ジョニー・ウォーカー赤ラベル(ブレンデッド)
ジョニー・ウォーカー赤ラベルは、バランタイン・ファイネストやホワイトホース・ファイン・オールドあるいはスタンダード・グラウスなどと同様に、日ごろよくお世話になっているブレンデッドである。今は1000円ちょっとで買える安物スコッチのような印象が定着してしまったが、むかしは4000円以上していた「特級」の高級スコッチだった。
色々飲んでわかったような口を利いている私(乙山)だが、実際のところ、1989年の酒税法改正後にしかスコッチをあれこれ飲むことはできず、酒の量販店が幅を利かすようになるまではほとんど手が出なかったように思う。今は多くのスコッチのアルコール度数を40度にそろえているようだけど、昔は43度前後だったのを知っている人は知っていると思う。
小さなグラスに注ぐと、まずアルコールの強い揮発臭が来る。有機溶剤の香りに、どこかフルーティさが混じっている感じ。かすかにスモーキーさを感じる。口に含んでみると、若いアルコールの強い当たりが舌と喉に来て、次いでスパイシーさを感じる。それらが去った後に残るのはどこか香草を感じさせるモルトの甘み。スパイシーさの他に、微弱だがスモーキーさとピーティさも感じる。
ほんの少しの加水で若いアルコールの当たりは抑えられて飲みやすくなる。隠れていたスモーキーやピーティさが少し顔を出し、スパイシーさは少しだけ後退するものの、まだスパイシーさが中心になっている感じがする。トゥワイス・アップ(ウィスキー15ml:水15ml)までもっていくと、全体的にかなり薄まった感じがするけれど、スモーキーさやピート香が前に出てくると感じた。
それではこれ(ウィスキー30ml:水30ml)をオールドファッションド・グラスでやってみたらどうだろう。冷やされたぶんだけ、甘みが凝縮された感じになる。スパイシーさはかなり後退してもはや感知できぬほど。ストレートで感じたいくつかの成分がなりを潜め、薄めの甘みとほんのわずかのスモーキーの片鱗という感じになってしまう。
次いでオーバー・アイス(氷に注いで)飲んでみると、なかなか旨い。スパイシーさはかなり後退するがまだその感じを残しており、モルトの甘みとほんのわずかのスモーキーさがいいバランスを保っているのがわかる。引き際は本当にあっさりで、これは加水と冷却によるもので仕方がないのだが、本当に有無を言わさずあっさりしてしまうのが今の「ジョニ赤」なのだろう。
最後にソーダ・ハイボールに仕立ててみる。ここでは30mlのジョニー・ウォーカー赤ラベルを氷の入った10オンス・タンブラーに注ぎ、軽くステアしてソーダを満たしたものを飲んでいる。ううむ、ジョニー・ウォーカーなるものの属性はすべて剥奪されて、たんに「ウィスキーのソーダ割り」を飲んでいる感じになるんだけど、きりっとした感じがあって、これはこれでいいのかな、と思った。
割りものにしてもいい「ジョニ赤」なんだけど、実際にやってみるといささか物足りぬ感じがしないでもない。忘日、大阪は上本町のとあるバーで飲んだ「特級」表示のジョニ赤ハイボールはこういうものではなかった、と思う。ウィスキーの中身が変わるのは日本独自の現象ではなくて、もはや世界的な広範囲での出来事だと思ったほうがいい。事実、「特級」表示のジョニ赤は、えっ、と思うほどなかなかいい味だった。
色々飲んでわかったような口を利いている私(乙山)だが、実際のところ、1989年の酒税法改正後にしかスコッチをあれこれ飲むことはできず、酒の量販店が幅を利かすようになるまではほとんど手が出なかったように思う。今は多くのスコッチのアルコール度数を40度にそろえているようだけど、昔は43度前後だったのを知っている人は知っていると思う。
小さなグラスに注ぐと、まずアルコールの強い揮発臭が来る。有機溶剤の香りに、どこかフルーティさが混じっている感じ。かすかにスモーキーさを感じる。口に含んでみると、若いアルコールの強い当たりが舌と喉に来て、次いでスパイシーさを感じる。それらが去った後に残るのはどこか香草を感じさせるモルトの甘み。スパイシーさの他に、微弱だがスモーキーさとピーティさも感じる。
