さようなら、池田

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2016年2月中頃に引越して、現在は大阪市内に住んでいるけれど、4年と9カ月ほど住んでいた大阪府池田市のことを書いておきたい。引っ越しした当初、夜の9時になるとほとんどの商店が閉まってしまうことに驚いた。これはいわゆるベッド・タウンの典型的な現象で、近隣の川西市や宝塚市でも同じことなのだが、あまりの引き際の速さに「えっ」となってしまったのである。

仕事柄、池田の駅に帰着するのが夜の10時以降になることが多く、スーパーマーケットで買い物もできず、仕方なくコンビニ店で何か食べ物を買うか、外食チェーン店に立ち寄るか、あとは居酒屋なら営業しているのでそれを利用するしか方法がなかった。おまけに、駅からわりと離れた丘のほうにある集合住宅に住んでいるため、どうも外出するのが億劫になってしまうのだ。

大阪市内に生まれ、天王寺に10年以上住んだ人間からすると、郊外の閑静な住宅街というのはどこかしっくりこないものがある。けれど、休日に昼食を外でとるのをきっかけにして外出し、その後業務用食料品店での買いだめ作戦、およびネット通販も併用することで徐々に不便さを克服していった。郊外の「**丘」とか「**台」に住むのなら、やはり自動車があったほうがいい。

できるだけ自炊するように心がけているが、疲れて何もする気が起きなくなることが多々あって、そんなときには居酒屋にお世話になったものだ。中でも駅前の〈万惣〉(まんそう)にはよく通った。ここはたぶん、池田で一番「コアな店」ではないかと思う。いたって普通の居酒屋なんだけど、常連客が「地元の顔」みたいな人が多いようで、最後まで余所者を通した。

もう一軒、わりと使用した店がうどん・そばの店〈くれは〉である。店主が相当できる人で、元和食の板前さんだろうと思う。うどんと蕎麦以外にも、刺身・てんぷら・寿司となんでもござれの店。夜遅くまでやっているわけではないけれど、比較的早く帰ることができた日には立ち寄って一杯飲んでから蕎麦でしめる、というのにちょうどいい店だった。

寿司・てんぷら・刺身も上々だが煮物もすこぶるうまく、特に気に入ったのが「くれは弁当」だった。刺身と煮物の盛り合わせ、それにご飯とミニそば(うどん)がついて1000円。この煮物の盛り合わせが秀逸で、煮物好きにはたまらない。これにビールと日本酒を飲んでもだいたい2000円。初回、ご飯もミニそばも食べてしまったので、本当に腹が膨れすぎて歩きにくくなってしまったほどだ。

なので次回から「ご飯抜きで皿盛り」にしてもらった。ミニそばは、もし食べられるようだったら最後に頂きます、としてビールから飲むことにしたが、「料理ができるまでこれを」と小鉢を持ってきてくれるんですよ。写真*をご覧ください。まあだいたい刺身の盛り合わせが500円だとしますね。すると、残りの煮物盛り合わせが500円ということになるのだが、これって絶対にありえないと断言できる。ものすごいお得な、値打ちものだと言える。

酒が進んで日本酒に切り替えると、冷酒杯を升で受ける形で酒を注いでくれる。このときももう、注ぎこぼしが升の半分くらいまでたっぷり注いでくれ、なんだか申し訳ない気持ちになるほどだ。一人で飲んでいるから日本酒は一杯だけだが、だれかと飲んだらたぶん三杯は飲んでしまうんじゃないだろうか。刺身と煮物に、日本酒は本当にうまくて進みまくってしまうのが恐ろしい。

もうお腹は相当くちくなってきているのだが、寒い季節だから最後にミニそばでしめることにした。ここのは「二八蕎麦」なので、ざる(もり)蕎麦でもじゅうぶん蕎麦の風味を味わうことができる。池田最後の夜、食器類も梱包してしまったので、〈くれは〉で食事をすると決めていた。ご主人と奥さんに、明日引っ越しする旨を述べ、しばしの間談笑した。

北摂の町、大阪府の最果ての町の一つ、池田。この町に住むことができたことは本当に良い経験だった。池田で臥薪嘗胆と雌伏の時があったからこそ、こんにち自分で商売を始めることができたのではないかと思う。もう一度池田に住みたいか、と訊かれれば、もちろん住んでもいいと思う。だけど今度はお山のほうではなく、駅に近い所に住みたいな。さようなら、池田、そして、ありがとう。

