SHOGUN 『SHOGUN THE BEST』

SHOGUN / SHOGUN THE BEST(1997, compilation)

SHOGUN_TheBest.jpg
01. As Easy As You Make It
02.Lonely Man
03.Bad City
04.LIVING WITHHOUT YOUR LOVE
05.友よ、心に風があるか
06.Do It TO Yourself
07.Otokotachi NO Melody
08.サタデー・サイクロン
09.走れ!オールドマン
10.風に抱かれて
11.Sunrise Hightwey
12.ONE ONE ONE(You're the one)
13.SIR PEER
14.UNDER THE RAINBOW(Tilopa's Song)
15.Imagination
16.You turn me on
17.castle walls


1970年代の終わり頃、『俺たちは天使だ』というテレビドラマがとても面白く、楽しみにしていた。「運が悪けりゃ死ぬだけさ」というオープニング曲の歌詞も、開き直ったような潔さが格好良かった。少し後で『探偵物語』が始まったときはもうぶったまげた、というかすっかり魅せられてしまったのである。オープニング曲とエンディング曲が恐ろしいほど格好良く、サウンドがいわゆる「和製ロック」とまるで違っていたのに驚いた。

それらを演奏しているのがSHOGUN(本当はOの上にマクロン:長音記号が入るのが正式名称だが、環境依存文字のため外して表記する)というバンドによるものだと知ったのはずっと後のこと。YouTubeなどでもSHOGUNの演奏を視聴できるのだが、この際いい音で聴いてみたくなってCDの購入に至った。ついでに村下孝蔵と南佳孝のベスト盤も買ってしまった。

結成当時のメンバーは芳野藤丸(g, vo)、大谷和夫(kd)、ケーシー・ランキン(g, vo)、山木秀夫(ds)らで、全員がすでに10年以上スタジオ・ミュージシャンとして活躍していたという。『探偵物語』のオープニングとエンディング曲はドラムスがとくに秀逸だと感じたが、山木秀夫はその後、渡辺香津美バンドや近藤等則&IMAに参加しており、レコーディング参加を見てもすさまじいほどである。

英語の歌詞はケーシー・ランキンが書いており、作曲は主に芳野藤丸、編曲は大谷和夫によるもののようで、これはCDのブックレットのクレジットを見ればわかる。その後SHOGUNのことを全く聞かなくなったと思っていたら、芳野と大谷が薬物所持により、わずか二年足らずで活動を停止、とウィキペディアにある。残念な話である。

早速聴いてみると、やはりすごい。芳野藤丸のギターのカッティング、無茶苦茶格好良いですね。サウンドはロック、なんだけど、ファンクに傾いているんじゃなかろうか。基本はスティーリー・ダンとリトル・フィートの中間くらいのイメージで、そこにコーラスとブラスを入れてファンキーに仕上げている。ケーシー・ランキンの影響でカントリーよりになることもあり、そんなときはクロスビー、スティルス&ナッシュみたいになるが、おおむねファンキー路線である。

ファンクといってもジェームズ・ブラウンの感じではなくて、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかパーラメント、ファンカデリックみたいに洗練されたスタイル。さすがにEW&Fまではいかないとしても、芳野のヴォーカルは高めキーで、ファルセット(フェイク)・ヴォイスでかなり高域まで出すことができるようで、コーラス部分を見事に仕上げている。

この路線って、素人のロックバンドはたいていやりたがらない(というかできない)んですよね。1970年代の終わり頃だから、ギター・ヒーローの真似事ばかりやりたがる小僧たちだった。ギター1本でフォークか、テクのなさに開き直ってパンクに走る(これがいちばん女の子には受けたと思う)か、70年代ロックのコピーか、それしか選択肢がなかったわけです。ジャズとかフュージョンは大学に入ってから、という感じだった。