ほんの少しの加水で若いアルコールの当たりは抑えられて飲みやすくなる。隠れていたスモーキーやピーティさが少し顔を出し、スパイシーさは少しだけ後退するものの、まだスパイシーさが中心になっている感じがする。トゥワイス・アップ(ウィスキー15ml:水15ml)までもっていくと、全体的にかなり薄まった感じがするけれど、スモーキーさやピート香が前に出てくると感じた。
それではこれ(ウィスキー30ml:水30ml)をオールドファッションド・グラスでやってみたらどうだろう。冷やされたぶんだけ、甘みが凝縮された感じになる。スパイシーさはかなり後退してもはや感知できぬほど。ストレートで感じたいくつかの成分がなりを潜め、薄めの甘みとほんのわずかのスモーキーの片鱗という感じになってしまう。
次いでオーバー・アイス(氷に注いで)飲んでみると、なかなか旨い。スパイシーさはかなり後退するがまだその感じを残しており、モルトの甘みとほんのわずかのスモーキーさがいいバランスを保っているのがわかる。引き際は本当にあっさりで、これは加水と冷却によるもので仕方がないのだが、本当に有無を言わさずあっさりしてしまうのが今の「ジョニ赤」なのだろう。
最後にソーダ・ハイボールに仕立ててみる。ここでは30mlのジョニー・ウォーカー赤ラベルを氷の入った10オンス・タンブラーに注ぎ、軽くステアしてソーダを満たしたものを飲んでいる。ううむ、ジョニー・ウォーカーなるものの属性はすべて剥奪されて、たんに「ウィスキーのソーダ割り」を飲んでいる感じになるんだけど、きりっとした感じがあって、これはこれでいいのかな、と思った。
割りものにしてもいい「ジョニ赤」なんだけど、実際にやってみるといささか物足りぬ感じがしないでもない。忘日、大阪は上本町のとあるバーで飲んだ「特級」表示のジョニ赤ハイボールはこういうものではなかった、と思う。ウィスキーの中身が変わるのは日本独自の現象ではなくて、もはや世界的な広範囲での出来事だと思ったほうがいい。事実、「特級」表示のジョニ赤は、えっ、と思うほどなかなかいい味だった。
【付記】
● 実際に飲み始めたのが「特級」でなくなってからなので、往年の味わいを知っているとは言えぬところがあります。ですが記事にも書いたように、「特級」表示のジョニ赤はかなりいける味わいでした。昔のスコッチは旨かった、というのは単なる美化だけではないようです。
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No title
特急ジョニ赤、懐かしいですね。そう言えば昔はアルコール表示42度~45度
のウィスキーが多かったような気がします。
ブレンドもそれなりに変えているんですね。コストを考えるとしょうがないかな。
のウィスキーが多かったような気がします。
ブレンドもそれなりに変えているんですね。コストを考えるとしょうがないかな。
Re: chooringさん
chooringさん、コメントありがとうございます。
大阪は上本町のバーで、ジョニ赤「特級」の実物を見て、飲んだのですが、
デザインからして高級感がありました。
たぶんどの蒸留所でも、少しずつ中身を変えているのでしょうね。
大阪は上本町のバーで、ジョニ赤「特級」の実物を見て、飲んだのですが、
デザインからして高級感がありました。
たぶんどの蒸留所でも、少しずつ中身を変えているのでしょうね。
No title
つい先日ぼくも久しぶりにジョニ赤を買い求めたのですが、ど
うも昔(30数年前)飲んだものとは味がちがうような気がして首
をかしげました。
うまいまずいというのとはまた別の話で、当時は一口含んだだ
けで「あ、ジョニ赤だ」とわかる強烈な個性があったように記憶
しています。それが感じられなかったので意外だったわけです。
はてな、味覚が衰えたのかな(笑)とも思ったのですが、どんな
鈍い人間でも、味覚はわりと正確に記憶しているのがふつうです
から、やはり中身が変ったのではないか……
どこがどう変ったのか、うまく表現できるほどのテイスターで
はありませんから、あまりあてにはなりませんが、乙山さんの記
事を拝見して、やはりそうだったかと思った次第です。
うも昔(30数年前)飲んだものとは味がちがうような気がして首
をかしげました。
うまいまずいというのとはまた別の話で、当時は一口含んだだ
けで「あ、ジョニ赤だ」とわかる強烈な個性があったように記憶
しています。それが感じられなかったので意外だったわけです。
