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墨廼江本醸造@佐々辰酒店

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秋田に住んで不思議に思ったことのひとつに「酒屋に秋田以外の酒がない」がある。小売酒屋はおしなべて秋田の酒しか置いてないし、〈やまや〉でもその傾向があるのには首を傾げざるを得ない。大阪の〈やまや〉だったら全国のわりと有名どころの日本酒を買うことができた。大きな声では言えないけど、秋田の酒はそんなに(ほとんど、てか全然)なかった。ごめんね。

ってなんで私が謝ってんの? 違うでしょう、販売店のせいだからね! 秋田の酒はうまくて安いのにね。関西だと普通酒1升=2000円くらいが相場だが、秋田に来て純米酒の2リットル=1000円以下ってのに本当にぶったまげた。そんな秋田の酒だけど、酒米(酒造りに好適な米種、山田錦など)を使ってないこともある。

どういうことかって、食米を転用してるんだよね。だけどそれはたいしたことではない。おいしければいいんだよ、何だって。数十年前、某酒メーカーが酒造に古々米や輸入米を使ってるとかで騒ぎになったみたいだけど、飲むほうからすると問題ないよ? だって、おいしいもん。酒造りにどんなお米を使ってもいい、何ならインディカ米とか。あ、それは違うか。でもやってみるといいかも知んないよ?

秋田県外にもおいしい酒はたくさんあって、山形なら〈くどき上手〉、福島だと〈写楽〉、青森なら〈田酒〉でしょう。宮城だったら〈墨廼江〉だし、岩手は〈あさ開〉がある。この「どこどこだったら✳︎✳︎ね」ってのが、なぜか秋田には「ない」の。それだけうまい酒がもう乱立してるってことだろう。店が秋田の酒だけでいっぱいになるわけだ。

でも、たまに「秋田県外の酒が飲みたい」って思いも募ってくる。例えば大阪は池田の〈呉春〉とか〈秋鹿〉ね。〈呉春〉は最低ランクのがいちばん好き。灘だったら〈仙介〉や〈道灌〉が忘れられない。それとか高知の〈酔鯨〉や〈美丈夫〉とか〈司牡丹〉もいい。長野だったら〈明鏡止水〉か〈夜明け前〉ね。

こうなるともういけない、ネットで「全国の地酒が飲める店 秋田」とか検索する。でも「秋田以外の地酒」でやっても秋田の酒しか売ってない店しか出てこない。そんなこんなでやっと探り当てたのが北秋田市の〈佐金商店〉と秋田市〈佐々辰酒店〉だった。前者はやはり遠い。後者は「買い物ついで」とか「食堂巡りのついで」に利用できる範囲にある。

でも〈佐々辰酒店〉は店主のクセが強すぎるので有名らしい。酒が好きすぎて、を通り越した接客をするみたい。〈新政〉があるなら普通に売ればいいものを、客と珍問答した挙句に「あなたには売れない」みたいな展開になることもあるとか。え、この時代に一介の小売酒店がそこまでやる? なんか逆に面白いんだけど、私だったらハッタリなしで店主と渡り合うことができる。

だって小売酒屋の跡取り息子ですもん。あ「だった」か、今となってはね。まあ、どうだっていいけど、とにかく秋田県外の酒が飲みたいの。というわけで添川の〈あさひや〉でおいしいラーメンを食べた後に行きましたよ。〈ラーメンマシンガン〉とか〈多むら〉、〈にぼすけ〉や〈時代屋〉がある通りね。ラーメン好きな人ならおわかりかと思う。今はまだ行かないけど。こってり濃厚ブームが終わったらね。

で、その通りの一角に佐々辰酒店がある。この通りは全部なんだけど駐車スペースはそんなにない。店主の性格上(?)人が殺到することはないと思うけど、車は2〜3台までです。入店すると例の名物店主は不在のようで、ちょっと拍子抜け。奥様と思われる人が応対してくれた。「何をお探しですか?」に対して「県外の日本酒が欲しいんです」と。