だれもろくに歌えないのにみんなギターソロをやりたがる。何なんだよ、お前ら、ってベースとヴォーカルがこっちに回ってきたっけ……いろんなことを思い出しながらSHOGUNを聞いた。やはり「Bad City」や「Lonley Man」そして「男たちのメロディ」以外はあまりぱっとしない感じだけど、聴きこむほどに彼らの演奏テクニックがすごいことがわかるし、1979~80年で洗練されたファンクをやってる日本のロックバンドって、他になかったんじゃないかと思う。もちろん、これは私が知らないだけ。


【付記】
● 初めてちゃんと聴いたSHOGUN。なかなか良かったです。本当にね、後期スティーリー・ダンとかリトル・フィート、クロスビー、スティルス&ナッシュみたいなテイストが基本にあって、そこにブラスを加えてファンキーに振った感じ、とでも言えばいいのでしょうか。初期の活動停止が本当に残念なバンドです。


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キング・クリムゾン 『ディシプリン』

King Crimson / Discipline (30th Anniversary Edition, original released 1981)

KingCrimson_Discipline01.jpg
1. Elephant Talk
2. Frame by Frame
3. Matte Kudasai
4. Indiscipline
5. The Hun Ginjeet
6. The Sheltering Sky
7. Discipline
8. Matte Kudasai (alternative version)


1970年代の終わり頃、音楽好きの友人にキング・クリムゾンを教わった。その異質なサウンドにのめりこんでしまった私(乙山)は、友人に頼み込んでクリムゾンのLPをカセットテープにダビングしてもらい、何度も聴いていた。もうすでに終わったものとばかり思っていたクリムゾンが、1981年に再結成したというのに衝撃を受け、FMラジオで渋谷陽一が特集していたのをきっちり「エアチェック」して新しいクリムゾンを聴いたのを覚えている。

ところが、出てきたサウンドが従来とあまりにかけ離れているように感じて「えっ」と思ってしまったのである。なんていうか、拍子抜け、あるいは期待外れ、だろうか。『スターレス・アンド…』と『レッド』があまりにもシリアスだったこともあり、どこかでそれらを継承したものを期待していたのかもしれない。音楽好きの友人も驚きながら、少し複雑な表情をしていた。

メンバーはロバート・フリップ(g)、エイドリアン・ブリュー(vo, g)、トニー・レヴィン(b, stick)そしてビル・ブルフォード(ds)の四人。ブリューとレヴィンはアメリカ人なので、ああそうか、クリムゾンはもう「イギリス」のバンドではなくなったんだな、と思った。もともと、クリムゾンはメンバーが変わることが多いから、こだわりはないんだけど……ブルフォードが参加しているのが妙に嬉しかった。

(1)はレヴィンによるチャップマン・スティックという楽器を使ったイントロの後、ブリューのヴォーカルが入るのだが、歌詞というよりは単語を並べただけという感じがする。しかもAから始まってB、C、Dと続き、最後にElephant talk、その後に象の鳴き声のギターによる模写、って思わず「嘘でしょ?」と言いたくなるぶっ飛びぶりである。これはジョークだ、というか悪夢だ、とか思いながらも笑ってしまう。これは笑うための曲ですよね、ちがうのかなあ?

(2)はフリップとブリューによる速弾きに度肝を抜かれる。どうやって弾いているんだろうと思ったが、ライヴ映像を見ると、左手が盛んに動いている。なんか複雑なコードなんだろうなあ。歌いながらあれを弾くのは大変だろうと思う。(3)はブリューのヴォーカルが大活躍するスローテンポの曲で、カモメの鳴き声のような音もブリューのスライド・ギターによるもの。ボトルネックをフレットの上方から(多くは下方からだが)当てているのを映像で確認した。

(4)はテンションの高いブルフォードのドラミングが光る曲で、ヴォーカルは歌うというより「語る」感じ。CDやLPで聴いているとあまりぱっとしない感じがするけれど、ライヴではなんだか格好いいのが不思議である。(5)はお祭りソングという感じで、とにかく「明るく、楽しい」雰囲気でノリのいい曲。エイドリアン・ブリューのキャラクター全開で、ステージでも楽しそうに笑顔で飛び跳ねて演奏する姿が思い浮かぶ。

