白鶴「まる」

大阪や阪神間に住んでいた頃、紙パック酒はもっぱら料理用としてしか買わなかった。一部を除いて紙パック酒なんて飲めたもんじゃない、という思い込みがあったのだ。だが秋田に来てから紙パック酒でもおいしいことがわかりたいへんお世話になった。特によく飲んだのは北鹿という大館市にある酒造会社によるもので、紙パックの純米酒に惚れ込んでしまった。
YouTubeで料理関係の動画を見ていると「魚屋の森さん」が兵庫は灘の白鶴酒造と組んで〈白鶴 まる〉の宣伝動画を出しているではないか。白鶴酒造には悪いけど、あまり良い印象はなくて、灘の酒ならもっと小規模で新しい試みをしている酒蔵を贔屓にしていた。純米酒や吟醸酒を知る以前、社会人になったばかりの飲み会で出された大手酒造会社の酒がひどかったから。
まずいと思ったのはまだ日本酒に慣れてなかっただけ、とも言える。だけど森さん、本当においしそうに〈まる〉を飲んでるなあ。芸能人が出ているCMと同じで、本当はそんなにうまいわけではないが立場上本当のことを言うわけにもいかず、内心しぶしぶやってるんじゃないか、などと下衆な勘繰りを入れてしまいそうになるほどだ。本当にそんなにうまいのかな?
でも「魚屋の森さん」のおかげで白鶴酒造の工場見学をさせてもらったし、白鶴公式チャンネルも見ることになった。同社が酒米の向上のために米の栽培にも取り組んでいること、酒造りにいかほど情熱を注いでいるかなど、思い込みだけでよく思っていなかった白鶴酒造に対する偏見が少しずつ薄れていった。別に〈まる〉に恨みがあるわけじゃないしね。
というわけで紙パック焼酎が切れたのを機会に〈まる〉を買ってみましたよ。飲んでみると……うむ、なかなかうまいじゃないか。もちろんこの「うまい」は良質の純米吟醸酒を飲んだ時に感じる香りと味わいに比較するべきではないが、本当にそこそこうまいのだ。灘の酒とは思えぬまろやかさがあり、飲み終わった後に鼻に抜ける香りはほのかだが心地よい。
個人的にはもう少し酸味があって飲みごたえがあるほうが……ってもう好きな酒の傾向が秋田的になってやしないか? 秋田人からすると「北陸の酒は水みたい」だそうだ。〈まる〉は灘の酒なんだけど、飲み口はもう伏見の酒みたいで、〈まる〉を「伏見の酒です」とブラインドで出してみたら、見抜ける人がどれくらいいるだろうか、なんて想像してしまう。
思ったよりうまかった〈まる〉だけどいわゆる普通酒で、米と米麹で作った酒に醸造用アルコールが添加されたもの。この「アル添」を認めない向きも少なくないが歴史的には常温保存するしかなかった時代に保存性を高めるために焼酎(おそらく米焼酎)が添加されたので、現在でも常温保存が基本の普通酒なので主な目的は保存性の向上にある、と思う。
惜しむらくは醸造用アルコールの他に糖類と酸味料が添加されていることで、将来的にはこれらの添加がなくてもおいしく飲めるよう改善してもらいたいものだ。糖類とは異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)と思って間違いない。この果糖(フルクトース)は砂糖より廉価で生産できるため、じつに多くの食品や調味料に使われている。果糖は肝臓で代謝されるから要注意。
〈まる〉をよりおいしく味わうには、それより廉価の酒を味わってみることね。ウィスキーでも1000円スコッチをそんなにおいしいとは思わないけど、より廉価のウィスキーまがいのを飲んだ後に飲めば「え、ホワイトホースってこんなにうまかった?」となるし、フェイマス・グラウスだともうびっくりすると思う。これ人呼んで「舌のリセット」という。
YouTubeで料理関係の動画を見ていると「魚屋の森さん」が兵庫は灘の白鶴酒造と組んで〈白鶴 まる〉の宣伝動画を出しているではないか。白鶴酒造には悪いけど、あまり良い印象はなくて、灘の酒ならもっと小規模で新しい試みをしている酒蔵を贔屓にしていた。純米酒や吟醸酒を知る以前、社会人になったばかりの飲み会で出された大手酒造会社の酒がひどかったから。
まずいと思ったのはまだ日本酒に慣れてなかっただけ、とも言える。だけど森さん、本当においしそうに〈まる〉を飲んでるなあ。芸能人が出ているCMと同じで、本当はそんなにうまいわけではないが立場上本当のことを言うわけにもいかず、内心しぶしぶやってるんじゃないか、などと下衆な勘繰りを入れてしまいそうになるほどだ。本当にそんなにうまいのかな?
でも「魚屋の森さん」のおかげで白鶴酒造の工場見学をさせてもらったし、白鶴公式チャンネルも見ることになった。同社が酒米の向上のために米の栽培にも取り組んでいること、酒造りにいかほど情熱を注いでいるかなど、思い込みだけでよく思っていなかった白鶴酒造に対する偏見が少しずつ薄れていった。別に〈まる〉に恨みがあるわけじゃないしね。
というわけで紙パック焼酎が切れたのを機会に〈まる〉を買ってみましたよ。飲んでみると……うむ、なかなかうまいじゃないか。もちろんこの「うまい」は良質の純米吟醸酒を飲んだ時に感じる香りと味わいに比較するべきではないが、本当にそこそこうまいのだ。灘の酒とは思えぬまろやかさがあり、飲み終わった後に鼻に抜ける香りはほのかだが心地よい。
個人的にはもう少し酸味があって飲みごたえがあるほうが……ってもう好きな酒の傾向が秋田的になってやしないか? 秋田人からすると「北陸の酒は水みたい」だそうだ。〈まる〉は灘の酒なんだけど、飲み口はもう伏見の酒みたいで、〈まる〉を「伏見の酒です」とブラインドで出してみたら、見抜ける人がどれくらいいるだろうか、なんて想像してしまう。
思ったよりうまかった〈まる〉だけどいわゆる普通酒で、米と米麹で作った酒に醸造用アルコールが添加されたもの。この「アル添」を認めない向きも少なくないが歴史的には常温保存するしかなかった時代に保存性を高めるために焼酎(おそらく米焼酎)が添加されたので、現在でも常温保存が基本の普通酒なので主な目的は保存性の向上にある、と思う。
惜しむらくは醸造用アルコールの他に糖類と酸味料が添加されていることで、将来的にはこれらの添加がなくてもおいしく飲めるよう改善してもらいたいものだ。糖類とは異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)と思って間違いない。この果糖(フルクトース)は砂糖より廉価で生産できるため、じつに多くの食品や調味料に使われている。果糖は肝臓で代謝されるから要注意。
〈まる〉をよりおいしく味わうには、それより廉価の酒を味わってみることね。ウィスキーでも1000円スコッチをそんなにおいしいとは思わないけど、より廉価のウィスキーまがいのを飲んだ後に飲めば「え、ホワイトホースってこんなにうまかった?」となるし、フェイマス・グラウスだともうびっくりすると思う。これ人呼んで「舌のリセット」という。
【付記】
〈まる〉はおそらく突出した個性を売りにしているのではなく、万人受けする路線を狙っているのではないかと想像します。尚「舌のリセット」はこの厄介なご時世ですので皆々様には下方修正で実行なさることをお勧めする次第です。
〈まる〉はおそらく突出した個性を売りにしているのではなく、万人受けする路線を狙っているのではないかと想像します。尚「舌のリセット」はこの厄介なご時世ですので皆々様には下方修正で実行なさることをお勧めする次第です。
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