Bump Of Chicken「Snow Smile」
とある冬の日、すき家で食事をしていたら店内放送(すき家ラジオ?)でバンプ(Bump Of Chicken)の「Snow Smile」が流れた。おそらく「*月になると聞きたくなる曲」という募集に応えたものと思われるが、内面的な歌や物語形式の歌が多い中で珍しく季節ものの歌であり、内容が飛び抜けてスウィートなのである。またダミ声でわかりにくいこともなく、比較的伝わりやすい。
歌詞1番は「冬が寒くて本当に良かった/君の冷えた左手を/僕の右ポケットにお招きするための/この上ないほどの理由になるから」と歌い出される。そして雪が降らないのを残念がり、まだ綺麗なままの雪の絨毯に二人で足跡の平行線を刻むのは「夢物語」だけど、叶わなくたって笑顔はこぼれてくる、と。この部分だけ聞けば、雪がないので夢物語なんだね、と微笑ましい二人に思う。
歌詞2番は「二人で歩くには少しコツがいる/君の歩幅は狭い」と歌われ、二人で過ごした瞬間を胸に刻みつけておこうとする(できるだけ時間をかけて景色を見ておくよ/振り返る君のいる景色を)。サビの「まだ乾いたままの空のカーテン……」は比喩が少しわかりにくいけど、二人で歩いて足音を響かせる、ということだろう。しかしそれも「夢物語」なのである。
ということは、この二人は並んで歩くことさえしていないのであり、「彼女の左手を僕の右ポケットにお招きする」ことも「僕」の想像(妄想)である、とわかる。よくある「もしデートできたら、あれもこれもしたい」という類のね。一見ラブソングと勘違いしてしまう甘い歌詞に包まれているが、本質にあるのは二人の間の絶望的なまでの距離感ではないかと思う。
歌詞の中では明らかにされていないけど、この二人の関係はどのようなものだったのだろう。高校のクラスメイトだったかもしれないし、部活動の仲間だったかもしれない。あるいは大学の同じ学部やサークル仲間だったのかも。いずれにしても手をつなぐことも並んで歩くこともしていないのだから、遠くからただ彼女を見ていた、という感じではないだろうか。
だからこそ「君のいる景色をできるだけ時間をかけて見ておこう」とするのであって、これからしばらく一緒にいると約束された関係ならそうはならないだろう。だってそうする必要がないのだから。君と歩く夢が叶わなくても「笑顔は教えてくれた/僕の行く道を」と歌うが、そのときすでに「僕」は「僕の行く道」に彼女がいないとわかっている。ていうかそうするしかなかったと想像する。
なので「Snow Smile」はラブソングではなく、むしろ決別の歌なのだが、彼女との決別ではない。そもそも彼女との間に関係ができていないのだから。決して叶わない彼女への想いをよせる自分自身との決別というべきだろう。その意味で、この歌はバンプの内面ソング中の内面ソングといえる。そして「僕」は「君と出会えて本当に良かった」と今でも(歌の中で)思い、その思い出を胸にしまいながら「僕の行く道/君のいない道」を歩いている。
歌詞1番は「冬が寒くて本当に良かった/君の冷えた左手を/僕の右ポケットにお招きするための/この上ないほどの理由になるから」と歌い出される。そして雪が降らないのを残念がり、まだ綺麗なままの雪の絨毯に二人で足跡の平行線を刻むのは「夢物語」だけど、叶わなくたって笑顔はこぼれてくる、と。この部分だけ聞けば、雪がないので夢物語なんだね、と微笑ましい二人に思う。
歌詞2番は「二人で歩くには少しコツがいる/君の歩幅は狭い」と歌われ、二人で過ごした瞬間を胸に刻みつけておこうとする(できるだけ時間をかけて景色を見ておくよ/振り返る君のいる景色を)。サビの「まだ乾いたままの空のカーテン……」は比喩が少しわかりにくいけど、二人で歩いて足音を響かせる、ということだろう。しかしそれも「夢物語」なのである。
ということは、この二人は並んで歩くことさえしていないのであり、「彼女の左手を僕の右ポケットにお招きする」ことも「僕」の想像(妄想)である、とわかる。よくある「もしデートできたら、あれもこれもしたい」という類のね。一見ラブソングと勘違いしてしまう甘い歌詞に包まれているが、本質にあるのは二人の間の絶望的なまでの距離感ではないかと思う。
歌詞の中では明らかにされていないけど、この二人の関係はどのようなものだったのだろう。高校のクラスメイトだったかもしれないし、部活動の仲間だったかもしれない。あるいは大学の同じ学部やサークル仲間だったのかも。いずれにしても手をつなぐことも並んで歩くこともしていないのだから、遠くからただ彼女を見ていた、という感じではないだろうか。
だからこそ「君のいる景色をできるだけ時間をかけて見ておこう」とするのであって、これからしばらく一緒にいると約束された関係ならそうはならないだろう。だってそうする必要がないのだから。君と歩く夢が叶わなくても「笑顔は教えてくれた/僕の行く道を」と歌うが、そのときすでに「僕」は「僕の行く道」に彼女がいないとわかっている。ていうかそうするしかなかったと想像する。
なので「Snow Smile」はラブソングではなく、むしろ決別の歌なのだが、彼女との決別ではない。そもそも彼女との間に関係ができていないのだから。決して叶わない彼女への想いをよせる自分自身との決別というべきだろう。その意味で、この歌はバンプの内面ソング中の内面ソングといえる。そして「僕」は「君と出会えて本当に良かった」と今でも(歌の中で)思い、その思い出を胸にしまいながら「僕の行く道/君のいない道」を歩いている。
【付記】
2002年に発表された5thシングルですが色褪せないですね。
2002年に発表された5thシングルですが色褪せないですね。
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初恋
こんばんは。
この歌、初めて聴きました。乙山さんは、音楽の守備範囲が広いですね。
声をかける勇気もなく、遠くから見ているだけの女性への思いを、描いた歌との乙山さんの解釈に同意します。
そういえば村下孝蔵さんの名曲「初恋」も同じですね。
この歌、初めて聴きました。乙山さんは、音楽の守備範囲が広いですね。
声をかける勇気もなく、遠くから見ているだけの女性への思いを、描いた歌との乙山さんの解釈に同意します。
そういえば村下孝蔵さんの名曲「初恋」も同じですね。
Re: 初恋;オッカイポさん
オッカイポさん、コメントありがとうございます。
この歌、なんかいいでしょう?
歌詞1番、2番の幸せそうな二人は妄想で、
3番の「君のいない道を行く僕」だけが現実です。
あまりにも甘い歌詞のせいで、
ラブソングと思ってしまう人もいるようですが、
決してそうではありません。
ラブどころか、ガチの硬派ソングです。
この歌、なんかいいでしょう?
歌詞1番、2番の幸せそうな二人は妄想で、
3番の「君のいない道を行く僕」だけが現実です。
あまりにも甘い歌詞のせいで、
ラブソングと思ってしまう人もいるようですが、
決してそうではありません。
ラブどころか、ガチの硬派ソングです。