(6)はブルフォードがドラムセットを離れ、左手に木魚(?)のようなものを持ち、右手で丸い先のついた棒で叩くリズムの繰り返しの上に、フリップのギター、ブリューの変なサウンドが繰り広げられた後、最後はブルフォードのリズムで終わる。(7)はギターのリフレインを全面的に押し出したインストゥルメンタル曲。リーグ・オブ・ジェントルメンで演奏した「ヘプタパラパシノク」をさらに進化・発展させたような印象で、淡々と進む中にもきらりと光るものを感じる佳曲に思う。

元々この四人でスタートした時、ディシプリンという名前でライヴを行ったそうだ。その後アルバムを出す際にEGとの交渉でキング・クリムゾンに名前を変えたと聞いている。そんな経緯もあって、この時期のクリムゾンを認めたがらない人も少なくないようだ。不満の多くはシリアスで重厚だったクリムゾンが「軽く、明るく、ポップ」になってしまったことに向けられているのではないかと想像する。「ラークス・タングズ…パート2」は、そんなふうに笑ってやるもんじゃないんだ、という気持ちもわからぬではない。

ポップ、エスニック、変拍子、リフレインのいい意味での折衷主義。変拍子のリフレインは少しずつずれていくようで、どこかで巻き戻しをしないといけないのだが、ブルフォードのドラミングが絶妙なのか、本来ロックには向かないような素材が、見事に「ロック」になっているように思えた。ここが非常に重要な点で、ロックになっているということは、それなりにポピュラリティーを有しているということだ。ディシプリン・クリムゾンはあまり人気がないようだけど、個人的にはこの時期のクリムゾンはそんなに嫌いではなく、わりと好んで聴いている。


【付記】
● フリップとしては過去を引きずりたくなかったのでしょうね。何かこう、新しいことをやりたかった、そんな心情や意図が『ディシプリン』には表れているように思えます。もう一つ言えることは、ディシプリン・クリムゾンのライヴ映像はぜひご覧になったほうがいい、ということです。フリップも変な髪形と趣味の悪い服装をやめ、英国紳士然としていますし、エイドリアン・ブリューをはじめ他のメンバーも楽しそうです。やはりクリムゾンはライヴ・バンドなんだなあと改めて思いました。


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キング・クリムゾン 『USA』

King Crimson / USA (2004 Digital Remaster, original released 1975)

KingCrimson_USA.jpg
01.Walk On...No Pussyfooting
02.Larks' Tongues in Aspic Part2
03.Lament
04.Exiles
05.Asbury Park (improvisation)
06.Easy Money
07.21st Century Schizoid Man
08.Fracture (previously unreleased)
09.Starless (previously unreleased)


『アースバウンド』に続くキング・クリムゾン二枚目のライヴ・アルバムで、オリジナルのリリースは1975年。これを、音楽好きの友人の家でLPからカセットテープにダビングしてもらって聴いていた。フリップ&イーノ『No Pussyfooting』からの曲が流れ、次に「ラークス・タングズ…パート2」、「ラメント」そして「イグザイルズ」と続き、後半は即興演奏の「アズベリー・パーク」、途中でフェイド・アウトしてしまう「イージー・マネー」、最後に「スキツォイド・マン」という内容だった。

LPレコードという時間的制約がある以上仕方がないとはいえ、「イージー・マネー」の中途半端さは不満が残る。詳細はわからないが、当時クリムゾンはすでに解散しており、クリムゾンでもう少し稼ぎたいEGの主導で『USA』の制作が進められたのではないかと想像する。当然フリップも関わったと思うが、さほど情熱をかけて作られたとは思えないし、CDの時代に入ってからもなぜか『USA』はCD化されることはなかったと思う。

