『スローなブギにしてくれ』
『スローなブギにしてくれ』(1981年、日本映画、130分)

原作:片岡義男
監督:藤田敏八(ふじたとしや)
出演:浅野温子、古尾谷雅人、山崎努ほか

原作:片岡義男
監督:藤田敏八(ふじたとしや)
出演:浅野温子、古尾谷雅人、山崎努ほか
見たいと思っているが、本で言えば絶版状態になっている映画もわりとあって、『スローなブギにしてくれ』もその一つだった。同名の主題歌がとても印象的で、YouTubeで予告編だけ見て、本編を見たいなあと思っていた。だが蔦屋で見かけることはなかったし、Amazonで販売していることもなかった。
なので〈GEO〉というレンタルメディア店でそれを目にした時、迷わず手に取ってしまった。印象的な主題歌とともに夕焼けに映える街が映される映像はなかなかで、期待を持たされる。白のムスタングに中年男(山崎努)と子猫を抱いた若い女(浅野温子)が乗っている。
ムスタングの男は女に名前を訊くと、さち乃よ、と答える。さち乃が男に名前を訊くと、ムスタング、という。後ろからオートバイに乗った若者・ゴロー(古尾谷雅人)がムスタングを追い抜こうとするが、ムスタングの男は邪魔をして抜かせようとしない。男はさち乃の体を触るが拒否し、男はさち乃と猫を放り出す。
ムスタングは走り去り、後から来たゴローに拾われるような形で、ゴローとの生活が始まる。ムスタングの男は既婚者で娘がいるが、彼らとは別に旧米軍ハウスで寝起きしている。そこには女と若い男がいて、ムスタングの男と若い男のどちらの子どもか不明の赤ん坊がいて、女の妹が世話をしていた。
若い男は夜にジョギングするのを日課にしていたが、その夜、ハウスにかかって来た電話は彼の死を告げるものであった。ムスタングの男は車の中で若い男の死を悲しむが、そこにさち乃の財布があるのを見つけ、彼女の自宅へ赴き、夫と別居しているが夫の借金の取り立てに追われるさち乃の母親の姿を見る。
とまあ、こんな感じで進んでいくんだけど、要するに家出女子高校生がフリーターの若い男となり行きで関係を持つんだけど男が未熟で女は傷つき、その隙に中年男が割り込んでくるって話だよね。こんなの、原作にはなかったような気がするな。原作はもっと断片的で、全部書かないやり方だった。
山崎努の演技が際立ち過ぎていて、古尾谷雅人の存在感が希薄。これは仕方がないかもしれないが、主役(?)の浅野温子まで食いかけていて、青春映画というよりは中年映画ですね。原作の持ち味である「軽さ」がなく、重たくて湿っぽい感じがするのは、良くも悪くも監督のセンスが出過ぎているせいかもね。
でも、画面は綺麗ですね。上映用のポジティヴ・フィルムをそのままデジタル化したのではなくて、なんらかの「処理」をしたのだろうと思う。1970年代の昭和がそのまま残されていて、これは見ていてちょっと嬉しい感じがした。原作(と主題歌)の感覚に現実が追いついていない感じで、本当はもっと格好良くお洒落に作りたかったのかもしれない。
あとは浅野温子ですかね。テレビドラマのイメージが強い彼女なんだけど、そちらを先に見てから本作を見ると、なんとまあ、可愛いことだろう。同じ角川映画でも、薬師丸ひろ子にはさせられなかったシーンもばっちりこなしているし、サービスショット(?)もわりとあるんですね。
結局、彼らがどういう着地をするか、が見所なのだろう。なので途中で放り出すことはなかったけど、最後の手前で主題歌が流れた時にエンドロールが出て欲しかったな、とか思う。せっかくいい主題歌なんだから、主題歌で始まって主題歌で閉じるようになっていて欲しかったわけですよ。
なので〈GEO〉というレンタルメディア店でそれを目にした時、迷わず手に取ってしまった。印象的な主題歌とともに夕焼けに映える街が映される映像はなかなかで、期待を持たされる。白のムスタングに中年男(山崎努)と子猫を抱いた若い女(浅野温子)が乗っている。
ムスタングの男は女に名前を訊くと、さち乃よ、と答える。さち乃が男に名前を訊くと、ムスタング、という。後ろからオートバイに乗った若者・ゴロー(古尾谷雅人)がムスタングを追い抜こうとするが、ムスタングの男は邪魔をして抜かせようとしない。男はさち乃の体を触るが拒否し、男はさち乃と猫を放り出す。
ムスタングは走り去り、後から来たゴローに拾われるような形で、ゴローとの生活が始まる。ムスタングの男は既婚者で娘がいるが、彼らとは別に旧米軍ハウスで寝起きしている。そこには女と若い男がいて、ムスタングの男と若い男のどちらの子どもか不明の赤ん坊がいて、女の妹が世話をしていた。
若い男は夜にジョギングするのを日課にしていたが、その夜、ハウスにかかって来た電話は彼の死を告げるものであった。ムスタングの男は車の中で若い男の死を悲しむが、そこにさち乃の財布があるのを見つけ、彼女の自宅へ赴き、夫と別居しているが夫の借金の取り立てに追われるさち乃の母親の姿を見る。