「初めての方ですね、ならこちらへどうぞ」と、向かって左奥の扉を開けてもらうと……まあ何と、県外の日本酒がびっしりと、まるでワインの保存庫みたいに並んでいるではないか! いやあり得ない、この光景が秋田で見られるとはね。いやもう見ているだけでウキウキするね。なんだか信じられない光景だ。ふだん飲んでいるのからすると段違いの価格だけど、普通酒レベルを手に取った。

〈墨廼江〉の本醸造である。普段の感覚だと、このレベルで充分なはず。それが高級酒と混ざって適切な温度で保存されている。本醸造だと常温で大丈夫なはずで、そのための火入れとアル添なんだけどね。わかっていてもそうする、この店主の酒に対する思いがもう、痛いほど伝わってくる。そうなんだ、こういう店っていまどき本当に珍しい、てかあり得ない感じ。

家に帰って大事に保存された〈墨廼江〉本醸造を開ける。そうだこの感じ、大切なものを大事に取り扱う感じを久しぶりに味わった気がする。シュッ、と音がしてポン、と抜ける、本醸造なのに。「本辛/辛口」とあるように飲むと、たしかに甘味は抑えられているのだが、飲み応えはある。これが一升瓶=2000円で買えるなんて信じられない。関西にいた頃の感覚でもそうザラにない。

ああやっぱり〈墨廼江〉はいいなあ。もうこれで申し分ないんだけど、若干の重みがある。これは「飲み応え」として理解できるもので秋田にもある。日本酒の「軽い」とか「重い」は飲んでみなくてはわからないもので、実際に飲んだ結果なんとなく「わかる」ものなんです。例えば北陸の酒は秋田に比べて「軽い」気がする。

甘味が少なくて、しかも軽みがあって香りが立つのが〈酔鯨〉で、舌に「ビリっと」くる感じがたまらない(クラスによる)。秋田の酒は「飲み応え」はあるが重さに通じ、香りは控えめの甘口だけど酸味とのバランスが良く飲みやすい、そんな傾向があるように思う。「飲み応え」を重視するからこそ秋田以外の酒に手を出さないのかな。

これは好みで、良い悪いの問題ではないのでくれぐれも誤解なきようお願いしたい。〈墨廼江 本醸造〉は辛口とか本辛とか書いてあるけど、こういうタイプ、秋田にないからね。どうして、と訊かれても困る。ないものはない、としか言いようがない。で、秋田の酒しか売らないのは地産地消の精神なのか「オラホの酒が一番だべ」なのか、まだよくわかんない。


【付記】
秋田の酒しか売らない、ということは「秋田に行けば秋田の酒が買える」ので、県外の人にはわかりやすいですね。だけどたまに県外の酒が飲みたくなる余所者にとってはキツい。それにしても〈佐々辰酒店〉は素晴らしく、県外酒の品揃えは圧倒的と言えましょう。

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No title

やはり、そちらはたまにうまい酒をと思うと日本酒なんですね。
こっちは、やはり泡盛です。
たまに、満座が飲みてえなあとか、
今日は轟の淡麗の気分、とか。
酒も、僕の場合、マニアックなので、あまり当地にはないんです。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、コメントありがとうございます。
秋田はなぜかご当地の酒しか置いていませんので、
他郷の酒が飲みたくなるんです。

地産地消の精神もあるでしょうし、
オラホの酒が一番、なのかもしれません。
泡盛の古酒、一度飲んでみたいです。

一部の例外を除いて、何処にも県外の酒がないのは難儀デスね~。
それはそうと、長野の地酒といえば昔「七笑」を度々呑んでました♪「真澄」も好かったけど、今は滅法高くなりましたね···しかし「新政」は気になるなぁ。

Re: つっちさん

つっちさん、コメントありがとうございます。
もう秋田に来て4年以上経つのに、
何をいまさら、と自分で思わぬでもありません。
そうそう〈七笑〉や〈真澄〉がありましたね。
新政は正規販売店でも入荷待ちがあるそうで、
なかなか入手できない酒になってしまいました。
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