ドモボイは、やはり存在した― 『アルテミス・ファウル』 シリーズ
オーエン・コルファー 『アルテミス・ファウル』 角川書店 (2002年)

【付記】
● 『アルテミス・ファウル』 は2002年に映画化が決定されたそうですが、未だそれらしい話をまったく耳にしません。乙山としては『ハリー・ポッター』シリーズの映画制作スタッフあたりが 『バーティミアス』 を撮ってほしいなと思っています。
● ドモボイを子ども向け図鑑や事典、または何かで見た、という方は少数であるにせよ、存在するのではないかと乙山は考えています。ドモボイがどういうものだったか、ご存知の方はどうか教えてください。


ドモボイ。
その不思議な名前を見たのは小学生低学年の頃だったと思う。正確な出典は定かでないが、図書コーナーに置いてある子ども向けの事典か何かだったのではないだろうか。
「世界の妖怪」とかなんとか、そんな項目の一つに、「ドモボイ」というのがあった。
「ドモボイ」がどういうものなのか、もう今となっては思い出すことができない。いいかげんなことを書いて恐縮だが、たしかヨーロッパのほうに伝わる妖怪か何かで、なにかフクロウかミミズクのような姿形をしていたのではないか(記憶違いかもしれません)。
事典に書かれていた文言も忘れてしまったけれど、ただもう恐ろしく、ヨーロッパの妖怪が日本に現れるはずはないにもかかわらず、子どもの私(乙山)は「ドモボイには気をつけないといけない」などと注意を払っていた。とくに夜寝る際、二階の子ども部屋に一人で上がって行かなければいけないときなど、本気でドモボイを警戒していた、と思う。子どもの私は、ドモボイの何をそんなに怖がっていたのだろう。
それから何年も経ち、ドモボイのことなど次第に忘れていったし、成長した私にとって、ドモボイは恐怖の対象ではなくなっていった。架空の存在であるドモボイより、現実の人間のほうがよっぽど怖かったりするわけですね。
酒の席か何かで、よほど親しくなった同年代の人たちにドモボイのことを尋ねても「なにそれ? 知らないなあ」という答えばかりが返ってくるうちに、私自身本当にドモボイなんてあったんだろうか、という気になってきた。
けれど、ドモボイという言葉だけは私の中に残り続けていたようだ。
というのも、『アルテミス・ファウル』シリーズを読んでいる中で、ドモボイという言葉を見つけ、「あっ」と思ったからだ。
前置きが長くなってしまったが、本書『アルテミス・ファウル』にはドモボイのことは出てこなくて、シリーズの何冊目か(曖昧な情報、多謝)でドモボイという言葉が出てきます。
話は、アイルランドの伝説的な犯罪一家に育った12歳の天才少年アルテミス・ファウルが、妖精の「ブック」をコンピューターを使って解読し、妖精の黄金を手に入れようともくろみ、妖精たちと戦う、というもの。
面白いのは、人間たちが地上の世界を席巻し、住居を追われた妖精たちは巨大な地下世界に住んでおり、人間よりもはるかに進んだテクロノジーを持っている、という設定。妖精たちは高度なテクノロジーで武装した集団を組織し、アルテミス・ファウルおよび人間たちと戦う。
アルテミスは天才少年ということで、ときに小憎らしいまでの台詞を吐いたりするのだが、そこは強靭な肉体と屈強な精神を併せ持つ従者のバトラーに支えられてこそ、のことだろう。
人間側はアルテミスとバトラーのコンビだが、妖精たちのほうこそ、なかなか味のあるキャラクターたちが登場する。
うっかりアルテミスに捕まえられてしまうエルフ族で若い女性警察官ホリー・ショート大尉と、その上司であるジュリアス・ルート司令官。
ケンタウロスで警察組織の天才技術者フォーリー、そしてドワーフで窃盗魔のマルチ・ディガムズ。
これら妖精側の登場人物たちにもそれぞれ生活があって、人間の世界と同じように陰謀や犯罪が起こるわけで、その解決のためにアルテミス・ファウルやバトラーが、本来は敵同士であるはずのホリー大尉やルート司令官と手を組み、ミッション成功の鍵となる人物として犯罪者のマルチ・ディガムズを加えてチームを組織することになり、シリーズが展開していく。
シリーズが進むにつれて、敵同士だったアルテミスらとホリーたちの間に友情のようなものが芽生え、悪事を平気で行うアルテミス・ファウルも次第に変化していく。このあたりが本シリーズの魅力だと思うので、是非シリーズを通してお読みになることをお勧めする。子ども(とそれ以上の「若い大人」)向けの本だけど、もう若くない大人だって楽しめるのではないかと思う。
その不思議な名前を見たのは小学生低学年の頃だったと思う。正確な出典は定かでないが、図書コーナーに置いてある子ども向けの事典か何かだったのではないだろうか。
