fc2ブログ

Meaning of accident

2020年12月26日、雪はまだ残っているもののさほど酷くない道路で帰途の車を走らせていた。午前10時半過ぎ頃だったと思う。比較的走りやすいとはいえ、やはり念には念を入れて時速60キロ以上にならぬよう気を付けて走行した。気を付けすぎだったかもしれず、後続車が2台になった。帰路の半分以上を越え、夜勤明けの疲労を癒すつもりだった。

開けた広い道路に出てしばらく走っていると対向車が見えた。彼らもやはり注意して速度落としめで走っていたが、後続車が痺れを切らして追い抜きをかけるのが見えた。距離はわりとあったのだが何か嫌な予感がして、軽くブレーキを踏んだ、はずだった。なのにその瞬間、それまで何事もなく走っていたタイヤが、なぜか一部凍った路面に捕まった。

私の乗った車は左方向に流れ、ハンドル操作は効かなくなった。その広い道路には冬の間、防風と防雪を兼ねて金属製のフェンスが施されており、それに衝突する覚悟をした。ところがどういうわけか車はフェンスとフェンスの隙間を通過し、斜面沿いに段差のある田んぼに突っ込んだ。激しい衝撃とともにエアバッグが出て、車は止まった。

あまりのことに呆然となってしまったが、後続車の人が車を停め、助けに来てくれたようだった。「大丈夫ですか?」と手を差し伸べて斜面を這い上がるのを助けてくれ、すぐ警察に連絡したほうがいいですよ、と。警察に連絡を取り、場所と簡単な状況を説明した後、自動車保険の業者にも連絡した。「寒いから中へどうぞ」と車の中で警察を待った。

「まさかこの状況で追い抜きかけるとは……ドラレコに映ってるんで証拠はありますよ」と。見ず知らずの人間にここまでして下さるとは……何とお礼申し上げたらいいのか、と恐縮した。程なく警察が到着し、パトカー内で免許証や車検証の提示、事情聴取やら検分を済ませると、警察が手配してくれた救急車で病院に搬送されることになった。

担架に横たわると首に固定具が装着され、毛布をかけてくれた。「**さん、大丈夫ですか? 痛い所はないですか?」には「大丈夫」と応えたが、胸をハンドルか何かで強打したようで不意に咳が出てくる。最寄りの市立みなと病院かと思っていたが、秋田市内の厚生医療センターに搬送するという。血圧、落ち着いてきましたね、最初200超えてました、と。

同センターに着くと担架ごと車付きの台座に乗せられて移動、いつかテレビドラマで見たような光景が展開された。血圧計と点滴が付けられ、しばらく待たされた後、CTスキャンや胸部レントゲン撮影、採血などが行われた。スキャン画像の処理や解析に時間がかかるのか、かなりの時間ベッドに横たわっていが、どうも尿意を催してきた。

そもそも家に帰ってトイレに行こうと思っていたのである。それを寒い中、外に出たりしたし搬送中もけっこう寒かった。その……トイレ行っていいですか? と看護師に訊くと「少々お待ちくださいね」と。しばらくして医師が来たので看護師が伝えると「トイレ? ダメですよ、じっとしてなきゃ」という。看護師は「ここで済ませましょう」と。

いやホント体はまったく大丈夫なんだけど! だが看護師は「ズボン下ろせます?」という。もう観念するしかないのでそうすると「下着もお願いします。足、少し開いてくださいね。あ、じっとして動かないでください」とな。何やら冷たい物体が太もものあたりに当てがわれ、「コレを、ここに、こうやって……楽にして出してください」と。

最後に医師がCTスキャンの画像を見せてくれ、胸骨にひびが入っていますね、と説明してくれた。ギプスで固定する必要はなく、安静にしていたら2週間くらいで治る、そして鎮痛剤と胃薬、湿布薬を処方してくれた。会計でいくばくかの預かり金を支払うと、午後4時半頃になっており辺りはもうほぼ真っ暗になっていた。

厚生医療センターを出ると周囲には本当に「何もない」状態である。スマホで最寄りのコンビニを検索すると3.5キロ、とあって絶望したくなる。こちらは車に乗った状態で通勤する程度の防寒服しか着ていない。バスが停まっていたので運転手に訊くと、JR秋田駅行き、と。それに乗り、JR秋田駅からは男鹿線に乗ってJR船越駅で下車した。7時過ぎだった。

