珍客、来店す

SnakeFromUkraine.jpg
某日19:00過ぎ、相変わらず〈バー・フラヌール〉は暇である。こんな時は、まだ作っていないカクテルを試してみるに限る。そうやって実際に作って味わってみないと、自信を持ってお勧めすることができないからだ。店にあるスピリッツとリキュール、フルーツ類を使ってできるものは……そうだ「ビトゥイン・ザ・シーツ」(シーツの間)なんてどうだろう。

カクテルを作る用意をしていると、店のドアが開いたので「いらっしゃいませ」と対応する。だが、どうやら外国人の若い男性のようである。座りもしないで「私、外国人の留学生です」という。そして何やら箱を取り出して開けて見せると、中には何か小さなものがたくさん詰め込まれている。彼は一つ取り出すと「マトリョーシカです」という。

「これ、お母さんですね。中に、小さなお母さん、子ども入ってます。子どもの中に、猫」などと言うのだ。ひょっとして彼、外国人の行商人なんだろうか。マトリョーシカがあるので、あなた、ロシアの人? と訊くと「ウクライナから来ました」という。ねえ、あなたは飲まないんですか、ひょっとして、これ、売りに来たの? というと、ちょっとすまなさそうに「はい」と答えた。

"Well, so...how much is this ? "(←何で英語なんだ、ウクライナ人だったらロシア語だろう)と訊いてみると、「四千円」とかぬかしたので、"Too expensive." と言ってみると、「ミンゲイヒンですから」とくる。"Have you made this ? " と訊くと、「おじいさんが作りました」という。自分のヘボ英語でも一応通じるんだねえ。けど、おじいさんが仕込んで孫が売りさばくのか。てか、あんたらユダヤ系か(おいおい)。

でもその確率は高いと思う。だってね、露天商で何か銀細工物とか怪しげな絵画とか、そんな小物を売ってるのって、たいていユダヤ系の人たちなんですね。以前、天王寺に住んでいた頃にそういう人たちをよく見かけたものだ。だからと言って、そういうのが良くないとか言いたいのではなくて、たいていそういうのはユダヤ系に多いんじゃないかな、っていう気がする。

よっぽど "Here isn't public space, nobody can sell anything without drinking." などと言ってやろうかと思ったけれど、よく見ると本当に若い子で、全然邪気がなさそうに見える。日本人はだいたい言い値で買ってくれるから世界中でカモにされているようなので、値切り交渉するのが常識だと思うが、この子相手に値切るのもねえ……でもマトリョーシカはいらんよ。

小さそうなのがあったので "What's this ?" と訊くと「エト、ですね。あなた、何ですか?」という。ふうん、干支ねえ。そこまで研究というか、日本で売るために干支なんてのも取り入れているわけで、じつに商売熱心といえる。ちょっと感心したのでつい "I'm snake." (←お前はヘビか?)と答えてしまった。ああ、やってしまいましたね。

だから何で英語なんだよ、相手は日本語が通じるから日本語でいいじゃねえか、自分でもそう思いながら変な英語を使ってしまったが、もうどうでもいい気分である。こっちは半ば自棄(やけ)になっているんである、一刻も早くこのウクライナ行商人に立ち去ってもらいたい。で、じゃ、そのヘビをもらうよ。いくら? というと「二千円です」という。

「アリガト、ゴザイマス」とか何とか言った後、ウクライナ人青年は私(乙山)の手を握り締めるというたいへんな親愛表現をしていった。その時、ちょうど洗い物をした直後だったので、私の手はかなり冷たかったに違いない。そして、ウクライナ人青年の手は、とても暖かかった。ヘビの飾り物は高かったのか、安かったのか。やはり私はカモにされてしまったんだろうな。だけどもう、そんなことは、どうだっていいのである。


【付記】
● ウクライナ人青年が最初の珍客(正確には客ではない。私が客になってしまった)で、次に来店したのは開業したばかりの不動産業者でした。笑みを浮かべながら対応したわけですが、心の中で「何なんだよ、お前ら、もういいよ!」と叫んでしまいました。

なぜ乙山はわざわざ英語を使ったのか? それは英語に変換することで「情」を捨象することができると考えたからです。日本語は、言葉が発せらせる瞬間、すでに「情」を含んだものとなっている、つまり相手のことを慮った表現にするわけですが、そのあたりは日本語圏以外では通用しないようで、ほぼ「言葉通り」に受け取られてしまうんですね。NOならNOで、押し通してやろうと思ったのですが、相手が可愛らしかったのがいけなかったようです。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

押し売り

乙山さん、買ったのですか。これ他人の家に勝手にきて、ゴム紐かってくれという押し売りと同じですよ(かなり古いなあ)。なんで買ったのですか。若い男性だったから?ひょっとして、そっちの方?
 