とまあ、こんな感じで進んでいくんだけど、要するに家出女子高校生がフリーターの若い男となり行きで関係を持つんだけど男が未熟で女は傷つき、その隙に中年男が割り込んでくるって話だよね。こんなの、原作にはなかったような気がするな。原作はもっと断片的で、全部書かないやり方だった。
山崎努の演技が際立ち過ぎていて、古尾谷雅人の存在感が希薄。これは仕方がないかもしれないが、主役(?)の浅野温子まで食いかけていて、青春映画というよりは中年映画ですね。原作の持ち味である「軽さ」がなく、重たくて湿っぽい感じがするのは、良くも悪くも監督のセンスが出過ぎているせいかもね。
でも、画面は綺麗ですね。上映用のポジティヴ・フィルムをそのままデジタル化したのではなくて、なんらかの「処理」をしたのだろうと思う。1970年代の昭和がそのまま残されていて、これは見ていてちょっと嬉しい感じがした。原作(と主題歌)の感覚に現実が追いついていない感じで、本当はもっと格好良くお洒落に作りたかったのかもしれない。
あとは浅野温子ですかね。テレビドラマのイメージが強い彼女なんだけど、そちらを先に見てから本作を見ると、なんとまあ、可愛いことだろう。同じ角川映画でも、薬師丸ひろ子にはさせられなかったシーンもばっちりこなしているし、サービスショット(?)もわりとあるんですね。
結局、彼らがどういう着地をするか、が見所なのだろう。なので途中で放り出すことはなかったけど、最後の手前で主題歌が流れた時にエンドロールが出て欲しかったな、とか思う。せっかくいい主題歌なんだから、主題歌で始まって主題歌で閉じるようになっていて欲しかったわけですよ。
【付記】
⚫︎ ずっと見たいと思っていた映画を見ることができてすっきりした反面、何かすっきりしないものが残ってしまう本作でした。映画の初めに「I love 片岡World」と出るのですが、片岡ワールドというより、監督の藤田ワールド以外の何物でもありません。
⚫︎ ずっと見たいと思っていた映画を見ることができてすっきりした反面、何かすっきりしないものが残ってしまう本作でした。映画の初めに「I love 片岡World」と出るのですが、片岡ワールドというより、監督の藤田ワールド以外の何物でもありません。
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こんばんは。
映画もお好きなようですね。
私の子供から青春期は、娯楽といえば映画しかなかったので、
時間とお金の余裕がある時は、大概映画館で過ごしていました。
殆どチャンバラ映画と、西部劇でしたが。
雀百までではありませんが、齢を経てもスペクタクル、戦争、アクション。
ジャンルはその範囲を出ていません。
時々「日の名残」のように、静かなドラマも観るようになりましたが。
ただ、年々に映画を観るのも億劫になって、こりゃいかんと思ってます。
そういえば現在、1000円の廉価版DVDが出ています。
リズの「クレオパトラ」また「ベンハー」から始まって、
新しいところでは「アバター」まで、約500以上の作品が揃っているようです。
私も月に二作ほど購入して、今は40作品ほどになりました。
中でも「ゴッドファーザー」三部作は嬉しい買い物でした。
これら廉価DVDはレコード店で陳列されているはずです。
もっとも映画はレンタルで十分という方が多いでしょう。
でも私は気に入った本や映画は、何度もしつこく読んだり観たりするほうなので、
映画に関しても所有しておきたい人なのですが。
私の子供から青春期は、娯楽といえば映画しかなかったので、
時間とお金の余裕がある時は、大概映画館で過ごしていました。
殆どチャンバラ映画と、西部劇でしたが。
雀百までではありませんが、齢を経てもスペクタクル、戦争、アクション。
ジャンルはその範囲を出ていません。
時々「日の名残」のように、静かなドラマも観るようになりましたが。
ただ、年々に映画を観るのも億劫になって、こりゃいかんと思ってます。
そういえば現在、1000円の廉価版DVDが出ています。
リズの「クレオパトラ」また「ベンハー」から始まって、
新しいところでは「アバター」まで、約500以上の作品が揃っているようです。
私も月に二作ほど購入して、今は40作品ほどになりました。
中でも「ゴッドファーザー」三部作は嬉しい買い物でした。
これら廉価DVDはレコード店で陳列されているはずです。
もっとも映画はレンタルで十分という方が多いでしょう。
でも私は気に入った本や映画は、何度もしつこく読んだり観たりするほうなので、
映画に関しても所有しておきたい人なのですが。
Re: こんばんは。南亭さん
南亭さん、コメントありがとうございます。
