SHOGUN 『SHOGUN THE BEST』

SHOGUN / SHOGUN THE BEST(1997, compilation)

SHOGUN_TheBest.jpg
01. As Easy As You Make It
02.Lonely Man
03.Bad City
04.LIVING WITHHOUT YOUR LOVE
05.友よ、心に風があるか
06.Do It TO Yourself
07.Otokotachi NO Melody
08.サタデー・サイクロン
09.走れ!オールドマン
10.風に抱かれて
11.Sunrise Hightwey
12.ONE ONE ONE(You're the one)
13.SIR PEER
14.UNDER THE RAINBOW(Tilopa's Song)
15.Imagination
16.You turn me on
17.castle walls


1970年代の終わり頃、『俺たちは天使だ』というテレビドラマがとても面白く、楽しみにしていた。「運が悪けりゃ死ぬだけさ」というオープニング曲の歌詞も、開き直ったような潔さが格好良かった。少し後で『探偵物語』が始まったときはもうぶったまげた、というかすっかり魅せられてしまったのである。オープニング曲とエンディング曲が恐ろしいほど格好良く、サウンドがいわゆる「和製ロック」とまるで違っていたのに驚いた。

それらを演奏しているのがSHOGUN(本当はOの上にマクロン:長音記号が入るのが正式名称だが、環境依存文字のため外して表記する)というバンドによるものだと知ったのはずっと後のこと。YouTubeなどでもSHOGUNの演奏を視聴できるのだが、この際いい音で聴いてみたくなってCDの購入に至った。ついでに村下孝蔵と南佳孝のベスト盤も買ってしまった。

結成当時のメンバーは芳野藤丸(g, vo)、大谷和夫(kd)、ケーシー・ランキン(g, vo)、山木秀夫(ds)らで、全員がすでに10年以上スタジオ・ミュージシャンとして活躍していたという。『探偵物語』のオープニングとエンディング曲はドラムスがとくに秀逸だと感じたが、山木秀夫はその後、渡辺香津美バンドや近藤等則&IMAに参加しており、レコーディング参加を見てもすさまじいほどである。

英語の歌詞はケーシー・ランキンが書いており、作曲は主に芳野藤丸、編曲は大谷和夫によるもののようで、これはCDのブックレットのクレジットを見ればわかる。その後SHOGUNのことを全く聞かなくなったと思っていたら、芳野と大谷が薬物所持により、わずか二年足らずで活動を停止、とウィキペディアにある。残念な話である。

早速聴いてみると、やはりすごい。芳野藤丸のギターのカッティング、無茶苦茶格好良いですね。サウンドはロック、なんだけど、ファンクに傾いているんじゃなかろうか。基本はスティーリー・ダンとリトル・フィートの中間くらいのイメージで、そこにコーラスとブラスを入れてファンキーに仕上げている。ケーシー・ランキンの影響でカントリーよりになることもあり、そんなときはクロスビー、スティルス&ナッシュみたいになるが、おおむねファンキー路線である。

ファンクといってもジェームズ・ブラウンの感じではなくて、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかパーラメント、ファンカデリックみたいに洗練されたスタイル。さすがにEW&Fまではいかないとしても、芳野のヴォーカルは高めキーで、ファルセット(フェイク)・ヴォイスでかなり高域まで出すことができるようで、コーラス部分を見事に仕上げている。

この路線って、素人のロックバンドはたいていやりたがらない(というかできない)んですよね。1970年代の終わり頃だから、ギター・ヒーローの真似事ばかりやりたがる小僧たちだった。ギター1本でフォークか、テクのなさに開き直ってパンクに走る(これがいちばん女の子には受けたと思う)か、70年代ロックのコピーか、それしか選択肢がなかったわけです。ジャズとかフュージョンは大学に入ってから、という感じだった。

だれもろくに歌えないのにみんなギターソロをやりたがる。何なんだよ、お前ら、ってベースとヴォーカルがこっちに回ってきたっけ……いろんなことを思い出しながらSHOGUNを聞いた。やはり「Bad City」や「Lonley Man」そして「男たちのメロディ」以外はあまりぱっとしない感じだけど、聴きこむほどに彼らの演奏テクニックがすごいことがわかるし、1979~80年で洗練されたファンクをやってる日本のロックバンドって、他になかったんじゃないかと思う。もちろん、これは私が知らないだけ。