そんなわけで、クリムゾンのアルバムの中では印象の薄い『USA』である。だが、「ラークス・タングズ・クリムゾン」(仮称)のライヴの様子を伝える唯一の音源だったわけで、なんだかんだいいながらもそれを聴くしかなかった。その後、ラークス・タングズ・クリムゾンのアメリカ公演の集大成ともいえる『グレート・ディシーヴァー』ボックスセットの発売によって、『USA』の存在価値も失われたかのように思えた。

ところが、2002年になって限定盤『USA』が出て、続いて2004年に発売された紙ジャケット仕様の『USA』をついふらふらと買い求めてしまった。カセットテープをどこかへ紛失してしまい、もう何年も聴いていなかったからだろうか、もう一度『USA』を聴いてみたくなったのだ。なにしろ元のLPには含まれていなかった「スターレス」と「フラクチュア」も収録しているようである。

(1)はブライアン・イーノとの共作一枚目『No pussyfooting』からの曲で、テープによる再生音が流されたものと思われる。(2)はライヴでは最後に使われることが多い曲だが、『USA』ではいきなり冒頭で使われている。ただし、『USA』の曲順は後で編集されたような雰囲気があり、ライヴの実況そのままではない可能性が高い。ヴァイオリンのソロはエディ・ジョブソンによって後からスタジオでオーバーダブされたもので、なるほどデヴィッド・クロスより押しの強いフレーズになっている。

エディ・ジョブソンの起用がフリップの発案なのかは不明。だが『USA』がEGの主導で制作されたとするなら、当時ロキシー・ミュージック(EG所属)に参加していたエディ・ジョブソンの起用を決めたのもEG側かもしれぬ。後に『レッド』で残った三人にジョブソンを加えた形でクリムゾンの再結成を考えたようだがフリップが早々に離脱、残った三人はアラン・ホールズワースを迎えてUKを結成した。UKでの活躍などを見ていると、ジョブソンがクリムゾンに正式加入しても何ら不思議はないと思うのは私だけだろうか。

主にカセットテープを聴いていたので、とにかく音が新鮮に感じる。(5)はスネアのロールから始まり、ウェットンのベース、フリップのギターが絡んで進んでいくが、クロスはメロトロンを演奏している。確かに、この即興はウェットンとブルフォードが引っ張っているといっても過言ではなく、クロスは引き立て役に回っているようにも聞こえる。ウェットンとブルフォードがバンドのサウンドをラウドネス指向にしすぎたこと、それがクロス脱退の要因の一つだったそうであるが、なるほどそう言われてみるとウェットンのベースは騒々しく思えてくる。

(6)は元のLPレコードでは後半部分がカットされていたので、ここでは完全版が聴けるのかと期待したがそのままだったのでいささかがっかりである。(7)のヴァイオリン・ソロもエディ・ジョブソンによるもの。(8)は『スターレス・アンド…』に収録されているものと同じかと思ったが、それはコンセルトヘボウでライヴ録音されたもので、『USA』の音源はアズベリー・パークでのライヴ録音であると付属の資料にある。確かに聴いてみるとコンセルトヘボウのパフォーマンスのほうがスピード感があり、先にアルバムに収録されたことだけのことはある、と納得できる。

(9)はブートレグでもお馴染みの音源で、ヴァイオリンによるテーマ部分のメロディは『レッド』収録のそれとは少し違っているし、ウェットンもいきなり歌詞を間違えているのは笑ってしまうけど、クリムゾンは作った曲をライヴで磨いて録音するというか、ライヴが命のバンドであるのがよくわかる感じがする。最後の二曲の追加はうれしいけれど、やはりなんだか付け足した感じがしないでもなく、実況にかなり近い形の『USA完全エディション』の発売を夢見ている。