Re: 押し売り ; トニーさん

トニーさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
まあまあ、いいじゃないですか。買ってやろうと思っただけですよ。
たぶん彼らはユダヤ系のウクライナ人だと思います。

若い男性だから、というわけではありませんし、
乙山がそっちのほう、というわけではありませんよ。
結局、情にほだされてしまった、防ごうとして英語を使ってみたけど、
あまり役に立たなかった、それだけのことです。

こんなバカが、世界に存在しているというサンプルですね。

私なら……マトリョーシカの段階で買ってしまってますね(^^;;
ポケットWiFiの解約に行った筈なのに何故か解約も出来ず、新たにポケットGPSの契約を結ばされて帰ってくるような情けない人間ですので。

お友達申請ありがとうございました。写真を見れば解って頂けるのでは、と思っておりました笑

No title

買っちゃいましたか(笑)
次回は、相手の言い値が2千円ならとりあえず買値は2百円から
交渉を始める「インド露天的商取引」で!(笑)

私も大阪人の割に「値切り」は苦手で、アジア圏を旅した時は
(一応値切ったものの)結構ボラれてたんだろうなぁと思います(^^;)

Re: 白プードルとお散歩さん

白プードルとお散歩さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
基本的に、怪しい飛び込みの商人なんて相手にしないほうが正解で、
トニーさんの仰ることが正しいのだと思います。

今回は、「日本人が外国人商人にカモにされる話」と、
「ちょっとだけ英語ができると調子に乗った日本人がやってしまうミス」という、
二つの話が並行しており、落とし所は「私はヘビです」と言ってしまう所なんですが……
笑って頂けましたでしょうか……スルーだったかのかな?

いや本当に白いプードルちゃんですね。

Re: zumiさん

zumiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
仰るように、値引き交渉をするのが「世界の常識」でして、
記事本文にもありますように、それは乙山も「わかっている」わけですよ。

今回はすべてわかっていて、あえて買ったわけです。
たしかに「カモられた、ボラれた」話でもあるのですが、
そこに最大のポイントがあるわけではないのが、伝わったかどうか……

たかが二千円の話ですよ。
ボラれたにしても、訴訟に発展しない程度に抑えてある、
これは「ユダヤの知恵」といってもいいもので、うまいこと考えている。

ヘビの飾り物ね、結構気に入っているんですよ。だから買ったわけで。
「やられたっ」とか言って、ゴミ箱へ捨てられることはなく、まだ手元に残っていますからね。
だけど行商人に対しては、買う気がなければ「断固として断る」のが正解だと思います。

No title

こんにちは。

良い石を使ってそうに見えないですし、高いですねえ。輸入雑貨としても、日本人が丁寧につくった似たような手芸品と比べても、2000円は結構なお値段だと思います。

もう少し値切って、商売の厳しさを教えてあげた方が、彼の為だったのでは?とも思いますが、日本人に恩を感じるのか、チョロいと思うのかは彼次第なので、何とも言えないかな。

Re: yuccalinaさん

yuccalinaさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
記事の中に書いたように「すべてわかって」買ってやったわけです。
確かに、そんな高品質のものではありませんし、祖父が作った、というのも眉唾物です。
おそらく「元締め」みたいな所があって、仕入れているのだと思います。
商売の厳しさをわかっていないのは、私ですからねえ。

No title

うふふ。
乙山さんの優しさが出ているエピソードですね。
ウクライナの青年の手が暖かかった・・・
それだけで十分な気がします。

例のもの。もちょっと待ってくださいね~♪^^

Re: 彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
どうもみなさん「乙山がカモになった話」として読んで下さるのですが、
「わかっていて、あえて」そうしていると記事に書いてあるんですけど……

ポイントはそこじゃないのですが、読み方は自由ですものね。
で、まあ実際、みなさんの仰る通りなんですよね。
つまらん物を買った乙山がアホでした。

No title

「あえてブログネタとして」買われたのかなぁとは思っていましたが(笑)
蛇は商売繁盛の神様みたいですし、大切にお店に飾ってあげてください~♪
また見に行きます~!

Re: zumiさん

zumiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
あ、ばれました? まあ、そういうことですね。
あれ、小さすぎましてね、今は自宅に置いてあります。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/04 (7)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)