バランタイン17年(ブレンデッド)

Ballantines17_01.jpg
かつてバランタイン・ファイネストが3500~4000円くらいしていた時代を知っている者にとって、同社の17年物がいかに高級品だったか、現在では想像もつかないだろう。何しろブレンデッドの12年物が1万円前後で専ら贈答用だったせいか、バランタイン17年というのは雲の上の存在みたいな感じで、本当に手が出せなかった。いつの間にか、こんな自分でもバーで飲めるようになって知ったようなつもりになっていたが、今回初めて購入して飲んでみた。

小さなグラスに注ぐと、いかにもウィスキーと言いたくなるような琥珀色。レーズンかドライフルーツを思わせる香りとヴァニラの甘い香りがまず漂ってくる。バナナのような香りやチョコレートも混じっていてかなり複雑。口に含むと、ハーヴを含んだモルトの甘みの後で、微弱なスパイシーさが来る。塩(潮)気もほんのわずかだが感じられるが、スモーキーさやピート香はほとんど感じられぬほどデリケートな入れ方をしている。

まろやかさとスムースさを追求している(?)のだろうか、フィニッシュの余韻はそう長くない。モルトの甘みから微弱なスパイスへ移行した後、再びモルトの甘みが舌に残って、鼻腔には麦芽香やヴァニラ香が抜けていく。若干の加水でも味わいのバランスは崩れず、香りの奥の方にスモーキーさがあるように思える。グラスの残り香もかなり複雑で、ヴァニラの甘みの他に木質香、そしてスモーキーさの痕跡が漂ってくる。

トゥワイス・アップまでもっていくと、ストレートでも飲みやすいからだろうか、いささか薄まってしまった感じがする。ストレートで感じた複雑な属性の多くが脱落して平坦になり、木質香が前に出てくる。確かに飲みやすいのだが、加水はほんの少しにとどめておくほうがいいように思えた。スパイシーさは消失し、引き際は本当にあっさりしたものになる。勿体ないとはこういうことを言うのかもしれない。

オーバー・アイスで(氷に注いで)飲むと、甘みは少し後退し、塩(潮)気がわずかだが前に出てくる感じがするが、ここは(他もだが)あまりあてにならないと思う。確かにうまいんだけど、感心するほどではなくて、長年あこがれて来て期待が膨らみ過ぎると、かえって「あれっ」となってしまう好例かもしれない。うっとりさせてくれるものを、というのであれば、かつての〈響12年〉とか〈山崎12年〉のほうがよっぽどじゃないかと思う。そうかといって、決してそんなに悪いわけではないんですよ。

Ballantines17_02.jpg1:1水割りを氷に注いだ「ハーフ・ロック」スタイルではどうだろうか。確かに飲みやすいんだけど、やはり「ああ、うまいなあ」とか「ありがたいなあ」と思わせてくれるほどではない。まあ、オーバー・アイスでそんなに良い印象じゃなかったので予想はできていたけれど、バランタイン17年は本当に薄めてはいけないんだなと痛感した。往年のバランタイン17年は云々、などと言えないところが残念であるが、本当に買えなかったんだから仕方がない。

1:2水割りを断念したが、ソーダ割りはどうなんだろうか。以前(2015年4月頃)、神戸の山手のほうにある、とあるバーでスコッチ・ソーダを注文しようとしたところ、そこでは最低が12年物だったので、オーナー・バーテンダーの方に「バランタイン17年のハイボールはいかがでしょうか」と勧められたことがある。だけどなんだか申し訳ない気がして氷に注いでもらった。

ここでは、バランタイン17年30mlを8オンス・タンブラーに氷とともに入れて軽くステアしてソーダで満たし、だいたい1:2になるようにして飲んでみた。居酒屋などで出回っている「ハイボール」からするといささか濃いめだが、といっても40%と表示してあるので、1:2にすれば13.3%になる。飲んでみると、ううむ……これはねえ……いま飲んでいるのが何のハイボールだったかわからないようになってしまう。これ絶対、やらないほうがいい、と思いますよ。

ちなみに、香りの強いウィスキーは空気に触れると変質していくのはご存知かと思う。じつはすべてのウィスキーは、開栓した瞬間から変質していくのを避けることができないが、香りの強いものはその変化が顕著に表れる。バランタイン17年も、時間が経つにつれて変化していくのがよくわかった。味わいはまろやかになり、チョコレートやカカオの香りと味わいや、スパイスがより強くなって若干のビターを感じる。そして、開栓時には感じられなかったアロマティック・キャンドルのような味わいも感じられる。

要するに、初めからそのまま飲むことだけを考えてブレンドされたもので、ミキサー(割り材)を使うことなどまったく想定していないのだろう。平均気温が低めで、25℃を超えると大騒ぎになる国ならではのことかと想像する。熱燗が欲しくなるこの時期、たしかに、ストレートでやると、うまいんですよねえ。「これ、何なんだろう」といつまでも味わって、探ってみたくなる感じがあって、つい「もうちょっと」となってしまう。少しだけ飲んでグラスの中で変化していく味わいも楽しいし、空気に触れることでボトルごと変わっていく「大きな味わいの変化」もまた、楽しいものでした。


【付記】
● バランタイン17年は初めて飲んだ瞬間、名前の大きさと値段から発生する期待と、実物の味わいとのずれが大きいタイプなんだと思います。はじめは「あれっ?」となるかもしれませんが、後で「なるほど」となるのです。フィニッシュの余韻は、後になると長く尾を引くようになり、どこかアロマティック・キャンドルのような味わいも出てきます。もちろんこれは、フルボトルまるごと味わった人だけの話。もしこれを、初めから計算していたとすると、本当に驚くべきことでしょうね。


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No title

バランタイン・ファイネストがそんなに高かったのは知りませんでした。
何回か買いましたが、癖が無さ過ぎてもう何年も飲んでません。
ジョニーウォーカーなどもそうですが、高かった特級時代と同じ
ものかわからないので、単純に安くなったとは言えないでしょうね。
免税ジョニ黒を飲んだことがありますが、○学校の頃ちょっとなので味は覚えてません。

Re: kazさん

kazさん、コメントありがとうございます。
1989年に酒税法の改正があって、それから洋酒天国になり、
シングルモルトのブームが起こったんですね。
シングルモルトはだいたい4000円前後ですから、単純に、
当時ファイネスト(3500~4000円)の4倍くらいしたわけです。

そんなもの、おいそれと買えませんし、
知られた銘柄以外、シングルモルトなんて聞かなかったと思います。
それは乙山が知らなかっただけかもしれません。

No title

原料の価格や製造貯蔵のコストダウンで原価が下がったのは
他の製品と同様だと思うので、税制以上に値段が下がったのは
理解できます。
昔より上がってるのは人件費くらいですから。
今から思えば実質以上輸入洋酒を高級品扱いしていたんでしょう。
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