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【付記】
● 『USA』という題名からわかるように、ものすごい数のアメリカ・ツアーの音源をピックアップして編集したものが本来の意味でしょうから、『USA完全エディション』はやはり無理があるのかもしれません。その役割はたぶん『グレート・ディシーヴァー』が担っている、ということなのでしょうね。


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キング・クリムゾン 『レッド』

King Crimson / Red (1974)

KingCrimson_Red_01.jpg
1.Red
2.Fallen Angel
3.One More Red Nightmare
4.Providence
5.Starless


自分にとってキング・クリムゾン入門はこの『レッド』によってだった。まだCDが出る前で1980年頃だったろうか、音楽好きの友人の家でLPレコードで聴かせてもらった。とにかくその破壊的かつ重金属的なサウンドに圧倒されてしまったのである。1970年代のギター・ヒーローに憧れながらもブルースやジャズに興味を持ち、パンクにはちょっと距離を置いていたロック小僧は、その異質なサウンドの虜になってしまったわけですね。

アメリカ・ツアーから帰るとデヴィッド・クロスが脱退、残されたフリップ、ウェットン、ブルフォードが『レッド』のジャケットの表写真に見える。『レッド』はこの三人に加え、かつてクリムゾンでプレイしたイアン・マクドナルド(kbd, as)、メル・コリンズ(ss)、そしてマーク・チャリグ(cornet、「アイランズ」のコーダのホーン・ソロ)やロビン・ミラー(oboe、『リザード』の「ボレロ」や『アイランズ』の「カモメの歌」など)らがゲスト参加している。

(1)は三人だけで録音されたと思われるへヴィなインストゥルメンタル曲。ギターのパートは重厚さを出すためユニゾンでマルチ・トラックのオーバー・ダビングがなされている。人気曲だが、ヘヴィ・ロック・アンサンブルともいえるものでソロ・パートなど遊びがないのが特徴。1981年以降のライヴ映像を見ると、フリップは本当につまらなさそうにこの曲を演奏しているのがわかる。ブルフォードのドラミングは素晴らしく、これだけでも聴いている価値がある。

(2)は(1)のヘヴィネスから一転して静かなヴォーカル曲になる。フリップのアコースティック・ギターの伴奏が魅力的で、ロビン・ミラーのオーボエによるオブリガートも美しい。(1:40)からフリップによるアルペジオをベースにマーク・チャリグのコルネット・ソロが入る。(5:05)から展開部に入りロック調になるが、そこでも主旋律とその3度下や上ををなぞるギターの掛け合いが美しい。

(3)はメイン・リフからヴォーカル・パート、そしてフリップのアルペジオをベースにしたアドリブ・パートから構成されている。メイン・リフではへヴィなフリップのギターとウェットンのベースが炸裂し、それに掛け合うブルフォードの魅力が全開状態で、何度聴いても勝手に手が動いてしまいそうになるのには苦笑するしかない。(2:06)あたりからアルペジオがベースのアドリブ・パートに入り、イアン・マクドナルドがアルトサックスを吹いているのが感動的だ。曲は飛行機が墜落したかのように途中で寸断する形で終わっている。

(4)はアメリカ・ツアーのライヴ録音で、ロード・アイランド州プロヴィデンスにおける即興演奏であるが、最初聴いたときはてっきりスコアのある「現代音楽」だと思っていたほどである。デヴィッド・クロスによる不安な出だしから約5分間その調子が続くが、(4:42)からブルフォードお得意のバスドラムとリムショットによるリズムが入ってくる。これは他の曲でもしばしば彼が見せる不思議なリズムパターンである。

KingCrimson_Red_02.jpgそして(5:04)からは音量を上げたウェットンのベースとロング・トーンのフリップのギターが絡み合い、ブルフォードのドラミングも熱が入る。最後にもう一度、デヴィッド・クロスの不安なヴァイオリンに戻ってくる。最後はテープを早回ししたような感じで締めくくられるが、おそらくこれはLPレコードという時間的制約によるもので、後の『グレート・ディシーヴァー』ではこの後も演奏が続いていることが確認できる。