【付記】
● 初めてちゃんと聴いたSHOGUN。なかなか良かったです。本当にね、後期スティーリー・ダンとかリトル・フィート、クロスビー、スティルス&ナッシュみたいなテイストが基本にあって、そこにブラスを加えてファンキーに振った感じ、とでも言えばいいのでしょうか。初期の活動停止が本当に残念なバンドです。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
スポンサーサイト

キング・クリムゾン 『ディシプリン』

King Crimson / Discipline (30th Anniversary Edition, original released 1981)

KingCrimson_Discipline01.jpg
1. Elephant Talk
2. Frame by Frame
3. Matte Kudasai
4. Indiscipline
5. The Hun Ginjeet
6. The Sheltering Sky
7. Discipline
8. Matte Kudasai (alternative version)


1970年代の終わり頃、音楽好きの友人にキング・クリムゾンを教わった。その異質なサウンドにのめりこんでしまった私(乙山)は、友人に頼み込んでクリムゾンのLPをカセットテープにダビングしてもらい、何度も聴いていた。もうすでに終わったものとばかり思っていたクリムゾンが、1981年に再結成したというのに衝撃を受け、FMラジオで渋谷陽一が特集していたのをきっちり「エアチェック」して新しいクリムゾンを聴いたのを覚えている。

ところが、出てきたサウンドが従来とあまりにかけ離れているように感じて「えっ」と思ってしまったのである。なんていうか、拍子抜け、あるいは期待外れ、だろうか。『スターレス・アンド…』と『レッド』があまりにもシリアスだったこともあり、どこかでそれらを継承したものを期待していたのかもしれない。音楽好きの友人も驚きながら、少し複雑な表情をしていた。

メンバーはロバート・フリップ(g)、エイドリアン・ブリュー(vo, g)、トニー・レヴィン(b, stick)そしてビル・ブルフォード(ds)の四人。ブリューとレヴィンはアメリカ人なので、ああそうか、クリムゾンはもう「イギリス」のバンドではなくなったんだな、と思った。もともと、クリムゾンはメンバーが変わることが多いから、こだわりはないんだけど……ブルフォードが参加しているのが妙に嬉しかった。

(1)はレヴィンによるチャップマン・スティックという楽器を使ったイントロの後、ブリューのヴォーカルが入るのだが、歌詞というよりは単語を並べただけという感じがする。しかもAから始まってB、C、Dと続き、最後にElephant talk、その後に象の鳴き声のギターによる模写、って思わず「嘘でしょ?」と言いたくなるぶっ飛びぶりである。これはジョークだ、というか悪夢だ、とか思いながらも笑ってしまう。これは笑うための曲ですよね、ちがうのかなあ?

(2)はフリップとブリューによる速弾きに度肝を抜かれる。どうやって弾いているんだろうと思ったが、ライヴ映像を見ると、左手が盛んに動いている。なんか複雑なコードなんだろうなあ。歌いながらあれを弾くのは大変だろうと思う。(3)はブリューのヴォーカルが大活躍するスローテンポの曲で、カモメの鳴き声のような音もブリューのスライド・ギターによるもの。ボトルネックをフレットの上方から(多くは下方からだが)当てているのを映像で確認した。

(4)はテンションの高いブルフォードのドラミングが光る曲で、ヴォーカルは歌うというより「語る」感じ。CDやLPで聴いているとあまりぱっとしない感じがするけれど、ライヴではなんだか格好いいのが不思議である。(5)はお祭りソングという感じで、とにかく「明るく、楽しい」雰囲気でノリのいい曲。エイドリアン・ブリューのキャラクター全開で、ステージでも楽しそうに笑顔で飛び跳ねて演奏する姿が思い浮かぶ。

(6)はブルフォードがドラムセットを離れ、左手に木魚(?)のようなものを持ち、右手で丸い先のついた棒で叩くリズムの繰り返しの上に、フリップのギター、ブリューの変なサウンドが繰り広げられた後、最後はブルフォードのリズムで終わる。(7)はギターのリフレインを全面的に押し出したインストゥルメンタル曲。リーグ・オブ・ジェントルメンで演奏した「ヘプタパラパシノク」をさらに進化・発展させたような印象で、淡々と進む中にもきらりと光るものを感じる佳曲に思う。

元々この四人でスタートした時、ディシプリンという名前でライヴを行ったそうだ。その後アルバムを出す際にEGとの交渉でキング・クリムゾンに名前を変えたと聞いている。そんな経緯もあって、この時期のクリムゾンを認めたがらない人も少なくないようだ。不満の多くはシリアスで重厚だったクリムゾンが「軽く、明るく、ポップ」になってしまったことに向けられているのではないかと想像する。「ラークス・タングズ…パート2」は、そんなふうに笑ってやるもんじゃないんだ、という気持ちもわからぬではない。