はてな、味覚が衰えたのかな(笑)とも思ったのですが、どんな
鈍い人間でも、味覚はわりと正確に記憶しているのがふつうです
から、やはり中身が変ったのではないか……
どこがどう変ったのか、うまく表現できるほどのテイスターで
はありませんから、あまりあてにはなりませんが、乙山さんの記
事を拝見して、やはりそうだったかと思った次第です。
Re: 薄氷堂さん
薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
薄氷堂さんの年代の方なら(想像ですが)ジョニ赤とかジョニ黒の、
「特級」をしっかりお飲みになっていると思いますので、
味の違いはよくおわかりになると思います。
たしかに赤も黒も変わっていますね。
いずれも、もっと煙くさかったように思います。
どちらも少しとんがったところが丸くなったんでしょうね。
アルコール度数は40度ですから、単純に「薄まった」ともいえるわけです。
訪問者や読者の方で「ジョニー・ウォーカーが変わった」という、
コメントを頂いていますので、多くの方がそう感じているに違いありません。
オールドもリザーヴも、スーパーニッカも、みんな変わってしまったんですね。
ジョニー・ウォーカーもそうなんだと思います。
世界的な規模のウィスキー流行だそうですから、
日本のウィスキーも「爆買い」されているのかもしれません。
ジョニー・ウォーカーは世界一の売り上げを誇っていますので、
原酒の確保も抜かりがないということでしょうが、
それでも中身を変えないといけない状態になっている、ということでしょうね。
薄氷堂さんの年代の方なら(想像ですが)ジョニ赤とかジョニ黒の、
「特級」をしっかりお飲みになっていると思いますので、
味の違いはよくおわかりになると思います。
たしかに赤も黒も変わっていますね。
いずれも、もっと煙くさかったように思います。
どちらも少しとんがったところが丸くなったんでしょうね。
アルコール度数は40度ですから、単純に「薄まった」ともいえるわけです。
訪問者や読者の方で「ジョニー・ウォーカーが変わった」という、
コメントを頂いていますので、多くの方がそう感じているに違いありません。
オールドもリザーヴも、スーパーニッカも、みんな変わってしまったんですね。
ジョニー・ウォーカーもそうなんだと思います。
世界的な規模のウィスキー流行だそうですから、
日本のウィスキーも「爆買い」されているのかもしれません。
ジョニー・ウォーカーは世界一の売り上げを誇っていますので、
原酒の確保も抜かりがないということでしょうが、
それでも中身を変えないといけない状態になっている、ということでしょうね。
No title
ウイスキーの類は本当に安くなりましたよね。
ちょいと前までなら、ウイスキーというだけで高級なイメージがありましたが、今じゃあ焼酎よりも安いウイスキーもあり(というかウイスキーよりも高い焼酎があり)・・・という状態になっていますから、私のようなものでも毎日焼酎が飲めるようになってきました。
ちょいと前までなら、ウイスキーというだけで高級なイメージがありましたが、今じゃあ焼酎よりも安いウイスキーもあり(というかウイスキーよりも高い焼酎があり)・・・という状態になっていますから、私のようなものでも毎日焼酎が飲めるようになってきました。
Re: gatayanさん
gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
酒税法改正による洋酒天国は1989年からですから、もう25年以上続いているんですね。
だから「あの頃」というのは相当な昔になってしまったわけです。
酒税法改正には外圧が相当かかっていたようで、洋酒にかかる関税を引き下げ、
同時に焼酎類や安物ウィスキーの酒税を上げることが行われました。
「テキ」はどうも後者が一番やりたかったんじゃないかと勘ぐってしまいますね。
酒税法改正による洋酒天国は1989年からですから、もう25年以上続いているんですね。
だから「あの頃」というのは相当な昔になってしまったわけです。
酒税法改正には外圧が相当かかっていたようで、洋酒にかかる関税を引き下げ、
同時に焼酎類や安物ウィスキーの酒税を上げることが行われました。
「テキ」はどうも後者が一番やりたかったんじゃないかと勘ぐってしまいますね。