船越駅にはディーラーが代車を用意して待っていてくれた。こういうことがあった後、すぐに運転するのは心がめげそうになるけど、それが車社会というものなのだ。帰り道は慎重に慎重を重ねた運転をし、途中でコンビニに寄って食料やら酒などをしこたま買い込み、家に帰るとまるで何かに復讐するかのごとく飲んで、食って、寝た。

保険でレンタカー特約があるというのでディーラーに代車を返し、レンタカーに乗り換えた。「車の状態見たらもう……レッカーの業者、言ってましたよ、あれは段差に突っ込んだなんてものじゃない、5メートルの落下だ、って。ドライバーは骨にひびが入っただけで傷ひとつないって……とても信じられない、って。本当に何ともないですか?」とディーラーはいう。

「だけどあの狭いフェンスの隙間を斜めから……よく抜けましたね。それに雪が積もってたのも良かった。雪がなかったら地面直撃でしたからね。奇跡ですよ、只野さん何かに守られてるなって思いましたよ」と続けた。その翌日、私は何事もなかったかのように出勤し、ごくふつうに生活していた。何か重い物を運ぼうとすると胸は痛んだけど。

車は全壊判定が出て車両保険と一時見舞金、通院時の必要経費などが支払われ、新しい中古車を買うことができ、私のもとにいくばくかの現金が残った。それまで大丈夫だった道路なのに、なぜあの一瞬だけ氷につかまったのか、なぜ狭いフェンスの隙間をすり抜けることができたのか、その答えはわかんないし、事故の意味もやはりわからないのである。


【付記】
不思議な出来事でした。後で会社から「通勤時の事故は報告義務がある」とかこっぴどく叱られましたけど。

関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

まあ、大事至らなくてよかったです。
ご無理をなさらぬよう。
通勤時の事故は労災の対象になるんじゃないかな。

僕は背骨を圧迫骨折したとき、半月唸っていました。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、コメントありがとうございます。
いや本当、かなり慎重に運転していたんですが、
なぜかタイヤがつかまってしまいました。
ほぼ2週間で治ってしまったようで、
再診を勧められたのですが、行っていません。
根岸さんもお大事になさってくださいね。

No title

 そうでしたか。ご無事でなによりです。

 いるんですよね、冬道でゆっくり走っていると車間距離を取らずに
ピッタリつけてきたりするやつが……

 凍結路面でのブレーキの怖さは、よ~く知っています。かなり減速
していても、滑るときはそのままツーッと滑ります。仕事があるから
しょうがないけれど、できれば冬は運転したくないですよね。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、コメントありがとうございます。
そこに来るまで本当に大丈夫だったんです。
なぜその一点だけ、というか私の車だけつかまったのか、
いまだによくわかんないんですね。
後続車はなんともなかったんですから。
だけど私は擦り傷ひとつなくて、
周りの人が不思議で仕方がないって感じでした。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
11 | 2022/12 | 01
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
人気ブログランキング

人気ブログランキングへ

カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2022/12 (4)

2022/11 (15)

2022/10 (16)

2022/09 (15)

2022/08 (16)

2022/07 (19)

2022/06 (15)

2022/05 (16)

2022/04 (15)

2022/03 (15)

2022/02 (23)

2022/01 (16)

2021/12 (24)

2021/11 (15)

2021/10 (16)

2021/09 (15)

2021/08 (16)

2021/07 (15)

2021/06 (15)

2021/05 (18)

2021/04 (15)

2021/03 (16)

2021/02 (14)

2021/01 (10)

2020/12 (8)

2020/11 (9)

2020/10 (9)

2020/09 (8)

2020/08 (9)

2020/07 (9)

2020/06 (9)

2020/05 (9)

2020/04 (8)

2020/03 (9)

2020/02 (8)

2020/01 (9)

2019/12 (8)

2019/11 (9)

2019/10 (8)

2019/09 (5)

2019/08 (4)

2019/07 (9)

2019/06 (8)

2019/05 (8)

2019/04 (9)

2019/03 (9)

2019/02 (8)

2019/01 (8)

2018/12 (8)

2018/11 (9)

2018/10 (9)

2018/09 (8)

2018/08 (9)

2018/07 (8)

2018/06 (5)

2018/02 (7)

2018/01 (9)

2017/12 (9)

2017/11 (8)

2017/10 (9)

2017/09 (9)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)