ポップ、エスニック、変拍子、リフレインのいい意味での折衷主義。変拍子のリフレインは少しずつずれていくようで、どこかで巻き戻しをしないといけないのだが、ブルフォードのドラミングが絶妙なのか、本来ロックには向かないような素材が、見事に「ロック」になっているように思えた。ここが非常に重要な点で、ロックになっているということは、それなりにポピュラリティーを有しているということだ。ディシプリン・クリムゾンはあまり人気がないようだけど、個人的にはこの時期のクリムゾンはそんなに嫌いではなく、わりと好んで聴いている。


【付記】
● フリップとしては過去を引きずりたくなかったのでしょうね。何かこう、新しいことをやりたかった、そんな心情や意図が『ディシプリン』には表れているように思えます。もう一つ言えることは、ディシプリン・クリムゾンのライヴ映像はぜひご覧になったほうがいい、ということです。フリップも変な髪形と趣味の悪い服装をやめ、英国紳士然としていますし、エイドリアン・ブリューをはじめ他のメンバーも楽しそうです。やはりクリムゾンはライヴ・バンドなんだなあと改めて思いました。


≪ 『USA』へ  『ビート』へ ≫


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン

キング・クリムゾン 『USA』

King Crimson / USA (2004 Digital Remaster, original released 1975)

KingCrimson_USA.jpg
01.Walk On...No Pussyfooting
02.Larks' Tongues in Aspic Part2
03.Lament
04.Exiles
05.Asbury Park (improvisation)
06.Easy Money
07.21st Century Schizoid Man
08.Fracture (previously unreleased)
09.Starless (previously unreleased)


『アースバウンド』に続くキング・クリムゾン二枚目のライヴ・アルバムで、オリジナルのリリースは1975年。これを、音楽好きの友人の家でLPからカセットテープにダビングしてもらって聴いていた。フリップ&イーノ『No Pussyfooting』からの曲が流れ、次に「ラークス・タングズ…パート2」、「ラメント」そして「イグザイルズ」と続き、後半は即興演奏の「アズベリー・パーク」、途中でフェイド・アウトしてしまう「イージー・マネー」、最後に「スキツォイド・マン」という内容だった。

LPレコードという時間的制約がある以上仕方がないとはいえ、「イージー・マネー」の中途半端さは不満が残る。詳細はわからないが、当時クリムゾンはすでに解散しており、クリムゾンでもう少し稼ぎたいEGの主導で『USA』の制作が進められたのではないかと想像する。当然フリップも関わったと思うが、さほど情熱をかけて作られたとは思えないし、CDの時代に入ってからもなぜか『USA』はCD化されることはなかったと思う。

そんなわけで、クリムゾンのアルバムの中では印象の薄い『USA』である。だが、「ラークス・タングズ・クリムゾン」(仮称)のライヴの様子を伝える唯一の音源だったわけで、なんだかんだいいながらもそれを聴くしかなかった。その後、ラークス・タングズ・クリムゾンのアメリカ公演の集大成ともいえる『グレート・ディシーヴァー』ボックスセットの発売によって、『USA』の存在価値も失われたかのように思えた。

ところが、2002年になって限定盤『USA』が出て、続いて2004年に発売された紙ジャケット仕様の『USA』をついふらふらと買い求めてしまった。カセットテープをどこかへ紛失してしまい、もう何年も聴いていなかったからだろうか、もう一度『USA』を聴いてみたくなったのだ。なにしろ元のLPには含まれていなかった「スターレス」と「フラクチュア」も収録しているようである。

(1)はブライアン・イーノとの共作一枚目『No pussyfooting』からの曲で、テープによる再生音が流されたものと思われる。(2)はライヴでは最後に使われることが多い曲だが、『USA』ではいきなり冒頭で使われている。ただし、『USA』の曲順は後で編集されたような雰囲気があり、ライヴの実況そのままではない可能性が高い。ヴァイオリンのソロはエディ・ジョブソンによって後からスタジオでオーバーダブされたもので、なるほどデヴィッド・クロスより押しの強いフレーズになっている。

