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チェット・ベイカー 『チェット・ベイカー・シングズ』

Chet Baker / Chet Baker Sings (1954)

ChetBaker_Sings.jpg
1. That Old Feeling
2. It's Always You
3. Like Someone In Love
4. My Ideal
5. I've Never Been In Love Before
6. My Buddy
7. But Not For Me
8. Time After Time
9. I Get Along Without You Very Well
10. My Funny Valentine
11. There Will Never Be Another
12. The Thrill Is Gone
13. I Fall In Love Too Easily
14. Look For The Silver Lining



チェット・ベイカーを昔から知っていたわけではなくて、たしか1986~7年頃に来日公演をしており、その宣伝がラジオから流れていたのを耳にしたのがはじめてだと思う。その後1988年にチェットはアムステルダムのホテルから転落して亡くなっているので、最晩年のチェットだったわけだ。

ラジオで聴いたチェットはけだるく、つぶやくような歌声で不思議な魅力があった。興味を持った私(乙山)は『ラヴ・ソング』というCDを買い求めた。これは1986年の録音で、スタンダードナンバーを最晩年のチェットが歌ったもの。ラジオで聴いた歌声がそのまま入っていてとても気に入った。

こうして遅れてチェットのファンになり、少しずつCDを買い集めていった中の一枚が、『チェット・ベイカー・シングズ』で、1954年の録音である。題名が示すように、チェットはトランペット奏者としてではなく、ヴォーカル中心にとりくんだもの。若々しいチェットがTシャツを着てマイクに向かっているジャケットが印象的だ。

チェットのヴォーカルは、ビング・クロスビーやフランク・シナトラ、ナット・キング・コールのように朗々と歌い上げるものではなく、なにかつぶやくような歌声。音域は高めで、テナーというよりはアルト領域にかなり食い込んでいるようなので、女性が歌っているかのような雰囲気を漂わせるときがある。チェットのヴォーカルが「中性的」と言われることがあるのはこのためだろう。

1986年録音の『ラヴ・ソング』と1954年録音の『チェット・ベイカー・シングズ』を聞き比べてみると、多少の衰えはあるかもしれないが、チェットのヴォーカルはそんなに変わっていない。両者には30年以上の隔たりがあることを考えると、これは驚くべきことではないだろうか。

チェット・ベイカーはまさに「チェット・ベイカー・スタイル」とでもいうべきジャズヴォーカルのひとつのあり方を示して見せたわけだが、そのスタイルの継承者はほとんど見かけない。チェットに一番似ているヴォーカルをあえて挙げるとするなら、ボサノヴァのジョアン・ジルベルトではないかと思う。

「熱いジャズ」が好きな方は、チェットのような歌や演奏はお好きでないかもしれない。独特のスタイルだけに、好みの違いも大きくなるのは当然である。だが、男性ジャズボーカルをこよなく愛する者としては、チェットを外すわけにはいかない。


【付記】
● 夜静かに音楽を聴くことが多い乙山ですが、そんなとき本当にぴったりくるのがチェット・ベイカーでしょう。好きだけど、あまり毎日聴きたくはないのです。矛盾しているようですが、乙山にはそういう曲がいくつか存在していて、ふだん聴かないのですが、たまに取り出して聴くようにしています。

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No title

深夜、一人で起きているときに、この歌声がラジオから流れてくるといいでしょうね。
チェット・ベイカー。トランペット奏者ということは知っていましたが、
そして歌声もどこかできっと聞いているはずですが、ちゃんと聴いたのは初めて。
彼の人生も波乱に満ちていますね。
そう思いつつ見ると、この若々しいTシャツ姿がせつなく思えます。
そうして、歌声が胸に沁みこんできます。

そうそう。私は今日、古本屋を冷やかしていて(気骨のある店主なんです)、
昭和53年に美術出版社から出た『植草甚一主義』という、彼の写真やコレクションの数々、コラージュ作品など資料満載の楽しい本を買ってきました。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、コメントありがとうございます。
乙山は若いころのチェットも、晩年のチェットも、どちらも好きです。
衰えの少ない声に驚くほかありません。

東京は古本街があっていいですね。
本当にうらやましい。
いい中華料理店、いい酒店、いい古本屋。
それらがそろっている町は、素敵な町に決まっています。

いいですね~

初めて聞きました。雨の日などお店で聞きたいと思います。
早速買ってきます。

Re:rianmasterさん

rianmasterさん、コメントありがとうございます。
まずは蔦屋などでレンタルされることをお勧めしますが、
『チェット・ベイカー・シングズ』は持っていてもいい、お勧めの一枚です。

写真から拝見しますと、とてもいい雰囲気のお店ですね。
しかも、蓄音機まであるなんて!
サウンドボックスが付いているアコースティック式の蓄音機。

いいなあ、と思います。
1950年代のジャズでも、もっと古い音源でもぴったりなのでは。

待っておくんなはれ、乙山さん。

風邪が長引いてちょっとお邪魔できませんでした。
そしたら、チェット・ベーカーはとっくに過去の記事。早いなあ(笑)

昔、「太陽がいっぱい」を見ました。リメイクの「リプリー」も見ました。
その「リプリー」の中にこんな場面があったのを思い出しました。

友人になりすまそうとして、彼の癖や趣味を身につけようとする場面です。
ジャズが好きな友人を学習するため、レコードをかける・・・

 「なんだこいつ、男か女かわからんなあ・・・・」

とつぶやいた時に流れていたのがチェット・ベーカーでした。

ストーリーもはっきり覚えていないのにこんな場面だけを記憶しているのは、
随分前に私も同じことを思ったからです。

乙山さん、チェット・ベーカーは時々聴くといい、とおしゃいましたが、
私も全くその通りだと思います。
一人深夜にウィスキーなんぞ飲みながら聴いていると、全く時間が止まり、
深海に漂う気分が味わえます(笑)。

好きなジャズメンの一人です。


Re:mapことクワトロ猫さん

mapことクワトロ猫さん、コメントありがとうございます。
風邪はもう大丈夫なのでしょうか?
今年一番の冷え込みが来ているみたいですので、
くれぐれもお大事になさってくださいね。

ヴォーカリストとしてもいいですが、
トランペット奏者としてもチェットも好きです。
ジェリー・マリガンのカルテットに参加しているときや、
ヴォーカルなしのソロ作品などはしょっちゅう聴いてもいいですね。

映画の中でジャズが出てくると、なんかうれしくなってくるんですね。
そんなに詳しいわけではないので、
知っている曲に出会ったときは格別です。

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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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