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ルース・レンデル 『罪人のおののき』

ルース・レンデル 『罪人のおののき』 創元推理文庫 (1970:原作初出年)

Ruth_Rendell_A Gulity Things Surprised
フィクション作品ほどではないにせよ、推理小説だけに限ってみても恐ろしく膨大な数が出版されていて、全部読むなど無理な話だろう。それでも新しい作品ではなく、わざわざ古いものを読むのは、そこになんともいえぬ味わいがあるからだ。

レジナルド・ウェクスフォード首席警部シリーズ第五弾『罪人のおののき』もそんな一冊。原題は "A Guilty Thing Surprised" で1970年出版(日本では1988年に東京創元社から出版)。作者ルース・レンデルは、バーバラ・ヴァイン名義でも推理小説を書き、2008年にも新作を出しているということだ。

ロンドン郊外と思われる町の「マイフリート館」に住んでいる、裕福な当主クェンティン・ナイチンゲールと、周囲のものに優しい心遣いをしめす妻のエリザベスは、二人に忠実に仕える使用人たちに囲まれて、平穏な暮らしをしていた。

ある夜、エリザベスは深夜の散歩に出かけたが、森の奥で何者かに撲殺されてしまう。だれに対しても優しかったエリザベスが、なぜ殺されなければならなかったのか。首席警部ウェクスフォードは同僚の警部バーデン、嘱託医クロッカーらとともに捜査を進める。

エリザベスの弟で詩人ワーズワースの研究論文を書いているデニス・ヴィラーズとその妻ジョージナ、庭師のウィル・パーマーとショーン・ロヴェル、家政婦マートル・カントリップとメイドのカッチェ・ドーン、鳥獣肉の賄い屋アルフ・トーニィ、元使用人のトゥーイたちに供述を取るうち、次第に容疑者が絞られてくるのだが……

うーん、やはり最後まで読まないと犯人はわからないなあ。少なくとも私(乙山)はわからなかった。犯人当てに凝るほうでもないし、メモをとりながら慎重に読み進めるわけでもない、うっかりというかぼんやり、なんとなく推理小説を読んでいるからそうなるのかな。

途中でしっかりヒントが出されているわけでもないと思う。ほのめかしは詩人ワーズワースとバイロンなんだけど、知らなかったら何のことかわからないだろう。私ももちろん、何のことやらわからなかった。

余計なことはあまり書かず、ウェクスフォードをはじめとした捜査にしたがって進行していくので、あまり気が散らずに読んでいけるのだけど、たんなるパズリングだけではない読み物としての魅力も備えている。それは性格や心理描写が巧みで、掘り下げがしっかりなされているからだろう。クリスティにもどこか通じる、作品全体のエレガントさが堪能できるシリーズではないだろうか。


【付記】
● ルース・レンデルは現役の作家ですが、さすがに40年にもなろうとする作品なので、新刊では今のところ入手は難しいようです。その代わり、中古商品ならたくさんあるようです。古典推理小説はやはり古本屋さんでどっさり買って、どっぷり浸って楽しむのがいちばんなのかな、と思います。
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No title

レンデルはずっと昔に一冊だけ読みかけました。
たしかウェクスフォードものではなかったはず…
犯人の心理が自分にとてもあてはまるため
途中で怖くなって(自分の心の闇を覗くようで)投げ出しました。
今読むとまた違った感想を持つのでしょうけど。

つまり心理描写を書くのがうまい作家なんでしょうね。

Re:RSさん

RSさん、コメントありがとうございます。
そうなんですよ。
いまや古典扱い(?)されているようなルース・レンデルですが、
高度テクノロジー機器の存在の有無を除けば、
そんなに古びていないと思うのです。
どれだけ環境が変わろうと、人間の根っこの部分を押さえているような小説、
そういうものは、風化に耐えうるものを備えていると思うんです。
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