エディ・ジョブソンの起用がフリップの発案なのかは不明。だが『USA』がEGの主導で制作されたとするなら、当時ロキシー・ミュージック(EG所属)に参加していたエディ・ジョブソンの起用を決めたのもEG側かもしれぬ。後に『レッド』で残った三人にジョブソンを加えた形でクリムゾンの再結成を考えたようだがフリップが早々に離脱、残った三人はアラン・ホールズワースを迎えてUKを結成した。UKでの活躍などを見ていると、ジョブソンがクリムゾンに正式加入しても何ら不思議はないと思うのは私だけだろうか。

主にカセットテープを聴いていたので、とにかく音が新鮮に感じる。(5)はスネアのロールから始まり、ウェットンのベース、フリップのギターが絡んで進んでいくが、クロスはメロトロンを演奏している。確かに、この即興はウェットンとブルフォードが引っ張っているといっても過言ではなく、クロスは引き立て役に回っているようにも聞こえる。ウェットンとブルフォードがバンドのサウンドをラウドネス指向にしすぎたこと、それがクロス脱退の要因の一つだったそうであるが、なるほどそう言われてみるとウェットンのベースは騒々しく思えてくる。

(6)は元のLPレコードでは後半部分がカットされていたので、ここでは完全版が聴けるのかと期待したがそのままだったのでいささかがっかりである。(7)のヴァイオリン・ソロもエディ・ジョブソンによるもの。(8)は『スターレス・アンド…』に収録されているものと同じかと思ったが、それはコンセルトヘボウでライヴ録音されたもので、『USA』の音源はアズベリー・パークでのライヴ録音であると付属の資料にある。確かに聴いてみるとコンセルトヘボウのパフォーマンスのほうがスピード感があり、先にアルバムに収録されたことだけのことはある、と納得できる。

(9)はブートレグでもお馴染みの音源で、ヴァイオリンによるテーマ部分のメロディは『レッド』収録のそれとは少し違っているし、ウェットンもいきなり歌詞を間違えているのは笑ってしまうけど、クリムゾンは作った曲をライヴで磨いて録音するというか、ライヴが命のバンドであるのがよくわかる感じがする。最後の二曲の追加はうれしいけれど、やはりなんだか付け足した感じがしないでもなく、実況にかなり近い形の『USA完全エディション』の発売を夢見ている。


≪ 『レッド』へ  『ディシプリン』へ ≫


【付記】
● 『USA』という題名からわかるように、ものすごい数のアメリカ・ツアーの音源をピックアップして編集したものが本来の意味でしょうから、『USA完全エディション』はやはり無理があるのかもしれません。その役割はたぶん『グレート・ディシーヴァー』が担っている、ということなのでしょうね。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン

アート・ペッパー 『ジ・アート・オブ・ペッパー』

Art Pepper / The Art of Peper(1957)

TheArtOfPepper.jpg
01. Holiday Flight
02. Too Close for Comfort
03. Long Ago (And Far Away)
04. Begin the Beguine
05. I Can't Believe That You're in Love With Me
06. Webb City
07. Summertime
88. Fascinating Rhythm
09. Body and Soul
10. Without a Song
11. Breeze and I
12. Surf Ride


アート・ペッパーはひょっとしたら(というかたぶん)チャーリー・パーカーより好きなアルト・サックス奏者かもしれない。チャーリー・パーカーの演奏は速過ぎるし何を吹いているかよくわからぬのは己の修行不足であるけれど、別に修行などしなくてもすっと耳に心に入ってくるようなジャズが好きである。ジャズ・ヴォーカルが好き、というのもそんな理由からなのかもしれない。

そういうタイプのジャズ奏者としてレスター・ヤングやルイ・アームストロング、スタン・ゲッツやマイルス・デイヴィスらがいると思うが、アート・ペッパーもそういうジャズ奏者の一人ではないかと思う。とにかく「聴けばわかる」のである。私(乙山)が本当に音楽的にわかっているかどうかはおおいに怪しいのだが、音楽的になどわかってなくともよい。感覚的に良ければ、それでいい(おいおい)のである。

今回聴いたのは『ジ・アート・オブ・ペッパー』(1957)で、「オメガ・セッション」とも呼ばれている盤。詳細はわからぬが、もともとLPレコードの形ではなく、オープンリール・テープの形で販売されたという珍しいものだそうだ。オリジナルのそれを聴こうとすれば、オープンリール型のテープ・デッキを用意しないといけない。昔、カセットデッキで音楽を聴いていた頃、いつかは欲しいなあと思っていたオープン型テープデッキである。

もっとも、LPレコードとしても幾つかの盤が発売されていたようだが、演奏時間の制約上、選曲してプレスするしかなかったものと想像する。CD時代になってようやく全貌が明らかになったということだが、昔からのファンでない私は2006年発売のCDを入手した。ジャケットはオレンジ色だが、黄色のジャケットもあるようで、その違いの意味するところは不明である。