*この写真は、以前〈くれは〉で食事をした記事に使用したものです。じつは、デジタル写真機を忘れたとき、スマートフォンで撮影をすることが何度かありました。本記事もスマートフォンで撮った写真をメールでPCに転送して使うはずだったのですが、携帯電話の加入と同時にスマートフォンを解約してしまったのです。プロヴァイダーのSIMを抜いてしまった今となっては、もう回収のしようがありません。まったく迂闊だったのですが、これは典型的な只野乙山的現象と言えましょう。

【付記】
● 今から考えると、外出する気が起こらないという半ば幽閉されたような環境があったからこそ、臥薪嘗胆や雌伏が実現できたのではないか、そんな気がしてきました。池田にいた間に、真空管アンプを1台、オペアンプ式パワーアンプを1台、後面開放型スピーカー箱、そして未完成ながらオペアンプ式プリアンプを作りながら貯金が何とかできたのも、そうした環境のおかげかもしれません。


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池田

乙山さん、本当に不思議ですね。家内は吉田橋を渡った山の上に実家があります。なので私はまだ、池田に行くことがあります。OL時代は、山の上からバスと阪急電車を乗り継いで、1時間半かけて新大阪の会社に通ってました。阪急電車の創始者、小林一三さんの美術館には、行かれましたか。小さな商店街にあった映画館もありました。本当に不思議な町です。

Re: 池田 ; トニーさん

トニーさん、こんにちは! コメントありがとうございます。

>家内は吉田橋を渡った山の上に実家があります。

なるほど、奥様の御実家は伏尾台あたりなのかな、と想像しました。
自分も「お山の方」に住んでいましたが、上には上があるというものですね。
逸翁美術館や旧小林一三邸は、ウォーキング(散歩)の途上でしょっちゅう「通過」しました。

池田にあった映画館は、減税閉鎖されていて、大衆演劇の舞台になっているようです。
不思議な、といえば、池田にはいわゆる「歓楽街」というものが皆無で、
いわゆるスナックが駅周辺に全く見当たらないのです。

同じ池田市でも、石橋だと猥雑な雰囲気に満ちているのに、
池田にはそういう部分がないんですね。
コンビニ店より、焼鳥屋とカットハウス(床屋)のほうが多い、不思議な町でした。

「さようなら、池田」のお写真がくれはのお弁当というのが乙山さんらしいですね。

ここにしか住んだことがないので、ここが私の当たり前。隣の市に比べれば本当に不便な町ですが、でも池田以外には住みたくない。まさに乙山さんの散歩道に住んでおりますので、通勤の行き帰りだけで歩数計は軽く一万歩を越えますが、それさえも自慢です笑
なんなんでしょうね。よくわからない誇りがあるのですよ。池田の住民ってそんな感じです、たぶん。

この先、ここで乙山さんとすれ違う事は不可能になりましたが、まもなく必ず会えるんですよね。不思議な気分です。

Re: 白プードルとお散歩さん

白プードルさんとお散歩さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> ここにしか住んだことがないので、ここが私の当たり前。
> 隣の市に比べれば本当に不便な町ですが、でも池田以外には住みたくない。

お気持ちお察しします。乙山がお世話になった立ち飲み屋さんの女性従業員の方も、
「池田以外に住もうと思ったことはない」(原語、大阪弁)と言っていました。
池田には、何かそういう魅力があるんだと想像します。

お隣の川西市と似ているようだけど、どこか違う。
それが何なのか、乙山には射抜くことができませんが、
一番違う所は「観光資源がある」ところでしょうか。

旧小林一三邸→逸翁美術館→ハローワークの角→池田城址→五月山というのが、
ふだんの散歩&ウォーキングのルートだったのですが、
水月公園方面の散歩も好きでした。

業務スーパーがあるので、そこで買い物をしていますと、あれ?
という人に出会ったりするのが何とも気恥ずかしく、
なるべく合わないような時間帯を選んで散歩するようにしました。

体育館、一度は利用するべきでしたね。
水泳とかしてみたかったですよ。
ホントにね……まだ行っていない店もたくさんあって、残念です。

機会があれば、また池田に行きたいと思います。
出来れば早い目にお越しくださいね。なくならない(おいおい)うちに。
お待ちしております。


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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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