトラ像であるらしいのだ。

さて今回のCD『スイング・イージー!』は1950年代、キャピトル時代のLPレコード2枚をカップリングしたもの。オリジナルは『スイング・イージー!』と『ソングズ・フォー・ヤング・ラヴァーズ』である。聴いてみると、さすがに1940年代のラジオ放送用音源とは違って見事な音質。シナトラのヴォーカルも魅力的である。

フランク・シナトラのヴォーカルはそんなに高音ではなく、低めであるがどこか甘く聴き手に響いてきて不思議な魅力がある。決してベルカント的唱法ではなくて、あくまで喉から声を出すポップシンガーのそれなのだが、声量があるというか非常に豊かで安定感があり、ゆったり流れるヨーロッパの河川を思わせるものがある。やはり男性ヴォーカルといえばシナトラ、という評価は伊達ではない。

バックの音楽はゴージャスな雰囲気で似たような曲想を演奏しているので、全体を聴いているとどれも同じように思えてくるが、それでもシナトラのヴォーカルはそれを聴き続けていられるというか、もっと聴いていたくなるような不思議な魅力があるのだ。マイケル・ブーブレを売り出すときに「フランク・シナトラ的なロマンティック・ヴォイス」という宣伝文句を使っていたのを見て何でいまさら、と思ったが、この『スイング・イージー!』を聴けばそれがなんとなくわかる気がする。やはりフランク・シナトラは偉大である。


【付記】
● 今回のCDジャケット写真のものは限定盤のようで、ジャケットのデザインは違うけれど中身は同じ(曲順は違う)というものが多数販売されているようなので、そちらを入手することは可能です。フランク・シナトラをはじめて聴くんだけど、という人には自信を持ってお勧めできる一枚ではないかと思います。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

確か

映画のハッピーフライトに『カム フライ ウィズ ミー』出てましたよね!
素敵な声と記憶に新しいですが
私もキャーッと言ってる女子だったかも・・・

父がよく『マイ・ウェイ』を唄ってくれました、シナトラさんを意識した唄い方で・・・あまりお上手ではない印象しかないでしたが、褒めないといじける父で参りましたが・・・

昨日のパプロカザスの芸術は盛り沢山でいいですね
この方は要チェックしたいです。チェロの音色いいですよね

ジャズは興味があるんですが、シングシングシングみたいのは好きですが
他はどの切り口で聞いたらいいかよく分からないです

昔、吹奏楽で少しかじった程度なので殆ど素人の私でも楽しめる
お奨めございますか?

乙山さんのブログ、とても楽しいです!いつもありがとうございます

Re:はちゃべえさん

はちゃべえさん、コメントありがとうございます。
「マイ・ウェイ」を熱唱する人たちに向ける乙山の眼差しが、冷たかったかもしれません。
いろんな「マイ・ウェイ」(それこそマイ・ウェイ)があるのに。

「シング・シング・シング」(ベニー・グッドマン)はいいですよ。
その調子でグレン・ミラーとかベニー・グッドマンを聴いてはどうでしょう。
それから、カウント・ベイシーやデューク・エリントンがあります。

彼らの曲は、いつの間にか聞いているかも知れません。
また、「ブルーノート」という、ジャズでは非常に知られたCD(レコード)の一群がありまして、
その中のどれかが、びびっと来るかもしれないのです。

なにがいいか、どれがいいか、乙山からは申し上げられないのが残念です。
どれだけ乙山がいいといっても、それが皆様に納得していただけるわけではありません。
求める心があって、それにふれたものを、心にとどめておくこと、でしょうか。
もし好きなら、なにも躊躇する必要はありませんよ!
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/09 (7)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)