録音メンバーはアート・ペッパー(as)、カール・パーキンス(p)、ベン・タッカー(b)、チャック・フローレス(ds)のカルテット編成。(1)はペッパーの初リーダー作『サーフ・ライド』でも吹き込まれたミディアム・テンポの曲。テナーを思わせるような音域から快調に飛ばすペッパーの後をパーキンスのピアノソロが受け継ぎ、終盤ではペッパーとフローレスの4小節交換のやりとりの後、エンディングに。

(2)はブロードウェイのミュージカルでヒットした曲で、サミー・デイヴィス・Jrの歌がYouTubeで聴ける。元歌が相当に洗練されたもので、ペッパーがどう料理するのかが聴きどころだが、都会的で洗練された路線を狙っていたスタン・ケントン楽団出身のペッパーにとっては馴染みやすいというか、むしろお得意の曲なのだろう、のびのびと元歌を壊すことなく、歌いあげるように演奏する。

(3)はアップテンポでかなりビ・バップよりに仕上がっている。後半ではペッパー、パーキンス、フローレスの三者が自由闊達に4小節交換を楽しんでいる。(4)はコール・ポーター作のよく知られた曲で、いろんなミュージシャンがカヴァーしており、クリスティ原作の映画『地中海殺人事件』(1982)の挿入曲として使われている。出だしはなんだかよくわからないが、ペッパーのアルトが主題を吹くとたん「ああ、これか」となるはずだ。

(5)はタッカーのランニング・ベースとペッパーのアルトだけで始まり、(0:40)あたりからフローレスのブラッシュ・プレイが入り、ピアノは(1:10)を過ぎたころに入るという趣向が洒落ている。(6)はバド・パウエル作の曲だが、この曲だけ他と違ってハイハットがやたらうるさい。録音あるいはミックスダウンのときにミスしたのか、あるいは意図的なものなのか不明。

(7)はビリー・ホリデイやジャニス・ジョプリン、ジョン・コルトレーン、新しくはノラ・ジョーンズらのカヴァーで知られるジョージ・ガーシュイン作の曲。1920年代のアメリカにおける黒人の過酷な生活を歌った内容で、ペッパーのプレイもどこか抑え気味ではあるけれど、そこに込められた情感が伝わってくるようだ。(8)もガーシュインの曲で、ミディアム・テンポを少し上げたくらいの軽快なノリにペッパーとパーキンスのやりとりが楽しい。

(9)はコールマン・ホーキンスも取り上げてヒットしたバラッドで、「身も心も」というほどの意味だろうか。ゆったりと情感を盛り上げていくペッパーのアルトはときにソプラノサックスかクラリネットを思わせるところへ来たか、と思えば低音部へひらりと舞い降りてくる瞬間が心地よい。パーキンスのエレガントなピアノソロが受け継ぎ、短いパッセージのベースソロへ渡し、もう一度ペッパーで閉じる。(10)はミディアム・テンポでミュージカルのヒット曲。ところどころに遊びが感じられるのも楽しい。

(11)はラテン曲が原曲らしいのだが、ここでは「サンバ」とか「ボサノヴァ」という感じにはなっておらず、ピアノとドラム、そしてベースのリズムの取り方がなんとなくそれっぽい感じ、という雰囲気。(12)はペッパー作の曲で、同タイトルの初リーダー・アルバムにも収録されているペッパーの「お気に入り」なのだろう。CD付属の解説によると「ブルース」だということだが、テンポが速いのでそうだとは一聴してわからぬくらいである。


【付記】
● 本アルバムはブロードウェイでヒットした曲をたくさん取り上げて親しみやすい構成になっているうえに、ペッパーも原曲の感じをこわさぬように演奏していることもあってたいへん「わかりやすい」のですが、そのぶん少しだけ「かったるい」感じがしないでもなく、それは「ビギン・ザ・ビギン」などに表れているように感じるのは乙山だけでしょうか。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン

『デューク・エリントン・ミーツ・コールマン・ホーキンス』

Duke Ellington Meets Coleman Hawkins / Same (1962)

DukeEllingtonAndColemanHawkins.jpg
01.Limbo Jazz (05:15)
02.Mood Indigo (05:56)
03.Ray Charles' Place (04:05)
04.Wanderlust (05:00)
05.You Dirty Dog (04:20)
06.Self Portrait (Of the Bean) (03:53)
07.The Jeep Is Jumpin' (04:50)
08.The Ricitic (05:53)