仰るように、昔は小さな町でも映画館があったと思うんです。
いつ頃からか、映画館がなくなっていきましたね。
テレビの普及で、お茶の間でも映画を見られるようになった、
そのせいかもしれませんが、今では映画番組さえ少ないですね。
テレビを見ない人も増えてきたようです。
廉価版DVD、私もたまにお世話になっています。
パブリック・ドメイン映画だと、もっと安くなっていますね。
昔の、まだ見ていない映画が多すぎて困る(?)んです。
最新の話題作もいいのでしょうが、
どうしても昔の映画を見たくなるのです。
そうして、何年も前に話題になったものを、
今更、という感じで見ることにしています。
良い映画は、また見たくなりますよね。
ですが私は、身軽でいる必要がありますので、
どうしてもいろいろ所有するわけにはいかなくて……
そのうちなんとか、などと思案中であります。
仰るように、昔は小さな町でも映画館があったと思うんです。
いつ頃からか、映画館がなくなっていきましたね。
テレビの普及で、お茶の間でも映画を見られるようになった、
そのせいかもしれませんが、今では映画番組さえ少ないですね。
テレビを見ない人も増えてきたようです。
廉価版DVD、私もたまにお世話になっています。
パブリック・ドメイン映画だと、もっと安くなっていますね。
昔の、まだ見ていない映画が多すぎて困る(?)んです。
最新の話題作もいいのでしょうが、
どうしても昔の映画を見たくなるのです。
そうして、何年も前に話題になったものを、
今更、という感じで見ることにしています。
良い映画は、また見たくなりますよね。
ですが私は、身軽でいる必要がありますので、
どうしてもいろいろ所有するわけにはいかなくて……
そのうちなんとか、などと思案中であります。
No title
南佳孝の「Want you~~」という曲が頭に甦ってきますね。
映画自体は見ていないような気がします。
カドカワがのしていた時代ですよね。
映画自体は見ていないような気がします。
カドカワがのしていた時代ですよね。
Re: 根岸冬生さん
根岸さん、コメントありがとうございます。
ホント、主題歌が良すぎるのもどうなのかな、
そんな感じがしましたね。
> 映画自体は見ていないような気がします。
これ、たぶん「見なくてもいい映画」だと思いますよ。
浅野温子のファンならともかく、ですね。
ホント、主題歌が良すぎるのもどうなのかな、
そんな感じがしましたね。
> 映画自体は見ていないような気がします。
これ、たぶん「見なくてもいい映画」だと思いますよ。
浅野温子のファンならともかく、ですね。
スローな
懐かしいですね。当時はバブル突入前で混沌としていて、私も社会に出る前の若者でした。
当時から今でもこの曲はカラオケで歌っています。
スローなブギとは、ロッカバラードのことですよね。
映画は見ていません。おっしゃるように浅野温子さんのファンでもないので、みないだろうなと思います。
古尾谷さん、若くして亡くなる方の画像って、どこか影が薄い印象です。
当時から今でもこの曲はカラオケで歌っています。
スローなブギとは、ロッカバラードのことですよね。
映画は見ていません。おっしゃるように浅野温子さんのファンでもないので、みないだろうなと思います。
古尾谷さん、若くして亡くなる方の画像って、どこか影が薄い印象です。
Re: スローな;トニーさん
トニーさん、コメントありがとうございます。
> 当時から今でもこの曲はカラオケで歌っています。
えっ!
この曲、相当キーが高いですよね。
テナー(またはそれ以上)の人でないと、上まで出切らない感じです。
私、昔は歌えたかもしれませんが、いまは無理でしょうね。
> スローなブギとは、ロッカバラードのことですよね。
スローなブギ……なんだか難しいですよね。
そもそも「ブギ」に広がりがありすぎる気もしますし。
個人的には「スロー・テンポでシャッフル・リズムをベースにした音楽」と理解します。
どれくらいをスロー・テンポというのか、わかりませんが、
主題歌はわりと、当てはまっていると思います。
トニーさん、新たなスタート、期待してます!
> 当時から今でもこの曲はカラオケで歌っています。
えっ!
この曲、相当キーが高いですよね。
テナー(またはそれ以上)の人でないと、上まで出切らない感じです。
私、昔は歌えたかもしれませんが、いまは無理でしょうね。
> スローなブギとは、ロッカバラードのことですよね。
スローなブギ……なんだか難しいですよね。
そもそも「ブギ」に広がりがありすぎる気もしますし。
個人的には「スロー・テンポでシャッフル・リズムをベースにした音楽」と理解します。
どれくらいをスロー・テンポというのか、わかりませんが、
主題歌はわりと、当てはまっていると思います。
トニーさん、新たなスタート、期待してます!