冒頭の「レッド」が危険な状態(レッド・ゾーン)に入ったことを象徴しているとすれば、(5)の「スターレス」は一つの終末を象徴していると言えるかもしれない。出だしの荘厳なまでのメロトロンにフリップのくぐもったようなエレクトリック・ギターが絡むが、このパートはライヴではクロスが弾いていたもの。ライヴ盤を聴くと、ここのメロディも若干変わっているのをご存知かと思う。

ヴォーカル・パートに入ると、メル・コリンズのソプラノサックスによるオブリガートがウェットンのヴォーカルに寄り添い、それは3ヴァースまでたっぷり続く。ヴォーカル・パートの後はアドリヴ・パートが続き、フリップとウェットンの掛け合いの後、かなりアップテンポになるが、そこで煌めくようなサキソフォーンを吹いているのがイアン・マクドナルド。ひょっとすると『宮殿』の「スキツォイド・マン」のめるくめくようなサックス・パートより早いかもしれないほどだ。

マクドナルドによるアルトサックスのソロ後、一瞬ブレイクする形でブルフォードのハイハットに支えられ、サキソフォーンによるメインテーマが鳴り響くが、どうもそれは二本のサックスであるように聴こえてならない。メル・コリンズとイアン・マクドナルドが二人で吹いているとしたら……だがこれは想像の域を超えない。サキソフォーンによるテーマの後は各奏者が過熱した頂点でもう一度、メロトロンを伴ったメイン・テーマがすべてを包み込み、重厚な残響が続いて曲は終わる。


≪ 『スターレス・アンド…』へ  『USA』へ ≫


【付記】
● 今回の聴取はクリムゾンのCD中もっとも「音が悪い」と思われる、EGによる1980年代リリース物で行いました。巷では『レッド 40周年記念盤』や『ロード・トゥ・レッド』などの音の良いディスクも流通しているようですが、音の悪いEG盤でも、『レッド』の素晴らしさは味わえたように思えます。現物を見ると1988年に購入しているようで、なんと3200円していますね。そんな時代だったわけです。これ、当時のサントリー・リザーヴとほぼ同じ値段ですね。


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ブライアン・イーノ 『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』

Brian Eno / Here Come the Warm Jets (1974)

Eno_HereComeTheWarmJets.jpg
1.Needles in the Camel's Eye
2.Paw Paw Negro Blowtorch
3.Baby's on Fire
4.Cindy Tells Me
5.Driving Me Backwards
6.On Some Faraway Beach
7.Blank Frank
8.Dead Finks Don't Talk
9.Some of Them Are Old
10.Here Come the Warm Jets


現在ではダニエル・ラノワと並んでプロデューサーとして知られるブライアン・イーノだが、1970年代は髪を伸ばしてバイセクシャル的な雰囲気を前面に出し、ロキシー・ミュージックでキーボード(シンセサイザー)やマルチトラック・テープ機などを操作する人だった。その頃のイーノを見たわけではなく、1980年代になってから音楽好きの友人に教えてもらったのである。

詳しいことは知らないが、CD付属の資料によるとイーノは美術学校で学びながら音楽活動をしていたようで、作詞と効果音を担当していた、とある。彼自身、鍵盤楽器やギターを演奏するけれど基本的には「非音楽家」として音楽にかかわるというのがイーノの持ち味なのだろう。だからふつうのロック/ポップのサウンドとは違う独特のテイストが本作にも感じられて何かそれが新鮮だった。

録音に参加したメンバーはロキシー・ミュージックからフィル・マンザネラ(g)、アンディ・マッケイ(sax)、キング・クリムゾンからロバート・フリップ(g)とジョン・ウェットン(b)。『801ライヴ』でも参加したビル・マコーミック(b)のほか、クリス・スペディング(g)、サイモン・キング(ds, perc)。