「世界の妖怪」とかなんとか、そんな項目の一つに、「ドモボイ」というのがあった。
「ドモボイ」がどういうものなのか、もう今となっては思い出すことができない。いいかげんなことを書いて恐縮だが、たしかヨーロッパのほうに伝わる妖怪か何かで、なにかフクロウかミミズクのような姿形をしていたのではないか(記憶違いかもしれません)。
事典に書かれていた文言も忘れてしまったけれど、ただもう恐ろしく、ヨーロッパの妖怪が日本に現れるはずはないにもかかわらず、子どもの私(乙山)は「ドモボイには気をつけないといけない」などと注意を払っていた。とくに夜寝る際、二階の子ども部屋に一人で上がって行かなければいけないときなど、本気でドモボイを警戒していた、と思う。子どもの私は、ドモボイの何をそんなに怖がっていたのだろう。
それから何年も経ち、ドモボイのことなど次第に忘れていったし、成長した私にとって、ドモボイは恐怖の対象ではなくなっていった。架空の存在であるドモボイより、現実の人間のほうがよっぽど怖かったりするわけですね。
酒の席か何かで、よほど親しくなった同年代の人たちにドモボイのことを尋ねても「なにそれ? 知らないなあ」という答えばかりが返ってくるうちに、私自身本当にドモボイなんてあったんだろうか、という気になってきた。
けれど、ドモボイという言葉だけは私の中に残り続けていたようだ。
というのも、『アルテミス・ファウル』シリーズを読んでいる中で、ドモボイという言葉を見つけ、「あっ」と思ったからだ。
前置きが長くなってしまったが、本書『アルテミス・ファウル』にはドモボイのことは出てこなくて、シリーズの何冊目か(曖昧な情報、多謝)でドモボイという言葉が出てきます。
話は、アイルランドの伝説的な犯罪一家に育った12歳の天才少年アルテミス・ファウルが、妖精の「ブック」をコンピューターを使って解読し、妖精の黄金を手に入れようともくろみ、妖精たちと戦う、というもの。
面白いのは、人間たちが地上の世界を席巻し、住居を追われた妖精たちは巨大な地下世界に住んでおり、人間よりもはるかに進んだテクロノジーを持っている、という設定。妖精たちは高度なテクノロジーで武装した集団を組織し、アルテミス・ファウルおよび人間たちと戦う。
アルテミスは天才少年ということで、ときに小憎らしいまでの台詞を吐いたりするのだが、そこは強靭な肉体と屈強な精神を併せ持つ従者のバトラーに支えられてこそ、のことだろう。
人間側はアルテミスとバトラーのコンビだが、妖精たちのほうこそ、なかなか味のあるキャラクターたちが登場する。
うっかりアルテミスに捕まえられてしまうエルフ族で若い女性警察官ホリー・ショート大尉と、その上司であるジュリアス・ルート司令官。
ケンタウロスで警察組織の天才技術者フォーリー、そしてドワーフで窃盗魔のマルチ・ディガムズ。
これら妖精側の登場人物たちにもそれぞれ生活があって、人間の世界と同じように陰謀や犯罪が起こるわけで、その解決のためにアルテミス・ファウルやバトラーが、本来は敵同士であるはずのホリー大尉やルート司令官と手を組み、ミッション成功の鍵となる人物として犯罪者のマルチ・ディガムズを加えてチームを組織することになり、シリーズが展開していく。
シリーズが進むにつれて、敵同士だったアルテミスらとホリーたちの間に友情のようなものが芽生え、悪事を平気で行うアルテミス・ファウルも次第に変化していく。このあたりが本シリーズの魅力だと思うので、是非シリーズを通してお読みになることをお勧めする。子ども(とそれ以上の「若い大人」)向けの本だけど、もう若くない大人だって楽しめるのではないかと思う。
【付記】
● 『アルテミス・ファウル』 は2002年に映画化が決定されたそうですが、未だそれらしい話をまったく耳にしません。乙山としては『ハリー・ポッター』シリーズの映画制作スタッフあたりが 『バーティミアス』 を撮ってほしいなと思っています。
● ドモボイを子ども向け図鑑や事典、または何かで見た、という方は少数であるにせよ、存在するのではないかと乙山は考えています。ドモボイがどういうものだったか、ご存知の方はどうか教えてください。


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コメントの投稿
ドモボイは水木茂さんの世界の妖怪大百科?みたいなタイトルの本にのっていたロシアの妖怪です
Re: 遠くさん
遠くさん、コメントありがとうございます。
ああ、やはりドモボイを見たのは自分だけではなかった、
ちゃんとあったんだな、とわかりました。情報ありがとうございます。
ああ、やはりドモボイを見たのは自分だけではなかった、
ちゃんとあったんだな、とわかりました。情報ありがとうございます。