スタン・ゲッツ 『スタン・ゲッツ・プレイズ』

Stan Getzs / Stan Getzs Plays (1952)
stan getz plays
1. Stella By Starlight
2. Time On My Hands
3. 'Tis Autumn
4. The Way You Look Tonight
5. Lover Come Back To Me
6. Body And Soul
7. Stars Fell On Alabama
8. You Turned The Tables On Me
9. Thanks For The Memory
10. Hymn Of The Orient
11. These Foolish Things (Remind Me Of You)
12. How Deep Is The Ocean




よし、これについて書こうと思い立ち、CDをセットしてスタートボタンを押し、キーボードに向かうのだけど、出てくる音楽につい聞き耳を立ててしまい、手が止まってしまう。そんなCDがこの『スタン・ゲッツ・プレイズ』だ。

とにかく、音の一つ一つ、隅々にまで神経が行き届いていて、「この人は本当に繊細な人なんだなあ」と思わず唸ってしまう。スタン・ゲッツ本人がどんな人かは知らないけれど、このCDから聞き取れる印象はそんな感じだ。
ミディアム・テンポの(1)(2)(10)(12)、アップ・テンポの(4)(5)以外はすべてスローバラード。しかもよく知られたスタンダード曲ばかりである。

テナー・サキソフォンのスタン・ゲッツにギター、ピアノ、ベース、ドラムを擁したワン・ホーン・クインテットのスタイルで、とにかくスタンが吹きまくる。(2)(10)(12)などでほんの短いギターとピアノのソロが入るくらいで、あとはスタンがサックス一本で吹き切っている。どこからそんなにたくさんのアイディアが出てくるのだろうと感心せずにはいられない。

スタンはテナー・サキソフォンを吹いているのだが、まるでオーボエを思わせるような甘くとろける高音がひらりと舞い上がり、次の瞬間には腹に響くような低音まで自在にスケール(音階)を使い切る。伸びきった高音部は、あたかもアート・ペッパーがアルト・サキソフォンを吹いているかのような錯覚を持ってしまうほどだ。

アップ・テンポでの正確なパンクチュエーション、切れ味鋭いタンギングも聞き惚れるしかない。いわゆるモダン・ジャズといわれる部類の演奏を思わせ、まったく古さを感じさせない。ジャズをあまり知らない人が聞いたとしても、これが1952年の録音だとはだれも信じないだろう。このCDがSACDとしても販売されていることを見てもそれはうなずけるのではないだろうか。

愛児と思われる子どもとスタン・ゲッツが写っているジャケットも素敵で、買おうとするときに間違えることもないだろう。
スタンダードのバラードが多く、アップテンポでもそんなにうるさく感じられないので、夜、静かに聴くには本当にもってこいのCDだ。スタン・ゲッツをまったく持っていないという人にも自信を持って勧められる一枚だと思う。


【付記】
● この『スタン・ゲッツ・プレイズ』でベースを弾いているビル・クロウという人は、ジャズにかんする本『ジャズ・アクネドーツ』(新潮文庫)や『さよならバードランド』(新潮文庫)を書いていて、どちらも村上春樹が翻訳しています。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こんばんは~。

ジャズ初心者の私。
You Tubeで、スタン・ゲッツで検索して、このCDではないけれど
少し聴いてみました。
悲しいかな、まだおっしゃるようなその素晴らしさが本当に実感できるとは
言えないのが申し訳ないです。
それは私が、他の演奏とかを全く知らないからで、無知というのは
情けないものです。
でも、素人でも、その熱気や、丁寧さ、というのはなんとなくわかります。

ちょうど私も、歌について、同じようなことを書こうとしていました。
『音の一つ一つ、隅々まで神経が行き届いている繊細さ』
まさに、その表現がぴったりするような歌声を最近になって聴きました。
それは、ナット・キング・コールの歌う「キサス・キサス・キサス」。
昔若い頃聞いていた時には気づかなかった。
でも最近になって聴いてみて、その歌の表現の繊細さに舌を巻きました。
女心を優しく撫でるよう。

近いうち、私もこのことについて書くつもりですので、
よろしければお読みくださいね。

すてきな記事でした。ありがとうございます。

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、コメントありがとうございます。
乙山も、初心者に毛が生えたようなものです。
ジャズのCDは膨大な量がありますからね……
その中でも、好きなものだけ勝手に選んで書いているわけですが、
知らないもののほうが圧倒的に多くて、どうがんばっても追いつけないのが本当のところです。

ナット・キング・コールは歌手としてよく知られていますが、もともとは
ピアニストだったそうで、レスター・ヤングというテナー・サキソフォン奏者のアルバム
『レスター・ヤング・トリオ』にピアノとして参加しているんですよ。
サックス、ドラム、ピアノでベースレスという変則的な構成のため、低音部をカヴァーするためか、
左手が全開状態で弾きまくっています。
ナット・キング・コールは歌も素晴しいですが、ピアノも侮れません。

初めて聴いてあまりわからないのは、乙山でもよくあることです。
ジャズではないのですが、シベリウスの交響曲なんて、初めて聴いたときは
「できの悪い映画音楽」(失礼多謝)みたいだな、と思っていました。
何度か聴いて、ずいぶん後になって少し腑に落ちるようになりました。
記事楽しみにしております。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/08 (5)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)