イーノは美術学校で知り合ったアンディ・マッケイの紹介でロキシー・ミュージックに参加し、ブライアン・フェリーに追い出された(?)ようで、フェリー以外のロキシーの面々とは交友があるのだろう。キング・クリムゾンは解散してフリップ&イーノとして活動、ロキシー・ミュージックも活動休止の時期だったことでこのようなメンバーが集まったのだろうと想像する。

(1)はふつうのロックのノリではないがなぜか新鮮さがある。マンザネラのギター・ソロの後でいったんストップをかけるのはクリムゾンの「スキツォイド・マン」みたいだ。ただしテンションがまったく違うのは言うまでもない。(2)ではふつうそんな歌い方はしないよな、といいたくなるイーノの変なヴォーカルで思わず噴き出しそうになる。これを人がいるところで聴いていたら変人扱いされること請け合いである。

(3)は(1:26)から(4:26)まで続くロバート・フリップのかなり長いソロが入っている。キング・クリムゾンを離れたフリップはなかなか面白い演奏をするのが意外な感じである。ジョン・ウェットンも(3)でベースを弾いているようだ。(4)はミディアム・テンポの親しみやすい感じの曲。フィル・マンザネラとの共作のようで、マンザネラのねばりつくようなギター・ソロが聴ける。

(5)はいかにもイーノらしい作風で、ふつうのロック・ミュージシャンだったらまずやらないだろうな、という曲。イーノの変なヴォーカルがここでも大活躍(?)している。この曲も人前で聴くのは要注意、確実に変人扱いされると思う。(6)は題名からしてどこか夢見るような曲。バックに入るコーラスや音を弱めてエコー(リバーヴ?)を聞かせたドラムなど、全体の音作りが後の「アンビエント」につながるように思える一曲だ。

ゆったりと流れる川のような(6)から一転して(7)はフリップとイーノの共作で、イーノ流ファンク(?)とでもいうべき不思議なリズムである。たぶんこれが本作の中で最も動きの激しい曲ではないかと思う。(00:53)あたりから始まるフリップのソロは『アイランズ』における「Sailor's Tale」のような激しさを見せる。イーノのヴォーカルも呪術的なあやしさに満ちみちている。

(8)はこれこそイーノ、とでもいうべき作品だろう。静かな曲なのだが背後で「Oh! No! Oh! No!……」と変なヴォーカルが炸裂、これも人前で聴いていると変人扱いまちがいなしの一級品である。この「Oh! No!」はトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが例のぶかぶかのジャケットを着て首を前後に動かしながらやるとぴったりくるんじゃないかといつも思ってしまうのは私だけだろうか。

(9)は後の『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』の後半に入っていてもおかしくない感じの静かな曲。途中スライド・ギターのようなものが入るが、ひょっとするとスティール・ギターかもしれない。それらが入ってもハワイアンやウエスタンにならぬのがイーノ。(10)はアルバム・タイトル曲だが全編リフレインで、後半にぼけた感じのヴォーカルが入ってくる。

今日改めて聴いてみても古臭さを感じさせないところが不思議である。非音楽家としてのアプローチがユニークだったことに加えて、イーノのセンスが全編にわたって発揮されていることが要因だと思うが、そうしたイーノの立ち位置をよく理解して制作に参加したミュージシャンたちの働きも大きいと思う。なれど人前で聴くには要注意の楽曲が数曲入っているので、自室あるいは外でならiPodか他の音楽プレーヤーで聴くのがお勧めである。


≪ 『アナザー・グリーン・ワールド』へ  ≫


【付記】
● 久しぶりにイーノを聴いてみましたがやはり面白いですね。歌詞はイーノが書いたものですが、意味はわかりにくいものが多く、海外でも「こう聞こえた」と何通りものヴァージョンがあるようです。1970年代の終わり頃、音楽雑誌でイーノの歌詞の翻訳したものが特集であったりして、それは楽しかったものでした。


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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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