もういちどスペースインベーダーを、と思ったけれど

Space_Invader.jpg
初めてテレビゲームを見たのは、1970年代の中頃ではなかっただろうか。世間はもっと進んでいたかもしれないが、私(乙山)が覚えているのはその時期あたりである。テレビにゲーム機を繋ぎ、手元のコントローラーで操作する型だった。

代表的なものは「テニスゲーム」で、他にブロック崩しのようなゲームもあったかもしれない。だが、私の記憶に残っているのは単純なテニスゲームだけである。初期のコンピューターゲームは、多くが白黒の画面で効果音もあまりないシンプルなものだったのではないかと想像する。

ところが、1970年代の終わり頃、「インベーダーゲーム」という新しいコンピューターゲームが大流行した。これは家庭用テレビゲーム機のソフトではなく、喫茶店やボーリング場、ゲームセンターなどに備え付けられた専用ゲーム機でしか遊べなかった。

スペースインベーダーとはいかなるものか。現在(2010年)40歳以上の年齢の人なら、たいていご存知であろうと思うが、35歳以下の人はほとんど知らないのではないか。要するに、インベーダーが地球侵略のため大群で押し寄せてくるのを、攻撃しながら何とか防ぎ、最後の一匹を倒したら勝ち、というのがその概要である。

彼らはまるで蟹のような横に移動する動きを見せ、同時に手を上げ下げする。端まで移動したら一段落ちて地球に近づいてくる。そのときの効果音が低音で不気味なのだ。移動しながら、インベーダーは爆弾を投下する。その爆弾にやられるか、あるいはインベーダーが接近してきて、画面の下まで来たらゲーム・オーバーである。

地球側には戦艦(戦車?)が一隻あって、左側のレバーを使って左右に移動する。右側にはミサイル(レーザー?)発射のボタンがあるが、とにかく親指を駆使してすばやく打ち続けることが要求される。また、地球側には四基のシェルターがあり、そこに隠れるとインベーダーの爆弾から逃れられる。ただし、シェルターはインベーダーの爆弾によって徐々に破壊され、小さくなっていく仕組みである。戦艦は二回破壊されてもよいが、三回目に破壊された時点でゲーム・オーバーになる。

地球側のミサイルは、インベーダーに命中した場合、即座に発射できるが、外れた場合は弾が画面の上に到達するまで次のミサイルを発射できない。ときおり、敵の母船とおぼしきUFOがインベーダーたちの後ろをゆっくりと浮遊するが、それにミサイルが命中すれば高得点が加算されるという寸法である。

ミサイルの発射音をあえて表記してみれば「キー」であろうか。「キー」というとき、少しかすれたような音を出すと再現しやすい(←だれがするというのか)。ミサイルがインベーダーに命中すると、「プチュッ」という音とともに、つぶれるというか、消えるのだが、これがまた爽快で気持ちいいのである。

そうして、とにかく右手親指を高速にて動かし続け、インベーダーを消していくと、だんだんその数が減っていき、最後の一匹になると動きがやたら速くなる。その一匹を消したら、第一面クリアになり、続いて第二面になる。今度は少しインベーダーの位置が下に(つまり地球側に近く)設定されている。インベーダーの速度自体は変化がないようである。私はどれだけがんばっても、第一面しかクリアできなかった。画面は、初期は白黒だったが、後にカラー画面となり、赤、青、黄色など色とりどりのインベーダーになった。ちなみに一回100円であった。

中学三年の修学旅行は、浅草や日光など、東京方面だった。後楽園球場でプロ野球をちらっと(本当に一瞬だった)見た後、観光旅館で一泊したわけだが、旅館の小さなロビーに、異様な人だかりができていた。なんとそこには、インベーダーゲームがあったのである。一世を風靡した、という言葉はけっして大袈裟ではなかったわけで、同級生の男子がインベーダーゲームに挑み、それを見物するため同級生たちが押し寄せていたのであった。

もうすでに、三面か四面目をクリアしているようである。まさに、天才としか思えなかった。そして私は、攻略本の中でしか知らなかった、伝説の「ナゴヤ撃ち」を目撃したのである。いかなるゆえに「ナゴヤ」なのか、私は知らないが、その必殺技を考案したのが名古屋在住の人物だったのではないかと想像する。

「ナゴヤ撃ち」は画面の左端に、最後列のインベーダー1匹を残し、隙間を空けて右側に4列だけ残しておくのがポイントなのだ。そうすると、隙間は保たれたままとなり、爆弾にやられることはない。4列のインベーダーは、戦艦の目の前まで来ているのだが、ある法則性があるらしく、インベーダーの直前を通過しても爆弾は投下されない。

隙間からインベーダーが4列並ぶところにすっと入るタイミングが命なのだ。そうして、戦艦が右端まできたとき、やおらミサイルを発射して、4連発でインベーダーを消した後、隙間で待機する。これを繰り返し、最後の1匹を消した瞬間、旅館のロビーにどよめきが起こった。私はその光景を忘れることができない。

1970年代の終わり頃、町の喫茶店に行けば、たいていはガラス張りのテーブルにインベーダーゲームが備え付けられていたと思う。けれども、1980年代になると、インベーダーゲームは徐々に下火になっていき、いつのまにか消えてしまった。その後、「ドンキーコング」とか「マリオ」など、さまざまなコンピューターゲームが出現したが、私はスペースインベーダーほど夢中になることはなかった。

スペースインベーダーは、いったいどこへ行ってしまったのであろうか。あれだけ多くの人が熱中した傑作ゲームなのに、なぜオリジナルのパソコン版が発売されないのか、不思議でならない。白黒のクラシックなものでもよい、もう一度、クリアできなかったスペースインベーダーにどっぷり浸り、伝説の「ナゴヤ撃ち」をこの手でやってみたい、などと思っていたら、タイトーからPC版「スペースインベーダー」が発売されているのを見かけ、早速買ってしまった。2000年を過ぎたころのことである。

その後、PS2版でも「スペースインベーダー アニバーサリー」が発売された(2003年)ときもすかさず買ってしまった。スティックとボタンがないのが残念だが、PS2版は喫茶店に置いてあったインベーダーゲームの感覚に近く、なかなか難しい感じだ。さあこれで思い切り浸ることができるぞ、という環境になると、どういうわけかやる気がなくなってしまう。こればかりは本当に不思議だ。いまではときどき、にもいかなくてたまに引っ張り出して遊んでみることがあるが、昔のように熱中することはもうないのが、どこかさびしい。


【付記】
● PS2を買って以来、ゲームでたまに遊んでいるけれど、もっぱらシンプルでわかりやすいゲーム、たとえば麻雀やシューティング、ドライヴィングゲームのようなものばかり。細かいボタン操作を要求されるバトル系のゲームはあまり好きではないのです。のんびりやれる『MYST』シリーズは大好きで、音楽にせよグラフィックスにせよ、じつに見事で惚れ惚れしながら楽しむことがあります。購入してからいったい何年経つか知らないが、未だに『RIVEN』の謎が解けずに悩んでいます。
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