デューク・エリントンは晩年、幾名かのジャズ奏者とセッションをした音源を残しているが、今回はテナー・サックス奏者のコールマン・ホーキンスとの共演『デューク・エリントン・ミーツ・コールマン・ホーキンス』(1962)を聴いた。ホーキンスはフレッチャー・ヘンダーソン楽団のソロ奏者として活動し、ソロ名義『ボディ・アンド・ソウル』(1946)でも知られる、スウィング・ジャズの代表的テナー奏者である。

CD付属の資料によると、エリントン楽団にはベン・ウェブスターというテナーサックスの看板ソロ奏者がいたが、1943年にウェブスターが楽団を辞めると、エリントンはホーキンスの加入を考えていたらしい。だがそれは実現せず、1962年になってインパルスのプロデューサー、ボブ・シールによる企画で両者が共演することになったという。スウィングのビッグバンド出身のホーキンスにとって、エリントンはスウィング仲間のようなものではないかと想像する。

録音時のメンバーはデューク・エリントン(p)、コールマン・ホーキンス(ts)、ジョニー・ホッジス(as)、ハリー・カーニー(bs, bcl)、レイ・ナンス(cor, vln)、ローレンス・ブラウン(tb)、アーロン・ベル(b)、サム・ウッドヤーズ(ds)という顔ぶれで、エリントン楽団の精鋭あるいは重鎮たちによるコンボ・スタイルの演奏で、気心の知れた和気あいあいとしたセッションのように感じた。

(1)はそんな和んだ感じを象徴するかのような楽しい楽曲で、だれかが主旋律をハミングする声も収録されている。テーマを奏した後、ジョニー・ホッジスのとろけるようなアルトを受けて各メンバーがソロを受け継ぎ、ホークのソロは(3:33)あたりから。(2)はエリントン楽団の代表曲ともいえるもので、ホークのソロから始まる。1コーラスは低音を効かせた節回しで、2コーラスからは高音域に移行して滑らかなソロが展開、最後までホークの一人舞台といった趣きである。

エリントンは作曲するとき、この部分は楽団のこの人に演奏してもらおう、と明確なイメージを持っていたようで、そうした意図に演奏者がきっちり、ときにはそれ以上に応えることによってエリントン楽団の音楽が生まれるのだとわかる一瞬だ。エリントン楽団の演奏による「ムード・インディゴ」より曲想が膨らんでいるというかのめり込んでいるというべきか。それにしてもアンサンブルが美しいのはたまらない魅力だ。

(3)はうって変わってアップテンポの曲。(4)はミディアム・テンポのブルースでエリントンとホッジスの共作。ホッジスの比較的長めのソロが聴けるが、やはり「美音」のホッジスは健在で嬉しくなってくる。(5)はホークのソロの後、ホッジスが受け、ローレンス・ブラウンのトロンボーンが活躍している。

(6)はエリントンとビリー・ストレイホーンの共作でゆったりしたバラッド。のっけからホークのソロで始まるが、バラッドもじつに魅力的で、特に低音域に振りきったときの感じがたまらない。何か包容力のようなものを感じるんですね。この後をホッジスが受け継ぐのだが、ホッジスは高域よりに吹いていて、そのまろやかな感じはクラリネットかオーボエを思わせるものがある。

(7)のアップテンポでスウィンギーな感じはまるでカウント・ベイシー楽団のオール・アメリカン・リズムセクションのようではないか。曲によってはまったくスウィングしないエリントン楽団だが、ここでは各メンバーが快調に飛ばしまくっている感じがする。なんでもできるというか融通無碍、とでも言えばいいのだろうか。(8)ではレイ・ナンスがヴァイオリンを披露、多芸ぶりを発揮している。

コールマン・ホーキンスとエリントン楽団の相性はかなりいいんじゃないか、という感じがした。ホークもビッグバンドのメンバーだった人だから、楽団(というかエリントン)が何をやりたいのか、そのあたりをきっちり理解しているわけなんだろう。この時期のエリントン楽団のテナー奏者といえばポール・ゴンザルベスだろうけど、ホークはそれと違った味わいを出しているということで楽しい一枚だと思う。


【付記】
● エリントン楽団のフルメンバーで演奏する盛り上がりはありませんが、「バンドの中のバンド」によるコンボ・スタイルもいいですね。エリントン楽団のエッセンスを味わえるような感じとでも言えばいいのでしょうか。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/08 (4)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)