『シェルブールの雨傘』

『シェルブールの雨傘』 (1964) フランス

LesParapluiesDeCherburgDRMT.jpg
原題:Les parapluies de Cherbourg
監督:ジャック・ドゥミー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、マルク・ミシェル、アンヌ・ヴェルノン、エレン・ファルナーほか
音楽:ミシェル・ルグラン


『シェルブールの雨傘』を最初に見たのは大学のフランス語の授業でのこと。最初の一年間でテキストを用いた初級文法(フランス語1)を学び、一応一通りは理解できる(と見なされる)段階(フランス語2)で映画を見ながらフランス語を学ぼう、みたいな感じで楽しく勉強できたのを覚えている。そのとき使ったテキストは映画の台詞全編を収録してあるもので、捨てるのがもったいなくていまだに持っている。

映画はイントロからして素敵である。有名なテーマ曲で、映画を見ていないのにどこかで聞いたかもしれないあの曲。雨が降りしきる夜の町で、傘をさして歩く人の姿がほぼ真上からの俯瞰ショットで撮られており、立ち止まってはまた歩き、という映像がタイトルロールと重なってセンスの良さを感じる。

ところが、本編が始まって度肝を抜かれたのは、これがミュージカル映画ということだった。台詞がほぼ全編、歌なのである! いやあ、びっくりしたなあ。というか、正直言って腰が抜けたという感じだった。『ウエストサイド物語』とか『サウンド・オブ・ミュージック』だったら違和感もないのだが、なんか変なのである。たしかに変ではあるが、そのうちあんまり気にならなくなってくるのが不思議。

1957年、シェルブールの小さな雨傘店の娘ジュヌビエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、近所の自動車修理場に勤めるギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)と恋仲にあったが、ギイに召集令状が来て、二年間の兵役に就くことになる。出発前夜、二人は別れを惜しんで愛しあった。小さな雨傘店を経営するエムリー夫人は、不況で店の経営が立ち行かなくなってきたのを機に、自分の宝石を売る決心をする。

小さな雨傘店を訪れた宝石商ロラン・カサール氏は、エムリー夫人の宝石を鑑定するのだが、彼が惹かれたのは宝石よりも娘ジュヌビエーヴの美しさだった。二束三文の宝石を、カサールは買い取ると約束する。ギイを待ち続けるジュヌビエーヴには彼との間にできた子が宿っていた。だがギイからの手紙は次第に途絶えがちになっていく。

ジュヌビエーヴの美しさに魅せられたカサールは、ついにエムリー夫人にジュヌビエーヴとの結婚を申し込む。ギイを待つ心づもりのジュヌビエーヴはカサールの申し出を受け入れる気になれず、ギイとの間に宿った子どものことをカサールに話すが、彼はその子を二人で育てましょう、と寛大な心を見せる。ギイからの音信が途絶える中、ジュヌビエーヴの心は次第に揺らぎ始める。

『シェルブールの雨傘』撮影当時、カトリーヌ・ドヌーヴは20歳前後だったはずだが、小娘の役がぴったりはまるというふうには見えず、成熟した女優が多少無理をして小娘の役をやっているんだな、というように感じたのが正直なところだ。今もう一度見ればそんなふうに感じるかどうかわからないけれど、たぶんそこにどこかブリジット・バルドーにも通じる(バルドーと同じといいたいわけではありません。念の為)ある種のバタ臭さというか「けばさ」を感じ取ったんじゃないかと思う。

音楽はミシェル・ルグラン。ルグランといえばジャズなのだが、ジャズっぽいアレンジはほとんどなくて、ごく普通にというかクラシカル/ポップに編曲している。ルグランの作曲/編曲は、いかにもフランスっぽいこの映画の大事な要素のひとつといえるだろう。だからこそ、ミュージカルなのかな、とも思う。大学の授業で見た、VHSの多少擦り切れた映像がいまだに頭に残っているのだが、最新のデジタルリマスター版が発売されているようなので、それも見てみたいものである。


【付記】
● 『シェルブールの雨傘』の挿入曲 "Watch What Happens" はウェス・モンゴメリーの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』に収録されています。
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フランス映画の

ミュージカルがあるんですね。
興味が湧きます。フランス映画は数本しか見たことがないのですが
色の描写がきれいですよね。

Re:はちゃべえさん

はちゃべえさん、コメントありがとうございます。
『シェルブールの雨傘』はおそらくレンタルヴィデオ店で
借りられると思いますのでぜひどうぞ。

ミュージカルなんですよね、これが。
ちょっと、かくっときますが、すぐに慣れますよ。

こんばんは。

『シェルブールの雨傘』
ミュージカルである必要があるのかな、と、昔私も思いました。
『かくっとくる』…ほんとにそんな感じですよね(笑)。

カトリーヌ・ドヌーブというひと。
あまりにも豪華な美貌であるゆえに、逆に今一つ、
ぴったりくる作品がなかったような気がします。
若いのに、若い娘の役をやる人ではない、と感じさせる不思議な女優さん。
『昼顔』でさえ、何か違和感がありました。
何か人間じゃないような(笑)。雰囲気が豪華すぎるんですね。
特にあの髪の美しさ!

『ウェールズの山』。見ました。
とても面白い映画でした。テーマがもう秀逸ですね。
牧師さん役の方、うまかったですねえ。
なり切っている感じでした。

乙山さん、ありがとうございます。
そう言わせてくださいね。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、コメントありがとうございます。
ミュージカル仕立てを見ると、なにこれ?という感じでしたね。
今では「あえてやったのかな」と思っています。

そうそう『昼顔』がありましたね!
確かに彼岸花さんがおっしゃるように、
ドヌーヴでなくては、という印象に残る映画が思い出せない……

『ウェールズの山』、笑わせてくれるでしょう?
最近のイギリス映画ってほんと、いい感じなんですよね。
「ハリー・ポッター」の映画でスネイプ先生役のアラン・リックマンが出ているのを
何本か見ましたが、やはりいい味出してました。
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